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チームラボのメンバーとしても注目!
建築家・浜田晶則の“デジタル”を潜ませる建築術【後編】

2021.9.17
<small>チームラボのメンバーとしても注目!</small><br>建築家・浜田晶則の“デジタル”を潜ませる建築術【後編】
森の中の、呼応するランプの森とスパイラル – ワンストローク, Fire ©チームラボ

若手建築家としてジャンル横断的な活動を展開し、“アート集団”チームラボのメンバーとしてアート分野の仕事でも注目を集める建築家の浜田晶則さん。後編では、御船山楽園ホテルで行ったチームラボのアート展や、NOSIGNER・太刀川英輔さんとタッグを組み改修増築した魚津埋没林博物館から、地域性や建築の持続可能性を支える仕事術をひも解きます。

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デジタルでリアルをつくる

均一な千鳥配置でグリッド状に配置されたランプ、床と天井の高さに対し、人が物理的に通行可能な通路の高さと幅を緻密に設定。独自のアルゴリズムを用いて配置パターンを生成

佐賀県武雄市にある御船山楽園で、2015年にはじまったアート展「チームラボ かみさまがすまう森」。’18年8月、御船山楽園ホテルのリニューアルに伴い、ホテルロビーに新しいアート作品として生まれたのが「呼応するランプの森とスパイラル」だ。

空間を埋め尽くす無数のランプ。そのランプのそばに立つと音とともにふわっと輝き、ふた手に分かれた明かりが、再び起点となったランプで出合う。本作で浜田さんが担当したのは空間設計、ランプシェードのかたちや色のディレクション、配置設計、光の伝搬の仕方などコンセプト全般だった。

「純粋に美しい光で感動を与えたいという思いと、数学的、構造的な意味など、いくつかのレイヤーで考えた作品です。ランプが灯る経路のアルゴリズムを猪子と一緒に考え、それをチームラボの数学者が実装しています。光がたどる経路については、ある条件下ですべての点を通る経路を探索するという数学の定理を応用しています」

ここにも生かされているのが人の体温を感じるデジタルのコーディング技術。照明を吊るしプログラミングするだけでは生み出し得ない、人の美的感覚と好奇心を揺さぶる体験を創出しているのだ。

「感動してもらえる強いコンテンツがあると、どんなに都市から離れた場所でも人が集まるといういい事例だと思います」。

御船山楽園ホテル
住所|佐賀県武雄市武雄町大字武雄4100
Tel|0954-23-3131
料金|1泊2食付1万6200円〜
www.mifuneyama.co.jp

持続可能な空間をつくる

’18年4月にリニューアルオープンした魚津埋没林博物館の改修増築は、浜田さんの地元・魚津市での仕事。地元に縁のあるデザイナー、NOSIGNER・太刀川英輔さんと組んで設計監理を担当した。

「当時は来場者も少なく寂しい印象でした。先ほどのコンテンツの話にも通じるのですが、自然光で明るく、自然素材が多く使われた親しみやすい空間へと変化したこともありますが、カフェで出すフルーツケーキがSNSで人気になり、交通の便が悪いにも関わらず、市外・県外から若い女性がたくさん訪れる場所になりました」

真に必要とされる空間をつくるには、コンテンツと空間を丁寧に設計することが重要だと浜田さん。その両方を一緒に提案し、持続可能な建築を目指すのが彼の手法だ。

「それがないままにハコだけつくってしまうと使い手の愛着も育っていきません。ハードウェアとソフトウェアの両方によさがあれば永く愛されるものができると考えています。いま、自ら事業主となって進めている『インフラフリーの秘境の宿プロジェクト』があるのですが、建築でもソフトとハードを横断しながら考えることで、みんなに愛着をもってもらえる持続可能な建築をつくりたいと考えています」。

魚津港建設の際に発見された、約2000年前の杉の原生林跡を保存展示する博物館。エントランスに隣接した、光がたっぷり入るエントランス棟やカフェを浜田さんが設計。無料エリアも増えて、早くも人気スポットに
設計:NOSIGNER+Aki Hamada Architects 写真:©Noriyuki Ikeda
魚津漁港では、今年4月に完成する一棟貸し宿のプロジェクトも進行中。建築、ブランディング、オペレーション構築などをプロデュース。ハードとソフト面から、モノコトを生み出す試み
設計:Aki Hamada Architects イメージ:©Aki Hamada Architects

魚津埋没林博物館KININAL
住所|富山県魚津市釈迦堂814
Tel|0765-24-4014
営業時間|10:00〜17:00
定休日|木曜
https://kininal.co/

text: Takashi Kato photo: Hiroyuki Kudoh
Discover Japan 2019年5月号「はじめての空海と曼荼羅」


 

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