桜井ユキ、モナ・リザに匹敵する国宝絵画を鑑賞!
秋の京都は茶と千利休ゆかりの地へ〈中編〉
大徳寺ではあの『モナ・リザ』に匹敵する国宝の障壁画が特別公開中。洛北の名刹で桜井ユキさんを待っていたのは、日本絵画のスーパースターが描いた壮大な作品でした。
千利休の菩提寺「大徳寺 聚光院」で
里帰りした国宝の障壁画を拝見!
京都市中心部から北へ、車で約20分。臨済宗大徳寺派の大本山・大徳寺は、織田信長や豊臣秀吉といった戦国大名、そして彼らに仕えた茶聖・千利休とゆかりの深い名刹だ。塔頭のひとつである聚光院は、1566年に三好義継が創建。千利休の菩提寺であり、茶道三千家歴代の墓所でもある。
その創建時、本堂のための障壁画が制作された。手掛けたのは安土桃山時代を代表する絵師・狩野永徳と、その父・松栄。当時弱冠24歳だった永徳が描いた『花鳥図』をはじめ、松栄による『八景図』などが荘厳に彩る。
1979年、パリのルーブル美術館から名画『モナ・リザ』が来日。その返礼として海を渡りフランスで展示されたのが、ほかでもないこの障壁画だった。まさに日本美術を代表する傑作。国宝に指定され、通常は京都国立博物館に保管されているが、このたび5年半ぶりに“里帰り”。本堂で特別公開されている。
幽玄な寺院の空間に寄り添う、46面の名作。描かれた当時と同じ場所で鑑賞する障壁画は、美術館での展示とは異なった感動をもたらしてくれる。現存する作品の極めて少ない天才絵師の絵画が、圧巻のスケールで楽しめる貴重な機会。ぜひ見届けたい。
安土桃山時代から現代に至るまで、多くの人々を魅了してきた障壁画には、どんなストーリーがあるのだろう。聚光院ご住職の小野澤虎洞さんに話をうかがった。
「狩野永徳は後に天下人のお抱え絵師となり、たくさんの障壁画を手掛けました。24歳の永徳がここで描いたものは、彼の原点といえるでしょう。安土城や大坂城などの絵は戦火などですべて焼失してしまったので、これだけの大作が残っているのは聚光院だけです」。親子で描いた作品という点が、ユニークで興味深いとも話す。「制作当時、狩野派の当主は松栄でしたが、本堂中心の『室中の間』は息子である永徳が手掛けています。なぜなのかはわかりませんが、親子の胸中を想像するとおもしろいですね。永徳の祖父である狩野元信は長生きで、どこへ行くにも永徳を連れて行ったといわれています。永徳の力強い作風は、おじいさん譲りだったのでしょう。一方、お父さんの松栄は非常に穏やかで繊細な作風です」。親子それぞれの個性を意識して鑑賞すると、いっそう味わい深い。
保存と修復を目的に京都国立博物館に収蔵され、普段は高精細複製画が展示されている障壁画。実は驚くことに十数年前まで、約440年にわたってオリジナルは本堂にあったという。「よく傷がつかなかったな、と思います。ただ、どうも後世に誰かがこっそり描き足したような箇所があって」と、ご住職も苦笑い。いつかの時代に修行中だった小僧さんの仕業だろうか。長年、寺の暮らしの中にあったからこそのエピソードだ。
国宝が本来の場所に収まった状態で見ることができる貴重な機会。作品にじっくりと見入る桜井さん。「ダイナミックに描かれた襖絵から、すごいエネルギーを感じます。450年以上も前の作品だと思うと、自然と背筋が伸びますね」。
今回は、現代日本画家・千住博さんによる『滝』も一般公開。障壁画の大作、今昔の競演を楽しみたい。
大徳寺 聚光院 国宝里帰り 特別公開
住所|京都市北区紫野大徳寺町58
Tel|075-231-7015(京都春秋)※予約はこちら(当日の2カ月前から5日前)
期間|〜2023年3月26日(日)
拝観時間|10:00〜16:00(予約優先。ツアー形式のグループで拝観。所要40分程度)
拝観料|大人2000円、中高生1000円(※小学生以下拝観不可)
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text: Discover Japan photo: Mariko Taya hair & make-up: Naoki Ishikawa
Discover Japan 2022年11月号「京都を味わう旅へ」