FOOD

ぬか床はロマンにあふれている。
ドミニク・チェンさん
《ぼくも私も発酵に夢中!③》

2019.11.22
ぬか床はロマンにあふれている。</br>ドミニク・チェンさん<br>《ぼくも私も発酵に夢中!③》

日本だけでなく世界の食文化の発展に深く関わり、いまあらためて注目されている「発酵」。その魅力を各界で活躍する方々に、各々の視点で語っていただいた《ぼくも私も発酵に夢中!》。3人目は情報学研究者・起業家ドミニク・チェンさんが「AI×発酵」について語る。

情報学研究者・起業家
ドミニク・チェンさん
早稲田大学文学学術院 准教授。株式会社ディヴィデュユアル共同創業者、NPO法人コモンスフィア/クリエイティブ・コモンズ設立理事。『インターネットを生命化する』(青土社)など、著書多数

10年前に会社を立ち上げるとき、共同創業者に50年物のぬか床を分けてもらって、はじめてぬか床に触れました。漬けて食べると、驚くほど味わい深くて美味しい。さらに塩やビールをかけたりとカスタマイズもできる。自分が参加して味がつくれるところにおもしろさを感じました。

その不思議さや奥深さに惹かれ、夢中になりましたが、夏に腐らせてしまい〝ぬかロス〟に陥ったことが、ぬか床ロボット「NukaBot」を着想したきっかけです。これは、発酵の進み具合や菌の活動を測定するセンサーでぬか漬けの状態をチェックし、混ぜるタイミングや数値を電子音声でお知らせしてくれるのですが、全自動で混ぜる機能は入れませんでした。

自分が何かをすると味にフィードバックされる関係性を永続したいので、AIを使って人間である僕の行動をハックするイメージで、ぬか床への愛着を増すことがコンセプトの根幹にあります。

そして何より、菌という生き物同士の交感にロマンティシズムを感じるからです。人間の中にも細胞より多い数の微生物が生きていて、混ぜる時に皮膚からぬか床の微生物と混ざり合い、共生するからこそ独自の深い味にたどり着く。その達成感が発酵食の一番の魅力だと思いますね。

文=藤谷良介 写真=林 和也
2019年11月号特集「すごいぜ!発酵」

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