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フレンチレストラン《レラン/l’élan》
楽しさを感じさせる独創的な料理【後編】

2024.4.9
フレンチレストラン《レラン/l’élan》<br><small>楽しさを感じさせる独創的な料理【後編】</small>

フランスと日本で研鑽を積んだ信太竜馬さんがシェフを務める「レラン/l’élan」。美味しさはもちろんのこと、楽しさも感じさせてくれる独創性あふれるプレゼンテーションを紹介しよう。

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開放感ある空間の壁面にしつらえた大きな窓には、高揚感ある美しい東京の夜景が広がっている。窓際の席はリクエストの多い特等席。クラシカルなガストロノミーを体感できる世界観もレランの魅力のひとつ

大きな木の扉を開いた瞬間から、レランのプレゼンテーションははじまる。空間には土の壁や木々による有機的なしつらえが施され、窓の向こうに広がるのはまばゆい夜景。テーブルに目を移すと、白いクロスの上に銀のカトラリーが配されている。信太さんが重んじる「クラシカルであること」のすごみは随所に息づき、その真骨頂は料理で体現されているといえよう。

野菜の端材と軍鶏で仕立てたコンソメ「アンチガスピヤージュ(フランス語で無駄防止)」を、ブリオッシュが土台のフォアグラのテリーヌとシュー生地にチーズを練り込み焼いたグジェールと
⚫︎うつわ|有永浩太(石川)、2016/(佐賀)

野菜の端材の旨みを凝縮してコンソメに仕立てたアミューズから焼き菓子のデセールまで、どの皿もモダンで彩り豊かだ。その美しさを支えるのは、確かな火入れの技術やソースの奥行きといったオーセンティックなフレンチの技法と、信頼する日本の生産者から届く食材の数々。それらを駆使し、信太流フレンチへと昇華させている。

豊後水道で捕れたアオリイカをサッと炙り、そら豆やいんげん、柑橘「媛小春」のコンフィと和え、旭酒造の酒粕のソースをかけていただく。アオリイカの弾力感と奥深い甘さを堪能
⚫︎うつわ|ノリタケ食器「CLéMENCE」

「生産者さんとの対話、フレンチの技術、うつわの選定、上質な空間、温かなもてなしなど、レランを構成するすべての要素へのこだわりは当たり前のことです。『レランでのガストロノミーの体験は楽しかったな』と感じていただき、想像力が羽ばたける場をご提供していきたい。そのためにも末長く愛される店でありたいですね」

長崎・対馬のクエを最高の火入れで焼き上げ、皮目はカリッと、身はプリッと仕上げている。クエの虹色の油がじんわり広がり、ユズ果汁を混ぜたオリーブオイルが華やかに香るひと皿
⚫︎うつわ|森山硝子店(東京)
自家製パスタ生地に白カビチーズのブリ・ド・モー、ローストしたシイタケを詰めたトルテリーニ。黄ワイン「ヴァン・ジョーヌ」ベースの重厚感あるソースは、空気を含ませ軽さを出している
⚫︎うつわ|森山硝子店(東京)
ストウブのホーロー鍋の中にある塩釜を割ると、NOTO 高農園の色鮮やかなビーツが姿を現す。大地の力強さと甘さのあるビーツを、オリジナルのデュカスパイスが引き立ててくれる
⚫︎うつわ|シルヴィー・コケ(リモージュ)
皮目はカリカリ、身は旨みがあふれるほどしっとり焼き上げたキンキ。魚介と野菜で仕立てたスープ・ド・ポワソンを鉄瓶から注ぎ、熱々の状態でいただく
⚫︎うつわ|カマチ陶舗(佐賀)
藏光農園のゆら早生みかんを生かしたソースがつくりたいと、誕生したひと皿。ゆら早生みかんはブールブランソースとなり、ふわサクッと焼いた瀬戸内のマナガツオと加賀れんこんと絶妙なハーモニーを奏でる
⚫︎うつわ|森山硝子店(東京)
カシスを与えられて育った京都の七谷鴨のムネ肉を、旨みを閉じ込めるようにロースト。黒トリュフをふんだんにのせ、北海道産の山ブドウのソースで爽やかに。甘さが際立つ根菜のピューレを添えて
⚫︎うつわ|カマチ陶舗(佐賀)

常時約20種類揃うチーズからセレクト

フロマージュは、白カビ、青カビ、ウォッシュ、シェーブル、ハード、セミハードと、多種多様な種類を用意。中には北海道産のチーズも。GYRE屋上で採蜜したハチミツを添えて

デザートの前にはカクテルが供される

目の前でシェイカーを振りカクテルを仕上げるプレゼンテーション
この日のカクテルは上品な甘さとまろやかな風味のアレキサンダー。ワインはペアリングメニューもある
金柑のムース、ピスタチオのクリーム、パンデピスを盛ったデザート
リンゴの上にカルダモンのジュレをのせた、清涼感あふれるひと皿

コーヒー豆も自家焙煎

デセールの後にセレクトできるコーヒーは自家焙煎したもの。焼き菓子ももちろん自家製だ。コーヒーはレランと同フロアにあり、信太さんが運営するカフェ・デリ&バーuniでもいただける

子ども料理教室も開催

信太さんは食育の活動も精力的に行っている。その背景にあるのは「生まれ育ち、店を構えている渋谷区に貢献したい」という想い。子どもたちを店に招き、魚をさばくなどの料理教室を開催している

レラン(l’élan)はフランス語で「飛躍」の意。料理を媒介に、生産者やゲストの想いまでも羽ばたかせていく。

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レラン(l’élan)
住所|東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 4F
Tel|03-6803-8670
営業時間|18:00〜20:30(最終入店)
定休日|日・月曜(月曜が祝日の場合、月・火曜)
料金|コース2万4200円(税込・サ別)
https://lelan.jp

text: Nao Ohmori photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」

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