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北陸⼯芸の祭典 GO FOR KOGEI 2022
富山、石川、福井を舞台にした⼯芸の祭典

2022.9.15
北陸⼯芸の祭典 GO FOR KOGEI 2022<br><small>富山、石川、福井を舞台にした⼯芸の祭典</small>

「北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI」は、豊かな自然や歴史が育む文化を受け継いできた北陸を舞台に、広域的なアートエリアの形成を目指し、工芸の魅力を国内外に発信する取り組み。2022年9月17日(土)〜10月23日(日)まで開催するGO FOR KOGEI 2022 では、重要文化財に指定された寺社仏閣3会場で同時開催する特別展や各地域で開催される7つの「工芸祭」との連携など、北陸を旅するきっかけとなるさまざまなプログラムを実施する。

感情をゆらす、工芸の旅

GO FOR KOGEIは、北陸を舞台に工芸の魅力を今日的視点から発信するプラットホームとして、2020年より始まった。富山、石川、福井の北陸三県には、地場の自然素材や古くから受け継がれてきた技術を活かした工芸の産地が数多く存在している。また、美術館や大学、研究所、工房が集積し、専門的な見地から研究・制作が行われることで、これまでの領域にとらわれない新たな工芸が芽吹く、豊かな土壌が育まれている。幅広い工芸を有する北陸から工芸の魅力を発信するべく、昨年は2つの大型展を開催し、多様化する工芸のあり方をそれと隣接する現代アートやデザインと共に提示した。

今回は「感情をゆらす、工芸の旅」をテーマに、現代を生きる私たちと「もの」との関わり方を、ものづくりの源流とも言える工芸を通して再考していく。これまで手仕事で行われてきた工芸の取り組みも時代と共に変遷を歩んできた。時間を超えた工芸との出会いは、つくり手や産地だけでなく、その時代に沿った素材との向き合い方を知るきっかけにもなる。おおよそ自分とは無関係と思われたものと向き合うことは、ものと人が寄り添い、時間をかけて感情をゆらし、何気ない暮らしの中に質感をもたらしてくれる。

GO FOR KOGEI 2022 では、プリミティブへの回帰から最新のテクノロジーまで「ものづくり」の振幅を時間軸の中でみせる特別展をはじめ、各地域のつくり手らとつながる工芸祭や、工芸を育んできた北陸の文化、風土、歴史を見出す各種プログラムを開催する。太古から変わらない普遍的なものから未来志向のものまで、工芸と人々の暮らしが密接に結びついたこの北陸の地で触れる経験は、訪れる人の機微に触れ、感情をゆらすものとなるだろう。

特別展
つくる―土地、くらし、祈りが織りなすもの―

特別展「つくる―土地、くらし、祈りが織りなすものー」は、昨年開催した「工芸的な美しさの行方 工芸、現代アート、アール・ブリュット」展で見せた、“ジャンルを超えた素材と制作の関係性と創造性”の続編にあたる内容。本展では、繊維、染織、陶、漆、金属、木、紙などの、多様な素材とそれへの関わり方や技術を、広く「つくる」という視点によって見直し、創作活動を行う、作家らを紹介する。

富山県高岡市/勝興寺の出品作家

勝興寺は、日本海の沿岸部、富山県高岡市伏木古国府に位置する浄土真宗本願寺派の寺院。本願寺八世蓮如上人が、文明3年(1471年)越中の布教の拠点として創設し、様々な変遷を経て現在の地に移った。約3万㎡の広大な境内には、本堂をはじめとする、12棟の建造物が重要文化財に指定されている。1998年から「平成の大修理」として23年をかけて行われた保存修理事業が2021年に完了。本展は、重要文化財の指定をうける大広間、式台、台所、書院などの建築空間と、庭園など屋外空間を含む広大なエリアで展開。

