乳酸菌は健康への近道!
農学博士 岡田早苗さん
《ぼくも私も発酵に夢中!④》
日本だけでなく世界の食文化の発展に深く関わり、いまあらためて注目されている「発酵」。その魅力を各界で活躍する方々に、各々の視点で語っていただいた《ぼくも私も発酵に夢中!》。4人目は農学博士・岡田早苗さんが「健康×発酵」について語る。
岡田早苗さん
高崎健康福祉大学農学部教授。東京農業大学名誉教授。専門は応用微生物学。1988年に論文で「植物性乳酸菌」という言葉をはじめて発表。植物性乳酸菌研究の第一人者として現在も研究に勤しむ
「乳酸菌」と聞いて、誰もがまずイメージするのはヨーグルトだと思いますが、それはミルクなどの酪農食品に生息する「動物性乳酸菌」。乳酸菌は炭水化物やビタミン、たんぱく質などの栄養素が豊富なところに生息するので、野菜や穀物といったほとんどすべての植物原料にもすみ付いています。
古来、農耕民族だった日本では冬に備える保存食として、野菜を塩で乳酸発酵させた漬物や味噌をつくってきました。その中で働く乳酸菌が「植物性乳酸菌」です。
どちらも整腸作用や抗菌作用、免疫活性作用など、人の健康維持に貢献することは同じですが、完全栄養食であるミルクの中で穏やかに育つ動物性乳酸菌に対し、植物質は栄養が乏しく、抗菌物質が多く含まれているので、植物性乳酸菌は過酷な環境を生き抜かなければならない。
ですので、人体に入ったときでも機能のパワーは失われず、動物性乳酸菌より5〜6倍は活性が高いものがいることが実験データで証明されています。日本人は漬物や味噌、醤油を通して自然とそれを取り込んできたので、植物性乳酸菌は日本人の健康維持に欠かせないものと言っても過言ではありません。
まだ未発見の機能がたくさんあることがわかっているので、研究が進めば、たとえば個人ごとに効果がデザインされた乳酸菌が出てきたり。発酵で生活が豊かになる可能性は無限大に広がります。
文=藤谷良介 写真=是枝右恭
2019年11月号特集「すごいぜ!発酵」