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京都迎賓館ってどんな場所?しつらえの美意識に迫る。

2019.10.12
京都迎賓館ってどんな場所?しつらえの美意識に迫る。
和会食棟の桐の間。框、調度品には漆工芸、壁は京錆土壁、床の間は唐紙の表具、釘隠には錺金物、畳は中継ぎ表と、伝統技能が結集

外国の国王、大統領、首相が来日した際に、歓迎会などが行われる京都迎賓館。《京都迎賓館ってどんな場所?》第2回は、職人たちの技と知恵が結集してつくられたしつらえに迫る。

生け花や軸で季節感を表現
花や掛け軸などのしつらえは、季節や来客の好みに合わせて準備される。たとえば賓客をもてなす際には、その国の国花にしたり、9月の体験型参観の際には、菊の節句ともいわれる重陽の節句にちなんだしつらえに。京都いけばな協会により、館内随所に菊の花をふんだんに用いて生けられた。写真は、聚楽の間に飾られた桑原専慶流の桑原仙渓の作品

京都迎賓館がいまのかたちとして実現したのは、地元の要望によるところが大きい。京都の地にふさわしく日本の歴史と文化に根ざした和風建築を旨として、建設にあたっては漆工芸、数寄屋建築、作庭などの11種の伝統技能者の技が生かされているのだ。

また調度品にも蒔絵、螺鈿など14種の伝統技能が用いられている。京都迎賓館には、日本を代表する職人たちの、技と知恵が結集されているといえる。

鏡面仕上げが際立つ漆工芸
12mに及ぶ漆の一枚仕上げによる座卓は、庭の木々が映り込むほど平滑。仕上がりまでの工程は30~40にもなり、最後の磨きでは職人が摩擦で手をやけどしたとの逸話が

迎賓館のつくりは一般住宅とは大きく異なる。海外からの賓客に合わせて大づくりに仕上げられている特徴がある。それに伴い壁、襖、障子も住宅にはない巨大なものとなる。

たとえば土壁。左右に腕を動かせばひと塗りできるような幅ではない。それがひと息に塗られている。その仕上がりの美しさは、息をのまんばかりだ。また長さ12mという天井板をはじめとする長尺木材などの扱いの難しい材料も、一流の職人たちによって、素材が調達された。そうしてそこに工夫が加わり、彼らの技術と知恵で京都迎賓館は仕上げられた。

左官
迎賓館の敷地内から採れた京錆土(きょうさびつち)の土壁は耐火性に優れる。大壁面をムラなく仕上げられている

漆工芸を担当した澤野道玄さんは、完成当時こう言ったそうだ。「仕事がなくては後継者を育てれませんからね」。

京都迎賓館は、賓客を迎える場であり、日本の伝統技能を継承していく場でもあった。

京都迎賓館
住所:京都府京都市上京区京都御苑23
Tel:075-223-2301(有人案内)、075-223-2302(自動音声案内)
公開時間:10:00~17:00
休館日:水曜
入場口:京都迎賓館 西門

文=上村みちこ 写真=高嶋克郎
2017年11月号 特集「この秋、船旅?列車旅?」

《京都迎賓館ってどんな場所?》
1|伝統的技能のワンダーランドで国賓級のおもてなし体験
2|日本の技と心が詰まったしつらえ

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