ART

チームラボのメンバーとしても注目!
建築家・浜田晶則の“デジタル”を潜ませる建築術【中編】

2021.9.17
<small>チームラボのメンバーとしても注目!</small><br>建築家・浜田晶則の“デジタル”を潜ませる建築術【中編】
設計:Aki Hamada Architects 写真:©Kenta Hasegawa

若手建築家としてジャンル横断的な活動を展開し、“アート集団”チームラボのメンバーとしてアート分野の仕事でも注目を集める建築家の浜田晶則さん。中編では、代表作「綾瀬の基板工場」から浜田さんの仕事術に迫ります。

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仕組みからつくることで
使い手の能動性を引き出す

設計:Aki Hamada Architects 写真:©Kenta Hasegawa

建築家としての浜田さんの代表作ともいえるのが、’17年に竣工した「綾瀬の基板工場」だ。クライアントは、ハードウェアのメーカーで、基板工場の増築棟として計画された。当初、機械などを置く工場の作業場として計画されていた1階は、ショールームや地域に開くワークショップや会議が行われるマルチスペースへと設計途中で用途変更された。

浜田さんは、工場の作業場として設計していたが、オフィスとしての空間も担保しながら、間仕切りを移動すれば個室にも広間にもなる、コミュニティスペースとしても使える空間を設計した。

「一見すると、どこにデジタルを使っているのかわかりませんが、僕の中ではとてもデジタル的な思想をもった建築だと考えています。というのも、たとえばウェブの構造は可変で、コードを変えるだけで変更できますが、建築は質量を伴うため、容易に変えることはできません。しかし未来の建築はそうあるべきだと思っていて、この作品はまさにそのような状況を目指した建築プロジェクトでした」

そこで行ったのは、デジタル技術でバーチャルとして事前に建築を行うという手法。一年を通してフレキシブルにオフィスやコミュニティスペースとして使用されることを想定し、あらゆる空間で照度・日射・熱負荷計算をし、ボルト1個や配管1本の位置まで精密に検証した。そうすることで日中は照明が要らない自然光が入る空間や、用途に合わせて可動間仕切りで変化する空間が生まれた。使い手の能動性で空間が変化する「やわらかい」建築ができたのだ。

「建築はクライアントとの信頼関係も重要ですが、経験がものをいう世界。その経験を乗り越えるためにデジタル技術を使いました。現代の技術を使えば、実際に建てたかのように、あらかじめ問題点を細やかに検証し、それを設計段階でクリアすることが可能です。僕にとってはじめての建築プロジェクトでしたが、デジタルで事前に施工することによって経験を乗り越えることができたのです」。

平面構成は、9つの空間に分割するナインスクエアグリッドを考案。グリッドで明快なルールを設定し、誰でも直感で空間を間仕切りできるよう設計した。「日本建築が本来もっている、襖や雨戸のような、軽くて可変的な要素、西洋建築とは異なる環境や人に適応するやわらかさというものを現代の技術で実現しました」

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text: Takashi Kato photo: Hiroyuki Kudoh
Discover Japan 2019年5月号「はじめての空海と曼荼羅」


 

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