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ジャパニーズサウナ、どこまで進化する?
|世界に誇る日本サウナの歴史と文化【前編】

2024.3.25
ジャパニーズサウナ、どこまで進化する?<br><small>|世界に誇る日本サウナの歴史と文化【前編】</small>

個性豊かな施設が次々に誕生している現代日本のサウナシーン。その独自性や創造力は海外のサウナ愛好家からも注目されている。一過性のブームで終わることなく、日本独自のサウナカルチャーが醸成されている背景には日本人らしい感性や国民性があると、サウナ文化研究家のこばやしあやなさんは言う。
 
今回は、広がりを続ける日本のサウナトレンドについてこばやしさんが考察する。

海外と自国文化を混ぜ合わせながら
いまや世界の愛好家に注目されています

サウナ室内で葉束を使って心と身体を癒すウィスキング。ここ数年、日本でも受けられる施設が増えている
提供=渋谷SAUNAS

「サウナの本場・フィンランドに暮らしているあなたから見たら、昨今の日本のサウナは、奇妙な紛い物に見えるのではないですか?」としばしば聞かれる。そのたびに、私は毅然とこう答えている。「現代日本のサウナ業界は、世界中のサウナ愛好家が驚きうらやむくらいに、クリエイティブで、エネルギッシュで、求心力にあふれていますよ」と。
 
確かに、ゼロから1を生む代わりに「まず他国から取り入れて自国文化に昇華させる」のは日本人のお家芸だ。ロウリュと呼ばれる、焼け石に水をかけて熱々の蒸気を浴びる、フィンランド・サウナのスタイル。アウフグースと呼ばれる、広いサウナ室でスタッフがタオルであおいでお客に熱気を行き渡らせる、ドイツ・サウナのスタイル。ウィスキングと呼ばれる、サウナ室内で白樺などの葉束を使ってお客の身体を刺激して癒す、バルト三国やロシア・サウナのスタイル。これらは、依然として現在の日本サウナの3大コンテンツであり、本場の国々の伝統がごった煮になっている印象を与える。
 
だが、そもそも固有の伝統に縛られない民族だからこそ、自由に足し引きしたり、こだわりと努力を発揮してとことん突き詰めることが可能だという見方もできるだろう。現に2023年のアウフグース世界選手権の団体戦では、新興国の日本人チームがヨーロッパの強豪国を差し置き、なんと優勝を果たしてしまった。

2023年のアウフグース世界選手権の団体戦では日本人チームが優勝
提供=ウェルビー栄

それに、近年は実に日本人らしい感性と創造力で、審美性や独自性の強いユニークなサウナの施設が、次々に生まれている。さらには、郷土の自然・風土や歴史、特産品を体感できるサウナによって、ツーリズムや地方創生などの課題解決へと挑む事例も、数多く見られるのだ。
 
一方、日本で「サウナブーム」が顕在化し、それまで興味がなかった層にもサウナが急速にリーチしはじめたのは、’19年頃ではなかったかと思う。ドラマ版『サ道』(テレビ東京)が放映を開始したのを皮切りに、テレビや新聞雑誌、ネット番組で、サウナのメディア露出がにわかに急増した。サウナ施設探訪に特化したドキュメント番組まで、次々に生まれている。サウナ専門番組なんて、本場のフィンランドですら、お目に掛からないのに!
 
無論、その数年前から種まきははじまっていた。’16年に、マンガ家・タナカカツキさんによる『マンガ サ道』(講談社)の連載が開始。サウナ→水風呂→外気浴という、律儀な日本人らしい交互浴メソッドがもたらす恍惚感や、社会生活にしばし蓋をしてサウナ室にやってきた人々の人間模様や交情が、リアリティをもって描かれ、共感された。
 
「ととのった〜」というお馴染みのフレーズも、『マンガ サ道』で確立されたものだ。サウナの心地よさを表す共通語は、フィンランドにも存在しない。本来は十人十色であるべきサウナの快感や多幸感が「ととのう」と言語化されたことで、キリスト教世界に聖書ができたように、人々の間で“シェア”が可能になったのだ。
 
’17年には、全国のサウナ施設の詳細情報を検索したり、他者のレビューを閲覧したりできるコミュニティサイトも立ち上がった。これも、「好き」をとことん突き詰める国民性(?)が生んだ、他国にはない日本独自のサービスである。サウナ室や水風呂の温度、ストーブのタイプ、アメニティの有無まであらゆるデータを網羅しつつも、施設の魅力は千差万別なのだから星の数で数値評価はしない、というこだわりと思いやりも日本人らしく思える。
 
つまり日本のサウナトレンドは、サウナ施設をつくり運営する人々のクリエイティビティに、メディアや才能ある愛好家たちの普及活動への熱量が掛け合わさって、いまなお広がり続けていると言える。そしてその相乗効果こそが、世界に誇れる唯一無二の活発なサウナシーンを生み出し続けているのだと、私は声を大にして伝えたい。

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提供=ウェルビー栄

 

日本の風呂の原点は、
サウナだった!?

 
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ウェルビー栄
住所|愛知県名古屋市中区栄3-13-12
TEL|052-262-1126
料金|2時間2000円、土・日曜、祝日2500円(+1時間ごとに500円。最大4000円)、ナイト2時間2500円、土・日曜、祝日3000円
サウナ利用可能時間|5:00〜24:00(最終退館は翌2:00)
定休日|不定休
www.wellbe.co.jp
 
<サウナdata>
収容人数|20名
タイプ|フィンランド式サウナ
温度|85℃、95℃
水風呂|5℃、14℃、26℃
休憩スペース|内湯○、外気浴× 
その他の設備|内気浴スペース、サウナシアター、食事処
※女性エリアは内容に変更あり

text: Ayana Kobayashi
Discover Japan 2024年2月号「人生に効く温泉」

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