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《高知県立牧野植物園》
植物分類学の父・牧野富太郎の探究心を学ぶ
3|植栽

2022.8.14 PR
《高知県立牧野植物園》<br> <small>植物分類学の父・牧野富太郎の探究心を学ぶ</small><br> 3|植栽

広大な敷地に3000種類もの植物が生育する高知県立牧野植物園。ここでは詳細な植物ラベルが付けられ、生きた図鑑として堪能できる。

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高知の植物生態から薬草・薬木まで!
散策を楽しむ

「植物園をつくるなら五台山がええ」。89歳の牧野博士のこの一声で、植物園の場所が決まった。五台山竹林寺の「南の坊」跡の周辺を譲り受けての開園。寺の石畳や周囲の自然と調和し、山の起伏を利用した植物園はランドスケープ的な魅力もある。

園で最初に迎えてくれるのが「土佐の植物生態園」だ。ここでは高知の野生植物を植栽し、山地から海岸に至るまでのさまざまな環境を再現。一見地味だが稀少な植物が多く、ここだけで一日過ごせるというマニアも少なくない。歩みを進めると、牧野博士の生涯を解説した展示館の中庭へ。ここではよそでは見られない博士ゆかりの植物コレクションがひしめき合っている。

2010年にリニューアルした温室は、開園当初、パパイヤやバナナなど食用になる熱帯植物をはじめ、有用植物も豊富に植栽し、人々の生活の知恵になるものを展示したいという思いでつくられたそうだ。京都大学に相談すると、「牧野博士の植物園だから、ありふれた熱帯植物では引け目をとる」と、多くの植物を寄贈してくれた。

園内にはほかに、観賞に適した四季折々の花を配した南園、薬用植物区、こんこん山広場などバラエティ豊か。たっぷり時間をとって出掛けたい。

左)1階ウッドデッキ前の池には、1mを超えるオオオニバスの葉が浮かぶ。右)みどりの塔から続く回廊ではリュウビンタイなど原始の植物が一面を覆う

稀少種から身近な果物まで、熱帯植物の多様性を実感!
温室

エントランスは大木の洞窟をイメージした9mのみどりの塔。締め殺しの木といわれるアコウの力強い気根に覆われた幻想的な空間が広がる。続く乾燥地エリアは、サボテンや多肉植物など、過酷な乾燥気候に耐えるための姿に魅了される。熱帯の暮らしと関わりのある植物のコーナーには、バニラ、アサイー、インドボダイジュなど馴染みのある植物が。ジャングルゾーンはまさに熱帯雨林の森だ。ラン展や食虫植物展など子どもから大人まで楽しめる企画も随時開催。

アーチに仕立てたカギカズラ。カギ状の茎が漢方薬に使われ、俗にヒステリー予防に有効

漢方薬や民間薬になる薬草・薬木を間近で。
薬用植物区

牧野博士の植物研究が本草学に源流をもつことから、薬用植物に特化して2006年頃に設けられたゾーン。本草学とは薬用とする植物、動物、鉱物などを研究する学問のこと。博士の思いを受け継ぎ、牧野植物園では薬用植物の研究や普及に取り組んでいる。たとえば柿のへたはしゃっくり止めに、キキョウはせき止めに、トウキは婦人病に、ハトムギは美肌作用あり、など効能が書かれたラベルを見ながら歩くのが興味深い。

雨水利用の人工の小川も自然そのもの

8桁の番号で植物の戸籍がわかる生きた植物標本
土佐の植物生態園

高知に自生する700種ほどの野生植物が一堂に会する、とても貴重な場所。山地、丘陵地、人里、海岸など、土佐の植生をゾーンごとに分け、それぞれに適した植物を自然さながらに植栽している。植物ラベルは、自生する環境や命名のウンチクなどを詳細に記載。ラテン語で記される学名の最後に「Makino」とあるものは博士が命名した植物だとわかる。

高知によく見られる、蛇紋岩地の植生ゾーン。高知特有の植物を見ることができる

もと竹林寺の境内を造園し、牧野植物園が始まった場所
南園

寺の古い石垣や参道と調和するよう、多彩な植物を配したエリア。蛇紋岩植生区や石灰岩植生区に高知固有の植物を集めた。開園50周年を機につくった記念庭園は回遊式水景庭園で、サクラ類やハナショウブ、ハスなど東洋の園芸植物が季節を彩る。

ヒオウギ、ホソバヒメトラノオ、ハンカイソウなど、四国の草原に生きる植物を見られる

2019年オープン。展望台から園を一望できる
こんこん山広場

こんこんと湧き出る植物の知識を広めたいと、孟子の言葉を借りた牧野博士発行の雑誌名から命名。草原エリア、花木類のエリア、芝生広場の3つのエリアからなり、もともとあるクスノキやヤマモモなどが木陰をつくる気持ちのいい場所。

 


植物園の建築・見どころは?
 
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text: Yukie Masumoto photo: Yoshihito Ozawa
2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!」

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