横須賀市の平和モニュメント
《THE AXIS OF PEACE》
天高く伸びゆく平和の光
体験価値の創造を通じて、企業・団体のコミュニケーションをデザインする博展は、神奈川県横須賀市の平和中央公園にある「平和モニュメント」のリニューアルプロジェクトにおいて、パノラマティクスとともに、デザイン設計・施工を担当した。平和中央公園は1970年に開設された“平和を願う公園”で、東京湾や猿島なども見渡せる眺望の良い場所として、地域内外から愛されている。そんな、横須賀市の新たなシンボルとなった昼夜の光で表情を変える「平和モニュメント」の魅力とは・・・・・・。
公園の記憶
このプロジェクトは横須賀の平和中央公園のリニューアルに伴い、園内に平和を願ったモニュメントを作るという計画。設計にあたり、博展とパノラマティクスはフィールドワークを通じて、この土地の持つ記憶を掘り起こした。そして平和中央公園があった高台は戦時中、見晴らしの良い地形を利用した砲台が作られていたことを知る。
今でも横須賀には砲台の跡地が多く残っており、過去の記憶をつなぎとめる場となっている。そこで全く新しいものを作るのではなく、過去の記憶である砲台の要素を抽出し、平和の象徴のモニュメントに取り入れ、過去と現在をつなぎとめるデザインにしようと考えたそうだ。
砲台跡の土台の模様、建物に多く使われていたレンガの凹凸など、ありのまま使うのではなく、「表情」をデザインに落とし込んでいった。
桜の紋
公園の工事が始まると、当時の砲台に使われていたレンガが多く発掘され、そこには横須賀のレンガの証である桜の紋が印字されていた。この桜の紋も大事な記憶と捉え、新たなモニュメントにも刻印できないかと考えた。そこで粘土をレンガの紋に押し当て、当時の紋様の原型を取得。粘土の型を3Dスキャナで取り込み、3Dプリンターを駆使してモニュメントに印字した。
平和の軸
このモニュメントは日が暮れると平和の光を天に放つ「光台」となり、揺るぎない平和の軸を表出させる。1000mを超える光は、遠く離れた場所でも見ることができ、日常生活の中でも平和の思いを感じることができる。災害時には町が停電しても発電機で照明が点灯できるような仕組みとなっており、広域避難地となっている公園へ灯台のように人々を導きく。今では消えかけてしまった平和という思いを誰もが思い出すことができるモニュメントとを目指した。
平和の輪
モニュメントの天井や中央の円柱には多くの円が施されている。円には古くから「無限、永遠」という意味があった。そこで永続的な平和の願いを込めて、横須賀市民が描いた円形デザインのくり抜きが施され、多くの「平和の輪」を集め、スキャンしてデータ化した。
円の配置も公園の高台に吹く海風を使いパターンを作成し、円を一つ一つ配置を落とし込んでいった。完成したデータをもとに天井や円柱にレーザーで穴を開けることで、人々の描いた個性的で歪みのある円がモニュメントに加わった。コロナ禍で人と人の繋がりが希薄になっていた世の中だったのもあり、集めた円をモニュメントに集約することで、繋がりの大切さを感じてもらおうと考えた。
日中は日光が降り注ぎ、人々が描いた円から漏れる光を浴びることで、平和を感じることができる。夜間は人々の平和の願いがこもった小さな光の円で満たされ、高台から見える家々の光の粒と調和し、世界12か国語の「平和」の言葉が浮かび上がる。
横須賀に訪れた際には、令和の夜空を照らす、シンボリックな平和モニュメント「THE AXIS OF PEACE」の一筋の光を眺めてみてはいかが。
平和モニュメント「THE AXIS OF PEACE」
住所|神奈川県横須賀市深田台19 平和中央公園内
夜間点灯日時|
上部(上空照射)点灯日:毎月1日、8月6日、8月9日、8月15日、2月15日
※点灯時間は4月~9月は日没から21時、10月~3月は日没から20時(日没:各点灯日の関東日没時間)
下部(文字演出):連日点灯
※点灯時間は4月~9月は日没から21時、10月~3月は日没から20時(日没:各月1日の関東日没時間)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4130/sisetu/fc00000484.html
記録動画|https://www.youtube.com/watch?v=9e1dESs2vqA&t=9s
プラン・監修 | Panoramatiks
デザイン・施工 | 博展
デザイナー : 高橋匠
プロデューサー : 高橋広樹 / 河野俊太郎
施工管理者 : 渡邉芳博
写真:ナカサアンドパートナーズ 荒井章
動画:こじまぽん助