うつわも魅力のすてきに美味しい店
｜京都人のイマオシ！③

「京都人のイマオシ！」。由緒正しい老舗から新進気鋭まで美味しいものが集まる京都。京都の街を知り尽くした京都人のお三方に、いま“推し”の店を案内してもらう。

今回案内してもらうのは、独自の釉薬を使ったうつわで清水焼に新風を吹き込む窯元・瑞光窯。その代表を務め、日々うつわに携わる土谷瑞光さんが推す美味とは？

瑞光窯・土谷瑞光（つちたに ずいこう）
1988年、京都市生まれ。1867（慶応3）年開窯の京焼・清水焼の窯元、瑞光窯の6代目。2022年にはターコイズブルー釉などオリジナルの釉薬を使ったブランド「ZUIKOU」をリリースしている

店主の個性を映す空間で
うつわも食も存分に

清水焼の窯元が多く集まる焼物の町・今熊野。その一画に工房を構える「瑞光窯」は、江戸時代中期の陶工・初代清水六兵衛の流れをくむ窯元だ。土谷瑞光さんはその6代目当主。

2022年には、オリジナル釉薬の鮮やかな色合いが美しいうつわの新ブランド「ZUIKOU」を発表し、話題を集めている。そんな若手窯元のお気に入りから、うつわ使いが光る店を中心に、イマオシの名店を教えていただいた。

時が経つのを思わず
忘れる特別な空間

まず案内してくれたのは、カフェ＆ショップ「STARDUST」。宇宙物理学者の「人の身体をつくるすべての要素は星くずでできている」という言葉に感銘を受けたオーナーの清水香那さんが、2015年の七夕に開いた店だ。織屋建の吹き抜けと風合いのある壁が目を引くカフェスペースには、古い日本の家具やキャンドルスタンド、鉱石などが配され、静謐な空気が漂う。

そして店のアイコンといえるのが、カフェで使われる陶芸家·中園晋作さんのプレートや茶碗。「吹き付けの釉薬の流れ方など、一つひとつ違う表情がいいですね」。

うつわといえばともうひとつ推してくれたのが、江戸時代創業の老舗和菓子店で、民藝運動でも知られる京都の陶芸家·河井寬次郎ゆかりの「鍵善良房 四条本店」。

名物「くずきり」は、食感とのど越しが格別なことはもちろん、寬次郎の手による書や壺などが飾られた店内で、鍵の文様が施された信玄弁当風の漆器で味わうといっそう美味しさが増す。

「うつわに限らず、空間全体が好み」というのはカフェ併設のアンティークショップ「sowgen 四条店」。「ほの暗い灯に照らされた味のある家具に囲まれ、オリジナルのブレンドコーヒーを楽しむ時間は至福のひとときです」。

一人でも家族とでも
思わず足が向く絶品鰻

また家族で訪れる店にも、土谷家のセンスが垣間見える。頻繁に足を運ぶという鰻と和食の店「碓屋」は、三河一色産が中心の活鰻を注文を受けてから腹開きにし、蒸さずに焼く関西風の蒲焼きが絶品。大阪の鰻料理店出身の店主が炭火の上で何度も返し、表面はカリッと中はふっくら焼き上げる。

鰻丼の丼は、福岡県うきは市の陶芸家·高木剛さんの作。「鰻の丼は高級感のある石もの（磁器）を使う店が多いですが、ここの丼は土もの（陶器）。お店の温かな雰囲気にもよく合いますね」。

土谷家のひいきといえば、中国料理店「美齢」も外せない。ゴマソースがかかる「蒸し鶏」やしっとり系の「チャーハン」などが絶品という。「使っている亜鉛結晶釉の皿や飯碗が、花が咲いたように美しい。記念日などによくおじゃまするお店です」と土谷さん。

そして最後に昔馴染の、工房近くのうどん店「水月」を教えていただいた。「子どもの頃は出前で、いまは店へ通っています。京風の軟らかな細麺とオーソドックスな出汁がたまらない『牛すじうどん定食』がおすすめです」。

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今回紹介したお店

STARDUST
住所｜京都市北区紫竹下竹殿町41
Tel｜075-286-7296
営業時間｜11:00〜18:00 ※カフェは電話予約制
休日｜水・木曜

鍵善良房 四条本店
住所｜京都市東山区祇園町北側264
Tel｜075-561-1818
営業時間｜10:00〜18:00（L.O.17:30）
休日｜月曜

sowgen 四条店
住所｜京都市中京区高宮町573
Tel｜075-252-1007
営業時間｜11:30〜19:00（ショップ）、11:30〜19:00（L.O.18:30）
休日｜第2水曜

鰻と和食 碓屋
住所｜京都市中京区三条通大宮西入上瓦町58
Tel｜075-823-0033
営業時間｜11:30〜14:00、18:00〜21:00（L.O.）
休日｜水曜

隠れ家中国料理 美齢
住所｜京都市上京区黒門通元誓願寺上ル寺今町511
Tel｜075-441-7597
営業時間｜11:30〜14:00、17:30〜21:00
休日｜月曜、ほか不定休あり

水月
住所｜京都市東山区今熊野南日吉町17
Tel｜075-541-8612
営業時間｜9:00〜19:00、金曜12:00〜19:00
休日｜なし

 

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text: Makiko Shiraki（Arika Inc.）　photo: Kenichi Mikuni
Discover Japan 2024年11月号「京都」