京都迎賓館ってどんな場所?伝統的技能のワンダーランドで国賓級のおもてなし体験。
外国の国王、大統領、首相が来日した際に、歓迎会などが行われる場所、迎賓館。そこはどんな場所で、賓客のもてなし方は? 秘密のベールの内側を垣間見ようと、京都に向かった。2回にわたる《京都迎賓館ってどんな場所?》の初回。
2017年9月4日の京都は、残暑の日差しの中にも少なからず秋の訪れを感じさせる日和だった。向かったのは京都御苑に建つ京都迎賓館。通常は、国賓等、海外からの賓客をもてなすためにある施設だ。東京にある迎賓館赤坂離宮とはひと味違う和風建築で、和の伝統技能が随所にしつらえられている。
ここは2016年7月から通年で一般公開されているが、この日はじめて体験型参観が実施された。海外からの賓客が受けるもてなしの一端を感じられる機会に、多くの応募が集まった。京都迎賓館主催の下、京都文化交流コンベンションビューローが共催、京都南ロータリークラブが協力した。
9月9日の重陽の節句に合わせて、体験型参観は「菊花彩る重陽のおもてなし」と題された。
樹齢700年のケヤキでできた一枚板の重厚な玄関扉が開くと、正面両側に豪華な菊の生け花がしつらえられていた。重陽の節句は菊の節句ともいわれることにちなんだものだ。そこから、館内で最も広い藤の間へ進むと、目の前に幅16.5m、高さ3.1mの綴織りの壁面装飾が飛び込んできた。この部屋は、賓客の晩餐室だ。
部屋には舞台もあり、伝統技能の繊細な截金が施された扉が静々と開いて、地謡が響き渡るとともに金剛流による能の舞がはじまった。演目の「枕慈童」は、菊の葉から滴り落ちた露を飲み、700年も齢を重ねた少年の話だ。これもやはり長寿を祈る菊の節句にちなんだ演舞である。この舞台では、能楽、日舞など伝統芸能が賓客に披露される。
大会議室の夕映の間では茶道裏千家による呈茶が行われた。賓客もここで椅子席による立礼式の茶席に親しむ。ここでは「着せ綿」と名づけられた主菓子が供された。重陽の節句では、菊の花に薄い綿を被せたもので身体を清めて長寿を祈る。これを菓子に映したものだ。
和会食室である桐の間の隣はステンレスの輝きもまぶしい厨房だ。「賓客の動きは逐一無線で知らされて、抜群のタイミングで料理が提供できるように運営されます」。というのは、ここでたびたび料理を担当している京都・木乃婦3代目の髙橋拓児さん。
「迎賓館の運営マニュアルはすごいです。人員配置と時間管理のすべては、滞りなく賓客をもてなすために徹底しているんです」。1回120名の参観者が30名のグループに分かれて館内を参観したが、かち合うことも渋滞することもなく、待つこともなく至ってスムーズにことは進んだ。
住所:京都府京都市上京区京都御苑23
Tel:075-223-2301(有人案内)、075-223-2302(自動音声案内)
公開時間:10:00~17:00
休館日:水曜
入場口:京都迎賓館 西門
文=上村みちこ 写真=高嶋克郎
2017年11月号 特集「この秋、船旅?列車旅?」