《きっかけをかさねる 2022》2022 展示風景「きっかけをかさねる」(2022年)東京ガーデンテラス紀尾井町

小笠原森氏は、大学で陶芸を学び、当時から身体的スケールで焼き物を制作している。素材と身体との関係を探求し、ときに高さ2mを超える焼き物も手がける。作品は土を積むことからはじまる。土を積み重ねることで現れる形と、身体を動かし自らの行為によって現れる形と、素材と身体の繰り返される延々の反応から、作品が生み出される。反応の集積から表出した造形には、動的な有機体のような印象を与える。

《息を織る 2021》2021 展示風景「上野アーティストプロジェクト2021 Everyday Life:わたしは生まれなおしている」 (2021年)東京都美術館ギャラリーA・C Photo: Daisaku OOZU 提供:東京都美術館

小曽川瑠那氏のガラスの作品は、生や記憶を保管するための記録媒体と捉えて制作を行なっている。近作《息を織る》は、コロナ禍の自身の命の記録として、熔けたガラスに息を吹き込み、目に見える形で生の痕跡を表したいという考えに基づいた作品である。今回は、北陸に在住する約200名が作品制作に加わり、小曽川とともに、自身の生の記録をガラスに吹き込む。「この地の命」を浮かび上がらす参加型作品として勝興寺にて展示を行う。

そのほか、勝興寺の出品作家
樫尾聡美氏、鎌江一美氏、河合由美子氏、小森谷章氏、奈良祐希氏、福本潮子氏、細尾真孝氏、宮木亜菜氏、吉田真一郎氏

石川県小松市/那谷寺の出品作家

那谷寺は、九谷焼の陶石が取れる白山の麓に位置する石川県小松市の仏教寺院。養老元年(717年)に泰澄が創建したと伝えられている。広い境内は奇岩遊仙境と称され、紅葉狩りの名所でもあり、岩窟内に造られた本殿など7つの重要文化財と2箇所の名勝がある。本展は、特別拝観エリアに位置する重要文化財の書院や庭園、また通常拝観エリアの奇岩遊仙境が位置する境内や森の中で展示が行われる。

《この土地に生きる》2019 展示風景「滋賀近美アートスポットプロジェクトvol.2:Symbiosis」(2019年) 滋賀県高島市泰山寺付近

井上唯氏は、土地の自然や風土と、そこで育まれてきた人間の営みに関心を寄せ、土地の素材や、編む、結ぶ、縫うといった原初的な手法を用いて、目に見えない繋がりや光景をつくりだすインスタレーション作品を各地で発表している。出品作品は、昔からこの地域だけでなく広く遠方からも信仰を集めてきた“白山”の存在をテーマに、「みくまりのかみ(水分神)」という山と一体化した水への信仰にも着目。分水嶺から始まり、山肌をつくり、地中や海へと繋がっていく水の流れを、地元の糸や繊維によって表したスケールの大きな作品である。

《東京物語家具シリーズ》2022

近藤七彩氏は、大学で金工を学び、在学中から、手放された古家具を素材に作品を手がけている。家具本来の機能や用途を残し、金属の新たな組み込みや、フレームを新たに与えることによって、現代のライフスタイルに馴染むように家具の概念を拡張する。人の暮らしで染み付いた、かつての佇まいを忘れ去るほど、インテリアともオブジェとも形容できないような、独特な新鮮味を作品から感じ取ることができる。

そのほか、那谷寺の出品作家
鵜飼康平氏、佐合道子氏、新里明士氏、入沢拓氏

福井県越前市/大瀧神社・岡太神社の出品作家

大瀧神社・岡太神社は、深い山に囲まれた越前和紙の工房が軒を連ねる福井県越前市に位置する。大瀧神社は、養老3年(719年)に泰澄が創設したと伝えられ、岡太神社には日本で唯一の紙の神様、川上御前が祀られている。山の頂にある上宮(奥の院)とそのふもとに建つ下宮があり、下宮の本殿は両神社の共有となっていることから、2つの神社の名前が併記されている。本展は、下宮の境内及び、周辺の杉林の中で展開する。

