《杉田創作》
木の道具の “道具”をつくる木工作家
木工芸には欠かせない手道具の南京鉋や豆鉋をつくっている木工作家の杉田創作さん。その手道具を用いた鉋の痕跡に温もりを宿す作品は、いま注目されている。つくり手であり、その使い手でもある杉田さんのものづくりとは?
杉田創作(すぎた そうさく)
1987年生まれ。茨城県出身。車の整備士として働く中で一からものづくりをしたいと木工職人の道へ。2014年、岐阜「森林たくみ塾」で木工技術を学び、木工作家・川合優さんへの師事を経て2019年に独立。現在は茨城・つくば市に工房を構える。
つくり手として受け継ぎ
担い手として次世代へ
杉田創作さんは、木の道具の“道具”をつくる木工作家だ。木工品づくりには欠かせない手道具の「南京鉋」や「豆鉋」のつくり手であり、またその使い手でもある。
「南京鉋は曲線を削り出す鉋です。椅子のアームやカトラリーの柄など、ストロークの長い部分を削るのに適しています。豆鉋は椅子の座面やお盆など、通常の鉋が入らない面を削るのに使いますね。小さいながらもきちんと仕事をしてくれる心強い相棒です」
そう言って作業台に整然と並べた南京鉋を手に取って説明する杉田さん。南京鉋の柄が鉋刃に対して長いのは、曲面加工の際に刃を左右に動かしやすくするため。しかし、柄の厚みや形状はつくる人によって違う。杉田さんの手道具は、握りやすく使いやすいと木工作家からも評判だ。
南京鉋をつくって8年目を迎えた。木工作家を目指して、岐阜の学校で学んでいた際、先輩作家が手掛けた木の匙に出合ったことで手道具に惹かれるようになった。そこで自ら手道具のつくり手になることを決意したという。
「まずは南京鉋を使いこなせるようになろうと、卒業後は木工作家の下で修業を重ねました」
2年後に独立するもコロナ禍で仕事が激減する。将来にどこか不安を感じていたとき、岐阜の鍛冶職人調査に参加する。
「職人の高齢化や需要の関係で手道具の担い手は減る一方の現状を知りました。これは自分が頑張らないと、とあらためて思うように」
本格的にオリジナルの南京鉋づくりをはじめるが、なかなか当初はうまくいかなかったそう。
「鉋づくりの要は、刃を台に固定する台打ち。鉋刃に合わせ、穴に差し入れてゆるまないようにするのですが、これが難しい……」
木工作家の先輩に助言を請い、台の厚みや幅に改良を重ねて、ようやく少しずつ満足のいく鉋がつくれるようになった。
「まだまだです。でもうれしいことに尊敬する木工作家の方にも使ってもらえるようになった」
最近では、鉋刃の開発もはじめている。仕様に合わせて鍛冶師に依頼してきたが、打ち刃物は、細やかなメインテナンスが必須。そこで誰もが扱いやすい、錆びにくいステンレス刃を取り入れた南京鉋づくりを進めている。
受け継いだ手道具を広げて次世代へとつなぐ、杉田さんはその先を見据えている。
手道具の痕跡がいとおしい
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text: Yukiko Mori photo: Kenta Yoshizawa
2024年9月号「木と暮らす」