〈音信川うたあかり2024〉
金子みすゞの詩をテーマにしたアートイベント
長門湯本温泉で灯りと名湯に癒される夜めぐり 前編
公衆浴場を一新し、日々進化を続ける長門湯本温泉。この冬、2024年1月26日〜3月3日にかけて、住民一丸となりつくり上げた、灯りの祭典「音信川うたあかり2024」がはじまる。山口最古の温泉「恩湯(おんとう)」が生んだ、温泉に癒されながら、灯りの中をそぞろ歩きしたくなる、長門湯本の冬の風物詩へ出掛けよう。
街の灯りに誘われる
地域参加型のアートナイト
美しい音信川が流れ、情緒ある街並みにひと目で魅了される長門湯本温泉。いまでは浴衣姿の宿泊客や観光客がのんびりそぞろ歩くのが日常の風景だが、数年前までこの街は、温泉地としての求心力を失いかけていた。
状況を変える転機となったのは、2020年3月の公衆浴場「恩湯」のリニューアル。恩湯は約600年の歴史を有し、昔から地域の人々に親しまれた立ち寄り湯だった。その長門のシンボル・恩湯を起点とした生活文化を見つめ直し、地域住民と観光客との交流の場としての役割をもたせることで、あらためて地域の誇りとなる価値を構築した。最大のポイントが企業任せ、行政任せ、他人任せではなく、地域の若手が中心となり畏敬の念をもって恩湯を再建したこと。外部の専門的な知見を取り入れながらも、最終決定をするのは地元住民。それは「街の未来はこうつくる」という意思表明であり、まさにいまその想いの下、恩湯を中心に温泉街全体がリブランディングへと進んでいる。
その進化の一端を感じられるイベントが「音信川うたあかり」だ。長門湯本温泉には、春は桜、夏は川遊び、秋は紅葉と、四季折々の魅力があるが、冬ならではの温泉街も楽しんでほしいと、“灯り”をフックとしたイベントを立案。白羽の矢が立ったのが照明デザイナー・長町志穂さんだった。
長町さんは「長門湯本でしかできない“地域の灯り”をつくる必要がありました。それも住民が自分ごととして考えられるライトアップでないといけません」。そのための前段階として、’17年、’18年に地域の未来図を皆で共有するための社会実験「おとずれリバーフェスタ」を開催。地域とともに風景の土台をつくりながら、’19年2月、音信川うたあかりを初開催。地元民を対象としたワークショップを実施したり、長門市内の小学生に灯りのモチーフをつくってもらったり。「“自分ごと”のきっかけをつくることができたのは大きかった」とは長町さんの言葉だ。
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長門の夜は、美酒ホッピングも欠かせない
長門湯本の街づくりを縁に移住したブルワリー
365+1 BEER
代表・有賀敬直さんは、長門湯本の街づくりのコンサルを担当したことが縁となりブルワリーを開業。醸造は妻の彩香さんが行い、副原料に地元産の果物やコーヒーを用いるなど、長門ならではのクラフトビール造りに励む。「地元の方にクラフトビールの多様性、魅力をもっと広められたら」と型にはまらず、さまざまな種類を展開する。
音信川を横目にバーカクテルでひと息
THE BAR NAGATO
大阪で約27年バーを営んできた黒田大介さんが、「おとずれリバーフェスタ」の出店をきっかけに移住。店内から音信川を望む好ロケーションの中、確かな技が光るカクテルが楽しめる。おすすめは山口産のフレッシュフルーツを使う一杯。
金子みすゞの詩にちなんだ夜カフェドリンクも!
あけぼのカフェ
温泉旅館「界 長門」に併設するカフェで、宿泊者以外もテイクアウト利用OK。「音信川うたあかり2024」の期間中は夜間営業を行い、りんごティーなど金子みすゞの詩にちなんだ4種のドリンクを提供。
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感性も心身も整う恩湯の魅力とは?
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音信川うたあかり2024
期間|2024年1月26日(金)〜3月3日(日)
時間|日没〜22:00
問|長門湯本温泉まち
Mail|contact@yumotoonsen.com
https://utaakari.yumotoonsen.com
365+1 BEER
住所|山口県長門市深川湯本1247-2
Tel|なし
営業時間|金曜15:00〜19:00、土曜13:00〜(変更の可能性あり。Instagram @sanrokuroku_beerを要確認)
定休日|不定休
THE BAR NAGATO
住所|山口県長門市深川湯本1325-1 だいご長屋2F
Tel|なし
営業時間|18:00〜24:00
定休日|月曜
あけぼのカフェ
住所|山口県長門市深川湯本2229-1
Tel|0570-073-011(界 長門)
営業時間|11:00〜16:00 ※「音信川うたあかり2024」期間中は〜22:00
定休日|不定休
text: Tsutomu Isayama photo: Hiromasa Otsuka
2024年2月号「人生に効く温泉」