大分県《界 別府》
隈研吾設計の温泉旅館で、心をほぐす”現代湯治”体験。前編
現代人のライフスタイルにフィットした独自の湯治体験プログラムを提供する、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」。水引デザイナーとして活躍する長浦ちえさんとともに「界 別府」を訪れ、心と身体を癒す湯治体験を堪能した。
〈体験した人〉
長浦ちえ(ながうら ちえ)
福岡県生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒業後、企業の水引デザイナーとして水引商品等の企画・開発に携わる。2013年、「TIER」を設立。水引文化研究家・水引デザイナーとして幅広い活動を行う。近著は『日本水引』(誠文堂新光社)
建築視点でも楽しめる
温泉旅館で“プチ湯治”
日本のウェルネスツーリズムの原点といえば、温泉地での湯治であろう。湯治は長期滞在による温泉療養が一般的だが、近年は現代のライフスタイルに合わせ、短期滞在で心身を整える〝プチ湯治〞が注目を集めている。
星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」では、1泊2日で温泉の効果を引き出す「うるはし現代湯治」を提案。「界の湯守り」となったスタッフが、泉質や入浴法を紹介するプログラム「温泉いろは」や、血流の改善を促す「現代湯治体操」を指南するほか、館内には「湯守りのこだわりドリンク」が飲める「湯上がり処」や、温泉の基礎知識が身につく「温泉ギャラリー」などが設置されている。まさに現代的な湯治体験ができるというわけだ。
各地に点在する界の中で、長浦ちえさんが訪れたのは、建築家・隈研吾さんが設計を手掛けた「界 別府」。「ドラマティック温泉街」というコンセプトの下、別府の温泉街に見立てた意匠が館内の随所に施され、建築的視点をもって過ごすのもおもしろい。
石畳の路地を配したロビーフロアは、ドリンクが楽しめる「トラベルライブラリー」やショップ、「ラボ」が夜店のように軒を連ね、和紙風ちょうちんで彩られた「湯の広場」には潮風が吹き抜けるオープンエアーの足湯を併設。ご当地部屋「柿渋の間」と呼ぶ客室では、別府の名所「血の池地獄」から着想を得た柿渋色の壁紙や、大分の伝統工芸「豊後絞り」を使用したインテリアを採用するなど地域の特色をモダンに表現している。「この土地の文化に触れられる仕掛けが、空間の至るところに取り入れられていて、とてもすてきだなと感じました。客室の大きな窓からは別府湾が一望でき、時の移ろいによって多様な色彩をまとう海と空を眺めていると、心がリセットされていくようです」
外の景色と同様館内も朝、昼、夜とドラマティックに表情を変えていく。温泉街のように界 別府のそぞろ歩きを楽しんでほしい。
界 別府の温泉は
浸かるだけではもったいない
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text:NaoOhmori photo:ShimpeiFukazawa
2022年10月号「旅で、ととのう。」