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フレンチレストラン《l’élan/レラン》
生産者たちとの交流が生む四季の表現【前編】

2024.4.9
フレンチレストラン《l’élan/レラン》<br><small>生産者たちとの交流が生む四季の表現【前編】</small>

フランスと日本で研鑽を積んだ信太竜馬さんがシェフを務める「l’élan/レラン」。生産者との密な交流、養蜂、食育など、常に学びと挑戦を続ける信太さんが提供する食体験とは。

シンプルに美味しいものを。
自然体が生み出すフレンチレストラン

緑豊かなケヤキ並木が続く東京・表参道。この通り沿いに建つ商業ビル「GYRE」の4階に、ガストロノミーの本質を伝えるフレンチレストラン「レラン(l’élan)」はある。オーナーシェフの信太竜馬さんは、「ロオジエ」やフランスの「トロワグロ」など、名だたる一流メゾンで研鑽を重ねてきた。伝統的なフレンチの技法をベースに、独創的な感性をちりばめた料理の数々は、アートのごとく美しく、繊細かつ重層的な味わいで、素直に「美味しい」と感じさせてくれる。

使用する食材は国産のものが中心だ。魚介類は信太さん自ら毎朝豊洲市場に足を運んで目利きし、野菜は土づくりからこだわった有機野菜を生産する石川・能登島の「NOTO 高農園」、柑橘類は恵まれた自然環境を活用して低農薬の柑橘類を育てる和歌山・日高川町「藏光農園」から直接仕入れるなど、春夏秋冬の旬を意識した、妥協のない食材選びを行っている。

「生産者と料理人が対等な関係であることが大切だと考えています。そのために、生産者の方々と密なコミュニケーションを図り、食材への感想なども直接電話でお伝えするように心掛けています。おつき合いがあるのは、哲学をもち仕事に取り組まれている方ばかり。彼らの考えを理解することは料理人としての学びにもつながります。そういった方々の食材を一年を通し使用させていただくことで、お皿の上で四季を表現することにもつながっています」

各地のシェフや生産者のところへも。写真は能登にて「レストラン ブロッサム」黒川恭平シェフ、「ヴィラ・デラ・パーチェ」平田明珠シェフ、「NOTO 高農園」高利充さん夫妻、「数馬酒造」数馬嘉一郎さん、「ラトリエ・ドゥ・ノト」池端隼也シェフ、塗師・赤木明登さん夫妻、うつわ作家・有永浩太さん夫妻、「白藤酒造店」白藤暁子さんと

農園、酒蔵、畜産現場など、信太さんは全国各地のさまざまな生産者を訪ね歩く。時に畑へ入り、栽培や収穫の手伝いをすることもあるという。
 
「自分がその場で目にした光景や食材が育った風土を、料理に反映できますから。食材からインスピレーションを得て、仕立てる皿も多いですよ」

レランの入る商業ビル・GYREの屋上では、信太さんが代表を務めるAtelier du mielのプロジェクトとして7群の養蜂を行っている。2023年には123kgを採蜜。このハチミツはコース内のフロマージュとともに提供される

2021年には「Atelier du miel」を立ち上げ、養蜂事業をスタートした。ビルの屋上に巣箱を設置し、神宮の杜などを蜜源とする百花蜜を生産。さらにパンは自家製で出来たてを提供、コーヒーは自家焙煎するなど、信太シェフは当たり前のように話をするが、細部までこだわりがあふれている。
 
「私は東京で生まれ育ち、東京で店を開きました。ゆえに全国から食材が集まる東京で、食材を吟味し、用いるのは自然な流れなのです。完成した一皿ひと皿は、料理人の技術だけによるのではありません。その背景にいる、食材に携わるすべての方々の思いをお伝えすることも、私たちの役割だと考えています」

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楽しさを感じさせる独創的な料理
 
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信太竜馬(しだ りょうま)
1988年、東京都生まれ。数々の一流メゾンを経て、「エスキス」でスーシェフを務める。2020年1月、フレンチレストラン「エラン(現レラン)」、レストラン「ボネラン」、カフェ・デリ&バー「uni」を開業

text: Nao Ohmori photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」

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