アイヌ工芸作家×日本の伝統工芸がコラボ
伝統工芸同士が融合した3つのプロジェクト
北海道東部に位置する阿寒湖アイヌコタンで営まれるアイヌ工芸。その作家は、家族や先達から学び、受け継いだ伝統文化の考え方や工芸の技術を進化させようと、新たな取り組みにチャレンジし続けている。刺繍や木彫などの独特で美しい意匠をより多くの方に触れ、アイヌ文化を知ってほしいとの思いから、全国各地の工芸の担い手と繋がり、新たな表現の作品づくりに取り組んでいる。
アイヌ文化の精神が息づく
阿寒湖アイヌコタン
阿寒湖アイヌコタンは、湖や火山、森を有する阿寒摩周国立公園の雄大な自然に抱かれたアイヌ文化発信の拠点。多くの旅行者が訪れる阿寒湖温泉の一角で、アイヌ工芸作家が民芸品や飲食店を営みながら、アイヌ文化の伝統的な舞踊や歌、音楽、そして工芸を受け継ぎ、発信している。
自然への敬意や感謝の気持ちを抱き、共に生きることを大切にし、その精神を受け継いできたアイヌ民族の人々は、木や水草などの植物、獣や魚の皮などの動物といった自然の素材から、生活に必要な道具や衣服、祭具をつくってきた。
アイヌ文化の独特な考え方や自然観には、阿寒湖温泉の阿寒湖アイヌコタンを訪れることでたっぷりと触れることができる。その旅のきっかけになることを願い、新たな工芸のあり方を模索し、全国各地の工芸品のつくり手との協働した取り組みを紹介する。
01|AINU meets ARITA
佐賀県の有田焼の窯元との商品開発
2021年に佐賀県有田町の有田焼窯元に出会い、アイヌ文化の独特な要素の磁器での表現に挑戦。阿寒湖アイヌ作家と有田焼窯元とのやり取りや試行錯誤を重ね、木彫作家の木彫りによる文様を鋳込によりお皿に再現したものと、アイヌ工芸作家による文様デザインを染付により表面に描いた皿にたどり着いた。
2023年には、有田焼コラボの第2弾として、木彫×鋳込による大皿を開発。
参加したのは、阿寒湖アイヌコタンの木彫作家・斉藤政輝さんと平良秀晴さん。相対したのは、佐賀県有田町のやま平窯。実際に木彫りした木型をもとに、アイヌ文様の繊細なデザインをお皿の表面に再現した。
直径約26cmの大皿には、ワンプレートや取分けする料理の皿での用途を想定し、生活に取り入れてもらいやすいものにしたいという願いが込められている。
02|AINU meets ECHIZEN
越前和紙や越前漆器による新たな表現
新たな協業先を求め、出会うことができたのは、福井県の越前和紙の山次製紙所と越前漆器の木地師・ろくろ舎。
山次製紙所の山下寛也さんと、阿寒湖アイヌコタンの刺繍作家・平良智子さんとアイヌ工芸作家・郷右近富貴子さんが出会い、山次製紙所の手漉き和紙「浮き紙」でのアイヌ文様の表現に挑戦した。
平良さんと郷右近さんが考案したアイヌ文様を、山下さんが浮き紙の独特な凹凸で表現した。アイヌ文様浮き紙は実用性のある茶缶やカードケースに加工。アイヌ文様デザインを身近に楽しんでもらえる製品として開発した。
越前漆器の木地師・ろくろ舎の酒井義夫さんは、阿寒湖アイヌコタンの木彫作家・渡辺澄夫さんと床州生さんとの工芸品開発に取り組んだ。北海道のアイヌ文化において、交易で北陸地方などから入手した漆器は、貴重な祭具や道具として大切にされてきた。その歴史を踏まえ、時代を超えた新たにアイヌ文化と越前漆器が出会うストーリーの漆器が完成した。
03|AINU meets …
新たな出会いと見たことのないアイヌ文化アイテムの開発
さらに、今も阿寒湖アイヌコタンのアイヌ工芸作家の他産地とのコラボレーションは展開を続け、富山県高岡市の金属加工製品を開発中。銅や真鍮などの金属加工技術を高めてきた高岡の職人と、阿寒湖アイヌコタンの作家による新たな表現の作品の続報を待ってほしい。
開発中の工芸品の最新情報や阿寒湖アイヌコタンの作家情報は「AKAN AINU ARTS & CRAFTS → NEXT」をチェック!
<阿寒湖アイヌコタン 参加作家>
左上から)
AINU meets ARITA アイヌ文様 有田焼:木彫作家・斉藤政輝さん
AINU meets ARITA アイヌ文様 有田焼:木彫作家・平良秀晴さん
AINU meets ECHIZEN アイヌ文様 浮き紙 茶缶:工芸作家・郷右近富貴子さん
左下から)
AINU meets ECHIZEN アイヌ文様 浮き紙 カードケース:刺繍作家・平良智子さん
AINU meets ECHIZEN アイヌ文様 漆器:木彫作家・渡辺澄夫さん
AINU meets ECHIZEN アイヌ文様 漆器:木彫作家・床州生さん
line