《皮トンビ》2022 牛革、ミクストメディア展示風景:「みる誕生 鴻池朋子」展 高松市美術館(2022年)H6,000×W12,000cm Photo: Tomoko Konoike

鴻池朋子氏は、絵画、彫刻、映像、アニメーション、物語など様々なメディアを用いて、一貫して芸術の根源的な問い直しを続けている。近年は、旅の途中で出会う人や言葉、自然環境や動植物など、出会いのなかから生まれる制作手法を試みている。出品作品の《皮トンビ》は、牛革を漉いた際にでる裏革を縫い合わせてできている。雨水をうけ、日の光をうけ、常に外部に晒される躯体から、素材とものづくりに対する問いや、この地で存在することの根源的な意味の問いが投げかけられる。

そのほか、大瀧神社・岡太神社の出品作家
橋本雅也氏、六本木百合香氏

つくる―土地、くらし、祈りが織りなすものー
日程|2022年9月17日(土)〜10月23日(日)
開館時間|9:00〜16:00
※入館は閉館の30分前まで
※那谷寺は9:15〜
会場|勝興寺(富山県高岡市伏木古国府17-1)那谷寺(石川県小松市那谷町ユ122)大瀧神社・岡太神社(福井県越前市大滝町13-1)
休館日|なし

チケット詳細
共通パスポート
前売り|1800円 9/16(金)まで販売
当日|2000円 9/17(土)から販売

個別入場券
勝興寺|1200円
那谷寺|1200円
大瀧神社・岡太神社|500円
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02qh330y7ze21.html#detail

工芸×Design がつくるこれからの暮らし

シトウレイ×高橋悠眞《re-LIFE》

GO FOR KOGEI 2021 特別展Ⅱ「工芸×Design13人のディレクターが描く工芸のある暮らしの姿」で生まれたプロダクトを用いた北陸ならではの飲食体験をはじめ、何気ない暮らし中に質感をもたらしてくれる工芸を体感するプログラムを開催。

日程|9月1日(土)〜10月23日(日)の間
プログラム詳細、会場はWEBサイトへ
https://goforkogei.com/#program

23品目の国指定の伝統的工芸品が作られる北陸では、アートやデザインの領域に拡大する新たな工芸の魅力を体感できる「工芸祭」が多数開催されている。富山、石川、福井の3県をまたがって開催される特別展や各種プログラムとともに、工芸を巡るホクリク旅を楽しんでみてはいかがだろうか。

北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2022
https://goforkogei.com/

富山ガラスフェスタ
会場|富山ガラス工房(富山県富山市古沢152番地)
日程|10月1日(土)〜10月2日(日)
https://toyama-garasukobo.jp/information/entry/festa2021.html

高岡クラフト市場街
会場|富山県高岡市内
日程|9月23日(金)〜9月25日(日)※オンラインは、9月17日から配信
https://ichibamachi.jp/

金沢21 世紀工芸祭
会場|石川県金沢市内各所
日程|10月予定
https://21c-kogei.jp/

KOGEI Art Fair Kanazawa 2022
会場|ハイアット セントリック金沢(石川県金沢市広岡1-5-2)
日程|12月9日(金)〜12月11日(日)※12月9日は招待者限定
https://kogei-artfair.jp/

KUTANism 2022
会場|石川県能美市・小松市内
日程|10月15日(土)〜12月11日(日)
https://kutanism.com/

RENEW/2022
会場|福井県鯖江市・越前市・越前町内
日程|10月7日(金)〜10月9日(日)
https://renew-fukui.com/

千年未来工藝祭
会場|越前市アイシンスポーツアリーナ(福井県越前市高瀬2丁目8-23)
日程|8月27日(土)〜8月28日(日)
https://craft1000mirai.jp/

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