《石川若彦》のうつわ
益子焼×コーヒーのインスピレーションが光るBeansシリーズ
栃木県・益子町の自然に寄り添いながら、自由な発想で生み出される石川若彦さんのうつわ。コーヒーをモチーフにした「Beansシリーズ」は、日々の食卓に美しさと遊び心をプラス。グラフィックの素養を活かした洗練されたうつわと、その背景にある創作哲学をご紹介。
※販売用の整理券配布は終了しております。追加販売の予定はございません。

石川若彦(いしかわ・わかひこ)
1960年、東京都生まれ。益子町への移住をきっかけに作陶を開始。「waka studio」の屋号で、陶芸を軸に多彩なものづくりを展開する。
インスピレーションから生まれる
自由な発想のうつわ

20代の頃は東京で広告制作の仕事をしていた石川若彦さん。「アナログのほうが好きというか、手を動かすのが好きだったんですかね。だからグラフィックデザインの仕事がデジタルになったときに、もうやりたくないと思って」と益子焼の窯元に嫁いだ姉を頼り、着の身着のまま移住をしたのは約35年前のこと。「ものづくりができそうだと思って益子に来たので、陶芸家になりたいとは特に思っていなかった」と笑うよう、絵画も木工も手掛ける石川さんの肩書きは、陶芸家よりもクリエイターのほうがしっくりくる。

作陶は思いついたアイデアをスケッチするところからスタート。素材の特性なども加味し、完成形をイメージしながらデザインを起こす
現在は益子町の郊外に佇む住居兼アトリエギャラリー「waka studio」にてものづくりに勤しむ石川さんだが、実はこの拠点も仲間たちとともにつくり上げた作品のひとつ。「ショベルカーを運転して山林を切り開いて、どこかで解体された古い家の窓をもらったりしてね。仲間たちとおのおのの家を順繰りに建てていったんだけど、つくるものが大きくても小さくても、結局ものづくりっていうのは同じなんだよね」と、目の前にある風景や素材からインスピレーションを得て作品をつくりはじめるというのが石川流。代表作のひとつ「Beansシリーズ」も「コーヒーショップで展示会をやらなかったら、たぶんこのアイデアは出てこなかったと思う」と話すよう、人生における瞬間的な出合いを落とし込んだ作品こそ、石川さんの作風といえる。

そんなBeansシリーズには〝コーヒー〟をキーワードにした遊び心が随所に。本焼きしたうつわをコーヒーに浸すことで、経年変化したような味わいを表現。胴部分には「Brazil」や「Cuba」といったコーヒー豆の産地が描かれているが、大胆な構図ながらも収まりがいいのはグラフィックデザイナーとしての経験が生かされているがゆえ。「初期の頃は絵をいっぱい描いたうつわをつくっていたものの、料理をする中でうつわはシンプルで飽きのこないものがいいんだと気づいて。作風がどんどん変わっているから、いずれBeansシリーズもパタッとなくなるかもしれないね」と、作家ものとの出合いが一期一会であることを思い知らされる。
コーヒーにインスパイアされたうつわとあり、コーヒーカップやカフェオレボウルとして使いたくなるが「何用のうつわですかと聞かれるけれども、結局のところ何を入れてもいいんだよね。うちではお正月にBeans Bowlでお雑煮を食べたし」と、用途は使う人次第だと話す。父が彫刻家だったこともあり、自宅にある画材や粘土が遊び道具だったという石川家。いまなお親族全員がクリエイターとして活躍しているというが、固定観念にとらわれず自由に創作を楽しむ環境に身を置いてきたことが、そのまま作品に投影されている。
作品ラインアップ
Beans Bowl

石川家では雑煮椀の代わりとしても使われた使い勝手のいいサイズ。見込みにはコーヒー豆のイラストがちらりとのぞく。
Beans Bowl S

つくるごとに売れてしまう人気商品のため、石川家の食器棚にはないのだとか。食材のもつ鮮やかな色合いを引き立たせてくれる。
Beans cup

扱いやすく強度のある信楽の土を使用。見た目はコーヒーカップだが、固定観念にとらわれることなく自由に使うのが石川流。
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Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
公式Instagram|@discoverjapan_lab
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Natsu Arai phpto: Shiho Akiyama
2025年6月号「人生100年時代、食を考える。」



































