「女木島」鬼ヶ島伝説の島でヘアサロンがアートに?!
〈今年の夏は瀬戸芸へ!〉
瀬戸内海に浮かぶ鬼ヶ島伝説が残る島、女木島。瀬戸内国際芸術祭にあわせて、一風変わったお店が誕生した。「島の中の小さなお店」プロジェクトと題され、国内外のアーティスト8組が集結。民宿として使われていた「寿荘」に、ヘアサロンやウェディングショップなど生活に密着したお店をオープンした。
2019年の瀬戸内国際春会期で、多くの新作が発表され注目を集めているのが女木島だ。「島の中の小さなお店」プロジェクトはその名の通り「お店」をキーワードにした作品群。
現代美術作家の宮永愛子さんは、これまで日用品をナフタリンでかたどったオブジェや塩を使ったインスタレーションなど、モノを通じて気配の痕跡を残すことを試み、時を視覚化する作品で注目を集めてきた。今回、彼女が手掛けたのはヘアサロン。しかもサロンに鏡はない。「私自身、美容室でカットの最中に目のやり場に困ることがあって。ここは目の前に美しいビーチがあって景色が眺められますから、いっそのこと鏡をなくして、海を眺める美容院にしたらどうかと考えました」。
ヘアサロンを題材としたきっかけは、島でカットサロンを営む玉木ひろ子さんとの出会い。玉木さんは島に美容院のなかった頃から、高松から女木島に通い整髪をしていた。宮永さんはサロンの看板を見つけ、店内へ飛び込んだ。「ヘアサロンなら、島の生活に寄り添ったアートにできると思いました」。
髪を切ってもらう間、鑑賞者が眺めるのは目の前の島と海。ある女性は景色を眺めながら、昔、海岸を一緒に歩いた旦那さんとの思い出をカットの間中話していたという。「時間を旅すること。それが作品のテーマです。過去や未来へ自然と思いが飛んでいく。カットの最中にはわからなくても3日後ぐらいにじんわりと、『そういうことだったのか』と体験した方に気づいていただければいいなと思います」。
作品の醍醐味は、実際に利用し体験できること。待ち時間には、ほかの〝お店〟を見て回り、のんびりと過ごそう。
文=森 聖加 写真=西岡 潔
2019年8月号 特集「120%夏旅。」
営業時間:9:00〜16:30(②は10:00〜、③は13:00〜)
定休日:記載のないもの以外は会期中無休
料金:入館料600円(芸術祭パスポート提示で無料)
※別途利用料の必要なものあり ※②③は利用料のみ