ビジネス・人生に利く武士道!
“武士道”について書かれた書物「武士道書」には、現代の、特に“職場”という“戦場”を駆ける人々にも「あるある!」と思わずうなずくエピソードが満載です。人間という生き物は、いや日本人は、時代を経ても実はあまり変わっていない!? 現代の武士=ビジネスマンの、今日を生きるヒントを紹介します。
Case_01「名君家訓」こんな人でありたい! 武士の守るべき十カ条
これは、いつの時代も、どの国に生まれても、人として守るべき十カ条といっていいでしょう。武士の生活においては、一歩間違うと命にかかわる問題にもなりかねません。たとえば人をだましたり、礼を失した態度を取ったりすれば、相手は「俺を軽く見た=名誉を傷つけられた」として「おのれ〜!」(ズバッ!)となりかねなかったですし、「あいつは上のものにはぺこぺこして、下には威張るいやな奴だ」、「あいつは叱責されて、同僚を見捨てたそうだよ」などと言われるようでは自分の名誉が傷つき、恥じて切腹するか、そうしたことを言った相手に刀を抜いてかかっていかねばならないはめに陥ります。そういう目に遭いたくなかったら、常日頃から人として、武士として正しい言動を心がけねばなりません。
「名君家訓(めいくんかくん)」ってナニ?
幕府の儒官として江戸幕府8代将軍吉宗、9代将軍家重に仕えた、室鳩巣(むろきゅうそう)が記した書です。これは、別名「楠諸士教(くすのきしょしきょう)」とも呼ばれています。南北朝時代に後醍醐天皇に仕えた楠木正成が、家臣たちに示した教えという意味ですが、実際に楠木正成が言ったことや教えたことではなく、賢い主君が家臣に対し、「武士はどのようにあるべきか」を説明しているという形式で書かれているのが、本書の特徴です。
Case_02「武道初心集」悔いなき人生を! 油断大敵で日々過ごすべし
普通なら祝い浮かれる正月から「死のことを常に思え」と説く一方、「泰平の世であるから畳の上で病死を遂げるのが大切である」とも説いています。これは一見矛盾するようですが、実はそうでもありません。
この教えを、家族や友人との関係になぞらえてみましょう。自分を認め、愛してくれる人々のために尽くすのが人の道。そのために命を使おうと思っていたら、むやみやたらに危険なことはできないはずです。そして自分を大事にしてくれる人が危機に陥らないよう、ちょっと落ち込んでるみたいだなと思えば相談に乗り、身体をいたわってやるなど、日々努力をしていれば、お互いに大きな危機を迎えることもなくなります。
いつ死ぬかわからないという覚悟をもっていることで、自分がどう行動すべきかが自ずと決まります。そして結果的に、悔いのない人生を無事に終えることにつながる……。これは死ぬための心得ではなく、よりよく生きるための心得なのです。
「武道初心集」ってナニ?
安芸浅野家や会津松平家、越前松平家などに仕えた、大道寺友山(だいどうじゆうざん)が記しました。主旨は「武士としては死の覚悟をし、家臣としては主君の恩を思え」というもの。武士の命は忠孝を尽くすためにあるのだから、いざというときまで、いたずらに命を落とすようなことがあってはならないと、平和な時代の武士の心得を説きます。
“誰かのために生きる”自己犠牲の精神こそが、武士道本来の在り方です。品格や名誉を大切にす姿勢は、武士の時代も、いまも変わりません。人生を豊かにするヒントが詰まった武士道書を手にすることは、自分の人生を見つめ直すことにつながります。
(text: Ichiko Minatoya)