《京都・高山寺で国宝の謎に迫る》
日本茶発祥の地、茶室「遺香庵」で
お茶のルーツを探る
国宝『鳥獣戯画』を所蔵する京都・高山寺では2022年3月31日まで、執事長が境内について案内する特別拝観を実施中。『鳥獣戯画』を目にしていてもその背後にある成立の過程や技法までは知らないという人もきっと多いはず。今回は『鳥獣戯画』を語るために押さえておきたいポイントから、高山寺のめぐり方まで、たっぷりと紹介します。
鳥獣戯画を所蔵することと並んで、日本最古といわれる茶園があることでも知られる高山寺。1931(昭和6)年、明恵上人700年遠忌には茶祖・明恵上人の恩に報いるためにと、茶道家100名余りの篤志により茶室「遺香庵」が建立された。
高山寺の茶の歴史は、建仁寺を開山した臨済宗の開祖・栄西禅師が宋から持ち帰った茶種を明恵上人へ贈ったことにはじまる。これがはじめての日本産の茶であるといわれており、中世以降高山寺でつくられたものは「本茶」と呼ばれ、毎年天皇にも献茶された。茶には修行の妨げになる眠りを覚ます効果があることから、明恵上人自身も珍重し、僧徒に勧め普及に努めたという。やがて、質がよいと評判を呼び多くの寺院に所望されたため、宇治に茶苗を移植。以降宇治茶として発展したと伝わる。現在も本茶を継承した丸利吉田銘茶園を中心に高山寺の茶園を管理しており、毎年5月には茶摘みが行われる。また明恵上人が春日明神を信仰していたことから、春日大社での神事にもこの本茶が奉納される。
そもそも明恵上人と栄西禅師の交流は、座禅修行も重視した上人が禅宗の教えを乞うたことにはじまっており、この高山寺に日本最古の茶園があるゆえんも、明恵上人の熱心な求法の一端だったといえるだろう。今回の特別公開では執事長の話に耳を傾けることで、遺香庵や茶園をよりいっそう楽しむとともに、高山寺のルーツである明恵上人の姿にも思いを馳せたい。
参加者には鳥獣戯画グッズと
御朱印のプレゼント付き!
今回のスペシャルな特別拝観は執事長の境内案内にとどまらない!山の澄んだ空気の中でお抹茶をいただけるほか、特別仕様の御朱印や鳥獣戯画グッズなどのお土産まで付いてくるという太っ腹な内容。詳細はwww.kosanji.com
text: Minami Mizobuchi(arika inc.) photo: Sayuri Ono photo courtesy: kosanji
Discover Japan 2021年10月号「秘密の京都?日本の新定番?」