TRAVEL

進化する令和の建築デザイン
一歩先ゆくライフスタイルが見つかる
100年後の未来を担う、いま注目の企業④

2023.7.22
進化する令和の建築デザイン<br><small>一歩先ゆくライフスタイルが見つかる<br>100年後の未来を担う、いま注目の企業④</small>

食料問題に環境問題と、未来への課題が山積する昨今。問題解決への糸口を探るべく、新しいモノやコトに目を向けている人や企業は、どんな取り組みを行っているのか。趣向を凝らした事例から、一歩先ゆくライフスタイルを見つけたい。今回は「建築」をテーマに、進化する令和の建築デザインを紹介します。

≪前の記事を読む

自然と建築の境界線はなくなる!?
大地の中に潜り込んだような図書館がオープン

緑豊かな谷地に、突如として現れるエントランス。谷筋の小さな裂け目の奥に空洞を設けたとあって、まるで秘密基地のよう

人が心地よく生きるための本質的な喜びとは、いったい何なのか−−−−。

豊かさの指標が変化している現代において、これからの人や社会の在り方を提案するサステイナブルファーム&パーク「クルックフィールズ」に、循環の新たな解を示す「地中図書館」が誕生した。

晴れた日には畑を耕し、雨の日には読書をする。そんな人たちのために生まれた図書館は、思いがけない空間と本に出合える場。30 haもの広大な敷地をさまよう中で突如として現れる入り口を見つけたのならば、あとは大地の下に潜り込むだけ。洞窟のように地中に横たわる館内では、植物が土の中の微生物を栄養にして成長するがごとく、本を読んで知識や想像力を蓄えることができるのだ。

大地と人間の英知に包まれる贅沢な羽休めが終わった後は、再び明るい地上へと出て大地を踏み締める。そんな未来へ進む人々の支えとなるような館内では、心と身体がバランスよくめぐるひとときを過ごしたい。

地中図書館
住所|千葉県木更津市矢那2503 KURKKU FIELDS内
開館時間|12:00〜17:00
休館日|火・水曜(祝日を除く) ※事前予約制
入館料|無料 ※ただし年会費1000円(子どもは500円)のKURKKU FIELS MEMBERSHIPへの加入および、KURKKU FIELS入場には保全料として300円が必要
https://kurkkufields.jp/experience/library

自然や農的な暮らしに関する本を中心に、詩や哲学といった広がりが感じられる蔵書を収容。洞窟に似た空間を、本棚が取り囲む

森のような緑地が都心に!
2023年秋に麻布台ヒルズが生まれる

まるで建物が緑に包まれているかのような屋上緑化を施した低層部。ここでの暮らしすべてがウェルネスにつながる
Ⓒ DBox for Mori Building Co., Ltd.

建築と自然の調和をゼロから問いただしたプロジェクトが都心にもある。それが、2023年秋誕生予定の「麻布台ヒルズ」だ。

“Modern Urban Village”をコンセプトに、都市の洗練さと小さな村のような親密さを兼ね備えた未来系ヒルズには、脱炭素化や省エネルギー化といった世界中が頭を悩ませている課題の解が詰め込まれている。

中でも特徴的なものが、都心の既成市街地に実現した約2.4haの広大な緑地。憩いの場を担うだけでなく、都心部におけるヒートアイランド現象の緩和にもひと役買うのだ。

また、街全体には再生可能エネルギー電力を100%供給するほか、エネルギー効率の向上を図る技術も大規模に導入していく予定。人が人らしく生きるための環境を軸に生まれる新たな“村”は、今後の都市の在り方を考える教材にもなるだろう。

麻布台ヒルズ
開業日|2023年秋頃予定
問い合わせ|森ビル 広報室
Tel|03-6406-6606
www.mori.co.jp

建築は“印刷”できる時代へ
人材不足や材料ロスへの解決にも

約1tの3Dプリンター製の壁を、何枚も組み合わせた建物。建築基準法に適合する設計のため、3Dプリンター住宅が主流となるのも遠い日ではない
提供:Polyuse
プリンター本体はもちろん、インクに相当する資材からプリンター用ソフトウェアの開発までを自社で一手に担う
提供:Polyuse

建設用3Dプリンターを開発するスタートアップ企業「Polyuse」。2022年、国土交通省土佐国道事務所の道路改良工事にて、国内初の建設3Dプリンター製の集水升が設置されたことを皮切りに、公共工事で使用計画が動きはじめた。

従来の型枠工事では難しかった構造が比較的簡単につくれるとあって、期待は大きい。新技術の先には多様な生物との共生もかなう、環境や生態系にも配慮したインフラへの展望がある。

Polyuse
Thttps://polyuse.xyz
※問い合わせはHPから

木造建築ブームが来た!
大阪・関西万博の会場シンボルは世界最大級の木造建築に

建築面積は約6万㎡。高さ12m(外側は20m)の屋上「リングスカイウォーク」からは、会場全体や瀬戸内海の雄大な自然が見渡せる
提供:2025年日本国際博覧会協会

木材が再生可能な循環資源とあり、世界各国で木造建築へと原点回帰する動きが高まっている。その代表ともなる建造物が、2025年に開催予定の「大阪・関西万博」のシンボル・大屋根(リング)だ。

デザインを手掛けたのは、建築家の藤本壮介さん。“多様でありながら、ひとつ”という万博の理念を表現し、屋根下は会場の主動線として機能すると同時に、雨風や日差しを遮る役割も。圧倒的スケールの木造建築は、何を教えてくれるのか。

大阪・関西万博
問い合わせ|2025年日本国際博覧会
www.expo2025.or.jp
※問い合わせはHPから

国内最大級の木造賃貸オフィスビルの竣工へ

地上17階を予定。高層建築のイメージが一転する、温もりあるビルに期待が高まる
提供:三井不動産、竹中工務店
※当パースは現時点でのイメージであり、今後変更の可能性があります

三井不動産と竹中工務店は、先述の大屋根とはまた異なる建築として、日本橋に国内最大級の木造賃貸オフィスビルを計画中。新たに建設される木造高層ビルには、耐火集成材など最先端の耐火・木造技術を導入予定。国産材を積極的に使用することで、森林資源の循環も守る。

(仮称)本町一丁目3番地計画
問い合わせ|三井不動産
Tel|03-3246-3155
www.mitsuifudosan.co.jp

読了ライン

 

究極のサステイナブルファッション
 
≫次の記事を読む

 

text: Natsu Arai
Discover Japan 2023年6月号「愛されるブランドのつくり方。」

RECOMMEND

READ MORE