沖縄出身の比嘉愛未さんが
エネルギーチャージをする
海の旅・島の旅とは?
俳優・比嘉愛未さんは潮風を身体にゆき渡らせるように深呼吸をしてから「ふ頭を見ていると、旅がはじまるワクワク感が伝わってきますね」と笑顔になった。眼下には、横浜の海と大型客船。これからどこの国へ発つのだろう。「人生のターニングポイントにはいつも旅があった」という比嘉さんに沖縄県世界自然遺産大使としての活動や、海の旅、島の旅についてうかがった。
比嘉愛未(ひが まなみ)
1986年、沖縄県出身。俳優。2005年に映画デビュー、2007年のNHK連続テレビ小説『どんど晴れ』でヒロインに抜擢され、ドラマ初出演にして初主演を果たす。人気作『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズのほか、さまざまな作品で幅広い役柄をこなし2024年は『新空港占拠』、『作りたい女と食べたい女〈シーズン2〉』、『スカイキャッスル』に出演。直近では『フォレスト』にてW主演を務めた。2023年、沖縄県世界自然遺産大使に任命される。higamanami.jp
「海はいつでも、私の原点。
自分の全力を出すために、旅が必要なんですね」

これまでさまざまな役柄を演じてきましたが、私にとっては一つひとつの役が相棒であり、同じ時間を共有してきた仲間。だから「あの役が好きです」と言われると、仲間が認められたようで、「よかったね」という気持ちになりますね。役や作品たちが誰かを癒すことで、社会の循環につながっている。そこに幸せを感じます。
仕事がひと区切りつくと、自然の豊かなところに自ら出向いてエネルギーチャージします。役をしっかりと演じてすてきな仕事をするには、心と身体を、常にフラットな状態にしておかないといけない。そのリフレッシュの方法が、私の場合は旅であり、海なんですね。先週も沖縄に帰っていましたし、東京にいるときも横浜までサッとドライブして、小さな旅を楽しみます。この間の広島ロケの合間には、フェリーで大久野島へ渡ったんですよ。温泉に入るためだけに、日帰りで。夕日が海にゆっくりと沈んでいく、あの感じ……絶景って、記憶されますよね。
沖縄に帰省するときは、家族や友人に会うのも楽しみです。おばあがつくってくれる中身汁なんて、ほかでは絶対食べられない。人生の先輩の話を聞きながら食べれば、腑に染み渡ります。とても満たされる、大事な時間です。

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一方で、一人の時間も必ずつくります。誰にも知られたくないお気に入りの入り江で、時が流れていくのを味わうんです。沖縄の人たちはみんな知ってると思います。「何もしない贅沢」みたいな時間の過ごし方を。
考えてみたら、私は人生のターニングポイントで印象的な旅をしてきました。異文化や圧倒的な自然の中に身を置くと、自分を内観できるんです。普段とは違う環境にいるからこそ、自分にフォーカスしやすいんですよね。
旅先に自然を求めるのは、やはり沖縄出身だからかもしれません。子どもの頃から森でキャンプをしたり、川遊びをしたり。沖縄の自然の中で感じていた気のよさ、自然と自分が循環していた感覚が、いまも身体の中にあるんです。あの自然が私を育ててくれて、そこで培った五感を基に、俳優として生きられる。いまの自分があるのは沖縄のおかげだと、常に思っていて……。世界自然遺産大使に任命していただいたときは、ようやく親に恩返しできるようなうれしさが込み上げました。

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念願の西表島には、大使として去年訪れることができました。潮風を感じて、波間に揺れる感じも味わいながら、目指す場所へ向かうのは、船の旅の醍醐味ですよね。石垣島からフェリーに乗り、小さな島々の間を抜けてだんだんと近づいていって。島に降り立つときのワクワクした気持ち!
やんばるを訪れたときは、世界でここにしかいない植物や動物がいることにときめきました。世界遺産となっている場所を自分自身の足で歩けるのは魅力ですね。同時に絶滅危惧種の多さにも衝撃を受けて。自然の厳しさと、環境保護の必要性を強く感じました。皆さんも行かれたらきっと感じられると思います。
同じ自然でも、海には優しさを感じます。特に離島の海の美しさは格別です。以前、慶良間諸島の阿嘉島を旅したんですが、浅瀬にちょっと顔をつけただけでもサンゴ礁が広がっているんです。夢中になって、シュノーケルをつけてずっと浮いていました。自然の一部になれるような、包まれる感覚が忘れられません。
徳之島、奄美諸島……まだまだ行ってみたい島がたくさんあります。島には一つひとつに個性がありますから。ぶらりと散歩して、地元にしかないスーパーや市場をのぞいて食文化を知ったり、自然の中に身を置いて風を感じたり。島の自然が、自分をフラットに戻してくれる。だから、新しい一歩を踏み出すことができるんです。(談)
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text: Naoko Watanabe photo: Maiko Fukui hair & make-up: Seiichi Okuhara stylist: Hitoko Goto
2025年7月号「海旅と沖縄」


































