FOOD

《ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢》
八王子素材×フレンチBBQ【前編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン

2021.8.30
《ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢》<br>八王子素材×フレンチBBQ【前編】<br><small>犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン
1日2組限定 目の前でフレンチBBQ

思いがけないところに、思ってもみなかったいい店がある。日本のレストラン文化はこんなに奥深い!と感激する店を探してきました!今回訪れたのは、東京都・八王子市のフレンチレストラン「ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢」。新鮮な地元の素材にこだわり、生産者とのつながりを大切にする井村貢シェフの、鮮やかな色合いに仕上げるご馳走の数々を前中後編で紹介します。

犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)
東京を中心に世界のレストラン、食文化を取材。最近は日本の地方に注目。郷土料理を守るだけでなく、その土地の生産者とともに新しいレストラン様式に挑戦するシェフを取材。農林水産省表彰制度「料理マスターズ」審査員

シェフ
井村貢(いむら・みつぐ)
1972年、大阪府生まれ。調理師学校卒業。ハウステンボスで上柿元シェフの下、フランス料理の王道を学ぶ。銀座のワインレストランでシェフを務め、プリオコーポレーション入社。各店の技術指導にあたる

足元にこそ何かある?
志を同じくする生産者との出会いが
八王子ガストロノミーの第1歩

2代目、磯沼正徳さんが生まれた1952年に牧場をはじめる。フリーバーン(自由に動き回れる牛舎)採用

今回紹介するのは関東一円でウェディング事業を展開するプリオホールディングスのレストラン。ウェディング会社経営の店なんて、わかりやすい高級素材を使った、見かけだけの料理では?と思われるかもしれないが、ここでは料理に本物を求めてきた。イタリア、フランスの気鋭のシェフと提携したり、スペインの3つ星レストランとコラボして、いち早く「サステイナブルなレストラン」を実践してきた。昨年オープンした多摩南大沢のここでも、地元の素材にこだわり、地道に取り組んでいる。目指すは「八王子ガストロノミー(美食文化)」を実現すること。八王子で何が起こっているのか?興味を惹かれた。

八王子ガストロノミー宣言
レストランから20㎞圏内で探した生産者とのつながり。生産者とレストラン、さらに日常の食にこだわる消費者とのネットワークにも広がる可能性も。八王子ならではの食文化を育てる

案内してくれたのは、オープニングを数多く経験してきた井村貢シェフ。「はじめての土地で最初にやるべきことは、優れた生産者を探すこと。時間をかけて、何度も訪ねて土地に馴染んでいくことが大事です」。とはいえ、そもそもそんな生産者が八王子市周辺にいるのだろうか?「いるんです!野菜だけでなく、牧場まであるんですよ」。

井村シェフが感銘したのが「磯沼ミルクファーム」。「磯沼さんは美味しい牛乳を生産するために餌に野菜やフルーツを混ぜて食べさせる。パイナップルを食べている牛にびっくりしました」。さらに感心したのは牛舎の中の臭いがほとんど気にならないこと。実はコーヒー工場やチョコレート工場から出た豆や殻を牛の寝床に敷き、ふわふわで居心地のよい、清潔な環境で育てているのだ。

そんな牛舎から車で5分ほどの野菜農家「中西ファーム」は、なんと江戸時代から続く農家。現在、6代目のお父さんから7代目の息子さんに代替わり中。「若い世代が集まって元気いっぱい、気持ちがいい。この勢いで八王子の農業を盛り上げてほしいと思います」。

白い殻のさくらこめたまご。茶色の殻のもみじこめたまご

もう一カ所、「由木農場」は卵とブルーベリーやリンゴを生産。「日野市で唯一の卵農家。2種類の卵をここまで買いに来る方がいるのも納得する味わいです」。

今回は行けなかったが、「野口農園」のトマト「りんか」、「東京西洋野菜研究会」野村さんの西洋野菜も同じこだわりを感じた同志だ。井村シェフの話す通り地元に愛されるレストランになるには地元のことを深く知ること。「こんなに素晴らしい食材があるなんて知らなかった!」と地元客に驚かれるという。「まだスタートしたばかりで学ぶことは山積みだけど、教えてもらったことを料理に仕上げるのが楽しくて」。というわけでどの料理にもとびきり新鮮な素材が生かされている。そこで生まれたのがBBQコースだ。井村シェフ考案のコースとはいかなるものか?その内容をご紹介しよう。

 

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磯沼ミルクファーム
現在6種、100頭近くを飼育。エコフィード(食品工場から出た余剰野菜やフルーツ)を餌に混ぜて、ミネラル豊富な飼料を与えている。東京牛乳が人気。牛と触れ合うさまざまな体験イベントや、加工品も販売。オンラインショップで取り寄せ可能。

住所|東京都八王子市小比企町1625
Tel|042-637-6086
営業時間|9:00〜17:00
定休日|年末年始

中西ファーム
江戸時代から続く農家。6代目中西一弘さんは、ハウス栽培で一年を通して出荷する体制をつくり、スーパーや道の駅などに販路を拡大。7代目雅季さんは時代に合わせた年間100種類もの野菜を減農薬で育てている。

住所|東京都八王子市小比企町2706
Tel|046-635-6096
営業時間|9:00〜17:00
定休日|年末年始

由木農場
八王子市に接しているのが日野市。卵農家は日野市でもここだけ。鶏舎は風通しがよく、陽にあふれた環境。その中で国産の素材をブレンドした餌で育った鶏が産んだ卵は気持ちのいい美味しさ。夏はブルーベリー、冬はリンゴなど果物にも力を入れている。

住所|東京都日野市百草1072
Tel|042-591-2961
営業時間|12:00〜16:00
定休日|年末年始

ヴィラ・デ・マリアージュ多摩南大沢
住所|東京都八王子市別所1-119
Tel|042-670-8668
営業時間|モーニング8:30〜10:00(L.O.)、ランチ11:30〜14:30(L.O.)、ティータイム11:30〜16:30(L.O.)、ディナー17:00〜19:30(L.O.)
※時短営業時16:30〜18:00(L.O.)
定休日|月、火 (土、日曜はウェディングがないときのみ営業)
https://villasdesmariages.com/location/tama
※要予約

text:Yumiko Inukai photo: Muneaki Maeda
Discover Japan 2021年9月号「SDGsのヒント実はニッポン再発見でした」

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