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奥深い“白”の世界を追求する
花岡隆さんの「粉引」のうつわ
ただいま、ニッポンのうつわ

2020.12.21
奥深い“白”の世界を追求する<br>花岡隆さんの「粉引」のうつわ<br><small>ただいま、ニッポンのうつわ</small>
根菜たっぷりのラタトウイユは高山なおみさんのレシピ。和風の煮物のように冬に似合い、飽きない味。正月疲れの胃にもやさしく、気の置けない集まりにもいい。赤ワインにチーズと干し柿を添えて

自分の料理や暮らしに合ううつわを求め続けて、高橋みどりが最近気になっているのが、ニッポンのうつわ。背景を知ると、使うのがもっと楽しくなることを伝えたい。今回は修善寺に工房を構える花岡隆さんの粉引のうつわを紹介します。


高橋みどり

スタイリスト。1957年、群馬県生まれ、東京育ち。女子美術大学短期大学部で陶芸を学ぶ。その後テキスタイルを学び、大橋歩事務所、ケータリング活動を経てフリーに。数多くの料理本に携わる。近著に『ありがとう! 料理上手のともだちレシピ』(マガジンハウス)など

花岡隆さん
1952年、北海道生まれ。1973年、陶芸家を志し、多摩美術大学彫刻科を中退、伊賀の番浦史郎氏に師事。1980年、静岡県修善寺に独立開窯。粉引や黒陶などのシンプルで使いやすいうつわを手掛ける。

φ290×H105㎜

二十歳の頃、偶然出合った焼物に魅せられ、「これをやりたいと思った」という花岡隆さん。「若いから、後先を考えずに」と振り返るが、そのまっすぐな心、それまで学んでいたという彫刻は、現在の作風やフォルムに通じているように思える。

花岡さんの代名詞ともいえる粉引の白。しかし陶芸を学んだ当時の環境では、うつわに施す白化粧といえば、絵付けの下地だった。師の番浦史郎さんは、京焼の系譜に連なり、乾山や、乾山を写した北大路魯山人にも比せられる、琳派風の色絵で知られた人。独立後、花岡さんは試行錯誤しつつ白の化粧がけを続けた。もともと好きだった李朝の粉引に骨董店で間近に触れる機会も得、絵付けのない白の、単純で奥深い世界を追求した。

折しも陶芸家のうつわが、料理店や旅館から、家庭で使うものへと多様化し、また家庭料理を教える料理家が活躍の場を広げる時代でもあった。そんな料理家の一人、有元葉子さんの自宅で目にした花岡さんの作品を、高橋さんはよく覚えている。ゆったりした楕円鉢で、20年以上経ついまも有元さんは愛用している。高橋さんも、片口や小皿、豆皿と、花岡さんのうつわを使い続けてきた。この大鉢は、大らかなかたちで行き届いた口づくり。鍛錬の賜物と伸びやかさが共存するのが花岡さんの作。生活空間になじみ、料理が引き立つうつわは、オーソドックスに見えて、誰にもまねできない「花岡さんらしさ」がある。安定感があり、偉ぶらず、どこか楽しげ。だからずっと使いたくなるのだ。

粉引のうつわの豆知識

粉引とは
素地に白い化粧土を施し透明釉をかけて焼く技法で、白く粉を吹いたような外観にちなむ名。李氏朝鮮時代、庶民には禁じられていた白磁への憧れからはじまったとされる。日本に伝わり茶碗などが珍重された。

粉引の特徴と扱い
一般に粉引のうつわは吸水性があり、素地、化粧土、釉薬と収縮度の違う3層からなるため、その間に水分などが入るとしみが残りやすい。使用前に水に浸け、使用後は洗って完全に乾かすことが、汚れを防ぐコツ。

素地の成形と白化粧の表情
面取、しのぎなど、素地の表面の凹凸と化粧土のかかり方による濃淡で、表情が変化する粉引のうつわ。花岡さんは石目の技法も多用し、成形の際に石を押しつけて変形させたり、表面に微妙な凹凸をつけたりする。

text : Akiko Nariai photo : Yuichi Noguchi
2018年1月号 特集「ニッポンの酒 最前線!」


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