渋谷パルコ《中外陶園 POP UP》
瀬戸焼の招き猫が、現代の暮らしを彩るインテリアに

1000年以上の歴史を持つ焼物の街「瀬戸」で1952年創業の中外陶園。思わず顔がほころんでしまう中外陶園の招き猫は、暮らしに幸福と癒しをもたらしてくれる。東京・渋谷パルコにて2025年1月25日(土)~2月2日(日)にかけて開催される「中外陶園 POP UP」では、現代の暮らしに合う愛らしい招き猫に出会える。瀬戸焼の技術が凝縮した、毎日愛でたくなる招き猫の魅力とは?
中外陶園(ちゅうがいとうえん)
鈴木康浩さんは中外陶園4代目。シンプルで無駄のないフォルムの「SETOMANEKI」などを企画。コロナ下に就任したため、時代を打破しようと奮闘中。
焼きものの街「瀬戸」
職人技が詰まった招き猫

「古瀬戸」と呼ばれる施釉陶器の生産を皮切りに、磁器や上絵付けといった各地の技法を織り込んできた瀬戸の街。多様性を受け入れる土壌こそ、瀬戸が日本六古窯のひとつとして現代まで窯の火を絶やさない理由のひとつだが、「中外陶園」の代名詞である招き猫には、そんな瀬戸の風土や歴史が凝縮されている。
「いまでこそ招き猫の中外陶園として知られていますが、当初はヨーロッパ向けの人形をつくっていたんです」と4代目の鈴木康浩さんが話すよう、瀬戸では明治後期より海外向けの置き物や人形の製造が盛んに行われていた。
明治時代に西欧から伝来した石膏型技法を用いて、縁日などで販売する招き猫を生産したことが「瀬戸招き猫」のはじまりで、「伏見人形がルーツのため『古瀬戸型』と呼ばれる招き猫の顔はキツネっぽい。
絵柄に関しても、それまで染付しかなかったものが、江戸時代の終わりとともに職を失った九谷の職人が尾張にやってきたことで、華やかな上絵付けが施されるようになったんです」と鈴木さん。愛嬌ある古瀬戸型には、時代に翻弄された職人技が詰まっているのだ。
技術を守りながら、
時代に合わせて変化

そんな瀬戸が転換期を迎えたのは高度経済成長期の円高。海外バイヤーが瀬戸から撤退することとなり、廃業を決める窯元も多い中、3代目である鈴木さんの父は、生き残りを懸けて「お雛人形」や「干支置物」の製造にかじを切った。
「イースターやクリスマスといった海外の記念日を日本に置き換えたら……と思いついたものが、節句を彩る季節飾りや縁起物でした。百貨店でも扱われるようになり商売は軌道に乗ったものの、これらは季節商品。通年売れるものをと考えたときに、そういえば瀬戸にはほかの産地に先駆けて明治時代から続く招き猫があるじゃないかとなったのです」

瀬戸の歴史に敬意を表す中外陶園では、江戸時代に登場した土人形の招き猫「横座」から、現代の暮らしに合うモダンなカラーリングの招き猫まで、時代を超えた製品を展開。瀬戸の招き猫には固定されたイメージがないため、自由な発想から新しい製品が生み出されているが、招き猫が紡いできた文化を途絶えさせてはならないとの考えから、往時の技法とスタイルを変えることはない。
「招き猫にできるのは、皆さんの背中をちょっと押すこと。つくり手である私たちとしては、外出するときに頭をなでてもらうなど、暮らしのそばで本物の猫のようにかわいがってもらえれば、これ以上うれしいことはないですね」。そう話す鈴木さんの願いが通じているのか、ひと目惚れをした愛猫を迎えるように衝動買いで連れて帰る人も多いのだとか。気になる子と目が合ったら最後。手に取らずにはいられない。
毎日愛でたくなる、お気に入りを見つけたい!
作品ラインアップ

古瀬戸型 牡丹 左手 3号
瀬戸を代表するクラシックなかたち。本物の猫に近い猫背のプロポーションが特徴で、運気が上向くよう目線が上を向いている。

横座 ベージュ(マット) 右手 4号
江戸時代に登場した招き猫の原型「横座」を再現。横座りのポーズは浮世絵にも描かれるなど、時代を超えて人々を魅了している。

福結 白 右手 5号
素焼きの陶器に鮮やかな絵付けを施した一品。首元に巻かれた赤いリボンが、祝いの品として重宝されてきた歴史を物語る。

瀬戸型 染付 左手 3号
「瀬戸染付」による淡い青と金の絵付けは、モダンなインテリアとの相性抜群。とろんと優しい目の表情が愛らしさを増している。
line
個展作品の一部がオンラインで買える!
公式オンラインショップ
中外陶園 POP UP
会期|1月25日(土)~2月2日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※初日に整理券配布予定です。
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
text: Natsu Arai photo: Shiho Akiyama
2025年2月号「温泉のチカラ」