地域密着型ブルワリーが今注目!
「ビールの最新トレンド2021」20選【前編】
ビールが美味しい季節がやってきました!造りたてが味わえる地域密着型ブルワリーの登場など、ビール業界はいま、さらに進化しています。サブスクなど多様なサービスも取り入れて、クラフトビールをもっと楽しもう!というわけで、今回は、これまでに400以上の店舗を訪問し、美味しいクラフトビールが飲めるお店を紹介している「クラフトビール東京」代表の川野亮さんに、全国の魅力たっぷりなクラフトビール20種類を選抜してもらいました。あなたのお気に入りの一本がきっと見つかるはず!?
いま注目は 「地域密着型ブルワリー」
川野さん「クラフトビールを飲むことは、ビールが造られた街を訪ねる追体験だと思っています。1994年、酒税法の改正によりビールの最低製造数量が規制緩和され、小規模醸造所(マイクロブルワリー)がはじめて日本に誕生しました。いまでは、ほぼすべての都道府県にブルワリーが設立され、その数は480以上。2020年においても、ビールの醸造に熱意を傾ける人は多く、1年間で50以上のブルワリーが新たに登場しました。’21年も3月末時点で、すでに10件の醸造免許が下りています。この上昇傾向はまだまだ続きそうなので楽しみです。
『クラフトビール東京』を運営している過程で、最近は、より地域に密着したブルワリーが増えてきたと感じるようになりました。私の考える地域密着型ブルワリーには、3つの要素があります。ひとつ目は、『地元で採れたホップやフルーツを、ビールの原材料に取り入れている』こと。国内のホップ生産量は減少していますが、小規模醸造所が自分たちの手で、あるいは地域の農家と協力しながら、ホップの自家栽培をはじめたという話はよく聞きます。また、日本にはさまざまな四季折々のフルーツが存在し、限られた地域のみで栽培されている品種もたくさんあります。神奈川県の湘南ゴールドや宮崎県の日向夏などが、ビールで使用されている代表例です。ビールを飲むことで、季節や地域を感じられるのです。
ふたつ目は『地元由来のものを銘柄に取り入れたり、イベントを通して、地域の魅力を発信している』こと。たとえば、青森県にある『ビーイージーブルーイング』では、銘柄に津軽弁を用い、地元の方言をアピールしています。『横浜ベイブルーイング』も、地元・横浜でブルワー主体のビールコンテストを開催し、ビールファンが横浜に集まる大きなきっかけになりました。
3つ目は『地域との交流を大切にし、地元の人々と協働しながらビールを造っている』こと。大阪府にある『箕面ビール』などが、その一例です。ビールを醸造する過程で生まれる麦芽粕は、一般的には産業廃棄物となるのですが、箕面ビールでは地元農家と協力し、家畜の餌として麦芽粕を再利用しています。また、島根県の『松江ビアへるん』でも、地域の酒蔵と協力し、酒米麹、清酒酵母を使用したオリジナルスタイルのビールを造り、酒蔵とともに地域を盛り上げています。
クラフトビールを飲むとき、造られた地域とつくり手に想いを馳せると、より美味しく感じられます。その地が、故郷や思い出の場所、憧れの旅先であれば感動もひとしおです。皆さんも、日本のさまざまな土地を思いながら、ビールを味わってみませんか」。
厳選された地域密着型ブルワリー
1|オール地元産のビール造りを目指すブルワリー
北海道・上富良野町「忽布古丹(ほっぷこたん)醸造」
北海道内で唯一、ホップが商用栽培されている上富良野町に2017年に設立。「古丹」とはアイヌ語で、村や集落を意味している。ホップの自家栽培に力を入れたビール造りに取り組み、将来的には大麦や小麦の栽培も行い、すべて地元産の原料を使った醸造を目指している。
原材料|麦芽、ホップ(上富良野産ウィラメット)、ハスカップ(富良野産)
アルコール度数|7.0% IBU|10
スタイル|フルーツセゾン
価格|671円(330㎖)
忽布古丹(ほっぷこたん)醸造
所在地|北海道空知郡上富良野町西8線北33号
