江口智己/木村元/新道工房 宮本茂利・智子/鈴木しのぶ
多様な表現で日常を彩る“向付”
《うつわ勉強会 基展─向付のかたち─》②
作家たちがうつわについて考え、発信する「うつわ勉強会 基」。東京・渋谷パルコにて2025年10月18日(土)~10月26日(日)にかけて開催される「うつわ勉強会 基展 ─向付のかたち─」では、「向付」をメインにうつわ展を開く。灰釉のやわらかな質感や、色絵の華やかさ、黄瀬戸の落ち着いた佇まい、そして夫婦円満を象徴する「相生形」など──。ハレとケをつなぐうつわをご紹介。
※個展初日の入店について、一部時間帯に整理券が必要です。詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)、または公式オンラインショップをご確認ください。
Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を10月21日(火) 20時より順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)
江口智己
気品あふれる、抑揚のある色使いに出合う

価格|6600円 サイズ|W120×D120×H20㎜ 重量|150g
「ペルシア陶器や中国陶器にインスパイアされた、目にも楽しいうつわを目指しました」と、江口智己さん。愛嬌のある小鳥が印象的。5つの色を取り入れた鮮やかな向付は、釉薬の濃淡が作品に奥行きを与えている。中でも縁部分に起用した紫が、全体を上品な雰囲気にまとめ上げている。
「小鉢と違い、向付は季節感を演出したり、もてなしの場を彩ることができます。かたちも自由ですが、奇抜過ぎると使いづらい……」。そのあたりのバランスを取るのが難しかったという。
「知れば知るほど深みにはまるのが向付。つくり手も使い手も『よし、やるぞ』と気合が入ります。そんなうつわを、ぜひ一度使ってみてください。きっと深みにはまることでしょう」
江口智己(えぐち ともみ)
1971年、東京都生まれ。1992年、武蔵野美術大学空間演出学科入学。1995年、愛知県瀬戸市の窯元「霞仙陶苑」入社。1999年、瀬戸市で独立。2003年、千葉県富津市に移り、企画展多数開催。
木村 元
動と静を併せもつ質感を愉しむ

価格|6600円 サイズ|Φ120×H40㎜ 重量|220g
美濃焼の黄瀬戸の意匠を取り入れた作品。外側に施した草花の文様が、さりげなくもうつわ全体に躍動感を与えている。
「天然の灰を釉薬の原料として使っている、オリジナルの灰釉(黄瀬戸)です。表面がジワーッと潤い、しっとりとした質感になることを目指しています。釉薬が流れ動く様子も、見どころのひとつです」と語る木村元さん。
茶事における向付の役割や立ち位置を考慮してつくられたうつわは、盛りつけやすい絶妙な形状とサイズ感。丸みを帯びつつ、口縁をシャープに仕上げているのでメリハリがあり、食卓がきりりと引き締まる。土ものは、使っていくうちに柔らかさが出て、育てる楽しみも魅力のひとつだ。
木村 元(きむら はじめ)
2005年、多治見市陶磁器意匠研究所デザインコース修了。同年、美濃焼伝統産業会館 作陶指導員に。2008年、「重山窯 金十製陶所」を継ぐ。美濃茶盌展や東海伝統工芸展など入選多数。
新道工房 宮本茂利・智子
食事を晴れやかに彩る縁起のよいかたちと絵付け

価格|1万1000円 サイズ|W175×D110×H27㎜ 重量|200g
第一に、向付はメッセージを伝えるうつわであること。明確な信念の下、宮本茂利さんは、多種多様な向付を次々と生み出している。
「今回の企画展で紹介するのは『相生形』といい、夫婦が肩を寄せ合う様子を表現しています。中央のウズラは夫婦円満を意味します」(宮本さん)
ふたつの円が重なった形状は一見扱いが難しそうだが、見込みがフラットなので盛りつけやすい。縁がしっかり立ち上がっているので安心感もある。どんな料理をもってくるのか、使い手によって個性が出るのがおもしろい。
「夫婦やカップルたちの晩酌はもちろん、仕事や遊び仲間との会食など、うつわを通して末長く、仲よくやっていただけたらと思います」
新道工房 宮本茂利・智子(しんどうこうぼう みやもと もり、さとこ)
愛知県立窯業高等技術専門学校を卒業後、石川県の九谷焼の窯元で勤務。2000年、愛知県瀬戸市に拠点を移し、2002年に新道工房を設立。妻・智子さんとともに、作陶に専念。
鈴木しのぶ
ハレの日も、ケの日も食卓が華やぐ吉祥文様

価格|3520円 サイズ|W150×D108×H30㎜ 重量|140g
「向付はかたちが自由でテーマ性もあるので、作陶していてとても楽しいです」
茶席や料理店などで使われることが多く、細部にこだわる分、制作に気が抜けないところが難しくもあると、鈴木しのぶさんは言う。今回の作品は、灰釉による優しいグレー色が印象的。縁に浮き出た陽刻は、牡丹と蘭がモチーフになっている。どちらも縁起のよい吉祥文様で、もてなしや祝いの席をはじめ、さまざまなシーンで活躍する。
「向付と聞くと、堅苦しいイメージがありますが、かたちが独特で個性的なものが多いです。たとえば、絵柄やかたち違いで数枚並べると、テーブルがパッと賑やかになります。いろんなアレンジを楽しんでいただきたいですね」
鈴木 しのぶ(すずき しのぶ)
1992年、アメリカ アイオワ州ノースウェスタン大学美術専攻卒業。1996年、愛知県立窯業高等技術専門校、1998年、愛知県立瀬戸窯業高等学校卒業。2009年から栃木県宇都宮市で作陶。
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公式オンラインショップ
うつわ勉強会 基展 ー向付のかたちー
会期|10月18日(土)~26日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※初日は混雑緩和を目的とした入店整理券を事前配布のうえ開催いたします。
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Misa Hasebe photo: Shiho Akiyama
2025年11月号「実は、スパイス天国ニッポン」



































