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旅と暮らしの間、長門湯本温泉へ。
観光客や移住者を魅了する理由とは?
前編|地域コミュニティを育むホテル「SOIL Nagatoyumoto」

2025.9.19
旅と暮らしの間、長門湯本温泉へ。<br>観光客や移住者を魅了する理由とは?<br><small>前編|地域コミュニティを育むホテル「SOIL Nagatoyumoto」</small>

日本海もほど近い、山口県の長門湯本温泉。地域の誇りである温泉「恩湯おんとう」を中心とした暮らしが息づく街が、観光客も移住者も魅了する理由とは――。恩湯を中心に「旅と暮らしの間」を往来できる、このまちの答えを探してきた。今回は、地域と連携した滞在体験を提供する「SOIL Nagatoyumoto」をご紹介。

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観光客や移住者を魅了するまちとは?

長門湯本の象徴「恩湯」

長門湯本温泉はかつて、大型旅館がひしめく温泉地として賑わっていた。しかし大型ツアー需要の減少や旅館の廃業が続き、街は転換期を迎える。再生のきっかけとなったのは、山口最古の温泉であり、地域に開かれた共同温泉「恩湯」のリニューアルだった。約600年前、曹洞宗の僧・定庵禅師が神託によって発見したと伝わる湯は、地元民にとって暮らしの中心であり、旅人を迎える玄関口でもある。その価値をあらためて見直し、官民連携による「長門湯本みらいプロジェクト」が発足。

広々とした湯上がり処で、音信川を眺めながら寛げる

ランドスケープデザインから手をかけ、音信川沿いの散策路や川床、川遊び場などを整備し、街は少しずつ息を吹き返した。取材時も音信川では子どもたちが歓声を上げ、浴衣姿の女性がそぞろ歩きを楽しむ姿があった。

この地には「他者を受け入れる」、「新しいもの好き」という気質が根づき、地域社会が移住者を温かく受け入れている。バーやブリュワリー、宿泊施設が増え、2023年には、放送作家・小山薫堂氏が提唱する「湯道」の湯道文化賞を恩湯が受賞。

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「SOIL Nagatoyumoto」は、
地域文化のハブでもありました。

“観光旅の拠点”ではない、
地域コミュニティを育むホテルが誕生!

長門湯本温泉を象徴する音信川を眼下に、フィンランド式サウナで汗を流した後の外気浴で至福のととのいを提供する「SOIL Nagatoyumoto」。「恩湯」を中心に、地域文化とつながるハブ的機能をもつ“新たな”宿泊施設だ

そんな魅力的な再生を遂げる街を楽しむ宿として2025年3月に誕生したのが、「SOIL Nagatoyumoto」だ。自然育・食育・湯育の「3つの育」をテーマに掲げ、地域と連携した滞在体験を提供。恩湯を軸にしたまちづくりの一翼を担う、宿泊を超えて街の文化を育む拠点である。

街の象徴のひとつ「音信川」を各部屋から眺望でき、四季の鼓動を感じる滞在時間を提供する。写真はリバービュースイートからの眺め

「この街は“人”も魅力です。移住者を含め、皆さんが恩湯を大切に想い、街を愛しているところが、長門湯本温泉に来ると感じられる居心地のよさです」とSOIL Nagatoyumotoジェネラルマネージャー・松本拡さん。

神授の湯である恩湯に行ってみると、珍しい光景を目にする。入浴前後に子どもから年配者までが、温泉が湧き出る岩盤の上に鎮座する神像に手を合わせるのだ。浴槽内にも泉源があり、鮮度抜群の温泉はほんのり硫黄を感じる優しいぬる湯。あまりに気持ちよく時間を忘れてしまうが、聞けば1~2時間ほど浸かる人も少なくないそう。SOIL Nagatoyumotoを起点に、恩湯とその文化にどっぷり浸かる旅も乙なものである。

100年以上続いた老舗旅館・六角堂をリノベーションし、往時の材を外観や壁に生かした空間を演出。音信川のせせらぎがBGMに

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〈食育〉
地元の食材を堪能し、食育の機会にも。

レストラン「TARU」では地元の食材や調味料を使った料理を提供し、食育の場としても機能する。薪窯で焼くピザをはじめ、「梶岡牛のタリアータ」も絶品。長門が山海の食材に恵まれた土地であることを実感できるメニューだ。

 

〈湯育〉
宿泊客は、長門湯本の象徴「恩湯」が入り放題!

長門國一宮住吉神社から授かったしめ縄の奥に、住吉大明神像が鎮座。洗い場と浴槽に境界があり、神聖な浴場であることがわかる。SOIL Nagatoyumotoでは大浴場を設けずサウナのみを備え、宿泊者は恩湯に入り放題という設計で湯育を推進。ぜひサウナ後に浸かってみて。

大寧護国禅寺と長門國一宮住吉神社で御朱印が受けられる、恩湯だけの特別な御朱印紙を用意

 

〈自然育〉
“暮らし”に出合う、アクティビティも。

SUPや森林ツアーなど長門の自然を満喫できるアクティビティを揃え、ホテルが掲げるテーマのひとつである「自然育」を提案。ほかにも萩焼の深川窯見学ツアーなど、文化体験を楽しむこともできる。

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【後編】
旬のイベントや名宿
温泉街の進化にせまる!

 
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長門湯本温泉について
もっと知りたい方はこちら

 
≫公式サイト

 

恩湯
住所|山口県長門市深川湯本2265
Tel|0837-25-4100
営業時間|10:00 ~ 22:00
定休日|不定休
入浴料|大人990円、子ども(4~12歳)500円
https://onto.jp

SOIL Nagatoyumoto
住所|山口県長門市深川湯本2257
Tel|0837-25-3333 客室数:24室
料金|1泊素泊まり/ドミトリー7180円~、個室9860円~(税・サ込、2食付きプランもあり)、 サウナ/ 1500円で外来利用可 カード:AMEX、DC、DINERS、JCB、UC、VISAほか
IN|15:00 OUT|11:00
朝食|洋食(レストラン)
施設|ショップ、サウナ、イタリアンレストラン「TARU」など
https://soilis.co/nagatoyumoto

旅と暮らしの間、長門湯本温泉へ。
前編|「SOIL Nagatoyumoto」とは?
後編|旬のイベントや名宿、温泉街の進化

text: Nobuhiko Mabuchi photo: Yasuhiko Roppongi

2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」

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