設立年|2017年(醸造開始は2018年)
スタッフ人数|6名
Mail|beer@hopkotan.com
www.hopkotan.com
2|津軽弁を流暢に話す
アメリカ人・ギャレスが造る津軽のビール
青森県・弘前市「ビーイージーブルーイング」
青森に惚れ込み移住したアメリカ人のギャレス・バーンズ氏が弘前市で創業。原材料に地元のリンゴやイチゴ、津軽産米などを使用している。ホップも自家栽培し、毎年9月にはフレッシュホップビールを発売。青森をアピールするため、ビール名はすべて津軽弁。
原材料|麦芽(イギリス産、ドイツ産)、ホップ(ドイツ産)、水あめ
アルコール度数|5.5% IBU|未設定
スタイル|ラオホ
価格|610円(340㎖)
ビーイージーブルーイング
所在地|青森県弘前市松ケ枝5丁目7−9
設立年|2016年
スタッフ人数|6名
Mail|info@beeasybrewing.com
www.beeasybrewing.com
3|味も見た目もグッドな気仙沼発のクラフトビール
宮城県・気仙沼市「ブラックタイドブリューイング」
気仙沼に魅了されたメンバーが集まって、2020年に醸造開始したばかりのブルワリー。ヘッドブルワーはクラフトビールの聖地・ポートランドから移住してきたジェームズ・ワトニー氏。IPAやヘイジー IPAはもちろんのこと、セゾンやラガーなど数多くのスタイルを醸造。
原材料|大麦麦芽(ピルスナー)、小麦麦芽、ホップ(ベルマ、ブラボー)
アルコール度数|6.5% IBU|未設定
スタイル|フルーツセゾン
価格|715円(350㎖)
ブラックタイドブリューイング
所在地|宮城県気仙沼市南町3丁目2−5
設立年|2018年(醸造開始は2020年)
スタッフ人数|7名
Mail|info@blacktidebrewing.com
https://blacktidebrewing.com
4|フレッシュな味わいをタップルームで提供
東京都・東村山市
「ディスタント・ショアーズ・ブルーイング」
「自分が飲みたいビールを造る」をモットーに、イギリス人ブルワーが東村山市に創業。エールの本場・イギリスならではの、モルトに対するこだわりに加えて、ホップをふんだんに使ったアメリカンスタイルのビールもバランスよく造っている。醸造所では毎週日曜、ビールが飲めるタップルームをオープンし、地元の人の憩いの場となっている。
原材料|麦芽、ホップ(シトラ、モザイク、アポロ、コロンブス、エクアノット、ジャリロー)
アルコール度数|7.5% IBU|60
スタイル|ウェストコーストIPA
価格|600円(330㎖)
ディスタント・ショアーズ・ブルーイング
所在地|東京都東村山市秋津町3丁目14−2
設立年|2017年
スタッフ人数|3人
Tel|042-306-4242
https://distantshoresbrewing.com
5|奥多摩の深い自然に囲まれながら飲んでほしい
東京都・奥多摩町「バテレ」
東京の西端、奥多摩駅から徒歩1分の場所で、2015年に醸造開始。深い緑ときれいな空気という最高のロケーションに囲まれ、築70年の古民家をリノベーションした建物にビアパブを構えている。最近では、醸造所を増設して缶ビールの販売を開始。グロウラーも楽しめて、ますます人気が高まっている。
原材料|麦芽、ホップ(ニュージーランド産モトゥエカ)
アルコール度数|6.0% IBU|13
スタイル|シングルホップIPA
価格|850円〜(500㎖) ※期間限定商品
バテレ
所在地|東京都西多摩郡奥多摩町氷川212
設立年|2014年(醸造開始は2015年)
スタッフ人数|10名
Tel|0428-85-8590
http://verterebrew.com
※お酒は二十歳になってから。未成年者への酒類の販売は固くお断りします。
text: Ryo Kawano photo: Kazuya Hayashi
Discover Japan 2021年6月号「ビールとアウトドア」