3密を避けて26時にZoom飲み(前編)
玉田さんと佐藤さんが毎回ゲストを招待して対談を行う、小誌で連載中の「丸の内発26時」。日本中で自粛の日々が続く中、今回は3密を避けるために、オンラインでミーティングができるアプリ「Zoom」を使って決行。小誌統括編集長の高橋も参加し、石井さん、野呂さん、川添さんの3名をゲストに迎え、それぞれの近況を語り合いました。
〈今回の参加者〉
Sincere オーナーシェフ
石井真介 (いしい・しんすけ)
日仏の有名フレンチレストランで働き、2016年「Sincere」をオープン。’17年水産資源の未来を考えるシェフ集団「Chefs for the Blue」のリードシェフに。’18年度Gault et Millau「明日のグランシェフ賞」受賞
放送作家
野呂エイシロウ(のろ・えいしろう)
ラジオ番組のはがき職人として活躍。出版社を経て『天才たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家に。次々と人気番組を手掛ける。企業のコンサルタントとしても活躍。著書に『成功を決めるのは才能よりも運』など
建築家
川添善行(かわぞえ・よしゆき)
東京大学建築学科卒業後、オランダ留学を経て博士号取得。現在、東京大学准教授として川添研究室を主宰。空間構想一級建築士事務所にて活動中。東京建築賞最優秀賞ほか受賞多数。日蘭建築文化協会会長も務める
丸の内ハウス 統括マネージャー
玉田 泉(たまだ・いずみ)
三菱地所時代は、大手町ビル1階の大手町カフェを担当。その後、丸の内ハウス統括マネージャーに就任。現在は同職を東京・丸の内ハウス事務局で、執行中
テーブルビート 代表取締役
佐藤俊博(さとう・としひろ)
かつてはツバキハウスやGOLDをプロデュース。現在は丸の内ハウスで蒸し料理レストラン「MUS MUS」のほか「来夢来人」、「現バー」を経営する
野呂 玉田さん、いま、どこ?
玉田 三田です、慶應のそば。古いビルにあるディスカバー・ジャパンの秘密のアジト(笑)。
佐藤 野呂さんは、いま、ご自宅ですよね。最近はZoomで会議するのが多いんですか。
野呂 一日に7〜8回ですかね。佐藤さん、玉田さんと会うのは丸の内だから、今日は新鮮ですよ。
玉田 緊急事態宣言の自粛要請を受けて、3密を守ってみんなで飲みながら、Zoomでしようかと。
佐藤 川添さん、それに編集長の高橋さんは、後から参加ですね。
玉田 石井さんが医療従事者の方に、料理を差し入れされているのをテレビで見て感動しました!
石井 新型コロナウイルスと闘う医療現場を食で応援する「Smile Food Project」を日本でスタートさせました。欧米各国で同時多発的にはじまった取り組みです。
玉田 反響はすごかった?
石井 2回ほど行って依頼が殺到しているので、今後は週3回くらいやろうかなと思っています。
玉田 サポートが必要ですよね。
石井 「サイタブリア」の石田聡社長、「Chefs for the Blue」の佐々木ひろこさん、広告会社のNKBなどに支えていただいて。
玉田 食って、人を幸せにできますよね。野呂さん見ました?
野呂 すごいよねえ。みんな大変なんだけど、一番大変なのは医療従事者だから。
石井 そうですね。僕もニュースでフランスやイタリアの状況を見て、何かやらなきゃと思ってはじめたんですけど。農家の人、肉屋さん、豆腐屋さん、たくさんの人から協力のメッセージが届いてます。
玉田 胸が熱くなりますね……。
野呂 寄付もできるんですか。
石井 クラウドファンディングも動いているんですけど、いまは企業の皆さんに協賛金をお願いしていて、個人の人も寄付したいって言っていただける方が多い。窓口をつくっているところです。
玉田 窓口があれば、私を含めて応援したい人、いっぱいいると思いますよ。
石井 僕らはまずボランティアで動いているんですけど、それぞれの店も大変なので、きちんと労力に合うようにして続けていけたらと思っています。
野呂 メディアに携わっている僕らには、きちんと報道するか、寄付することしかできない。
石井 僕らだけでは広げることができないので、そう言ってもらえると助かります。
野呂 全国のラーメン屋さんとかいろんな料理人に広がるかも。
石井 「#立ち上がれ料理人」ってハッシュタグに反応して、福岡の友人も動き出しました。
玉田 こういう機会に個人事業主のネットワークができるといい。
野呂 飲食業って、20兆円くらい市場があるけれど、個人事業主はバラバラだから国にもプレッシャーをかけられない。つながりは大事です。
石井 気をつけないといけないのは、メディアに出ると足元をすくわれることもある。調理してる姿もソーシャルディスタンスを守らないで密集して料理を盛りつけてると、それ自体が非難されたりする可能性もある。衛生管理には細心の注意を払ってます。
佐藤 考えれば考えるほど大変だ。
野呂 弁当の容器にメッセージが書けるといいですね。
石井 絵を描いたり、メッセージを書いたり、徐々にしています。本当は食べてくれた看護師さんの声も聞けたらうれしいですね。
野呂 皆さん忙しいから、メールを送るのは大変だけど、お店の住所が書いてあるはがきをつけるのはどうですか。ひと言書いて病院のポストに入れるだけでいい。
玉田 グッドアイデア!
野呂 次に食べたいものとか、美味しかったとか、ひと言だけでもやりがいがある。
玉田 あっ、川添さんと高橋さんが、ここから参加します。石井シェフはお店に戻られます。ありがとうございました。応援します!
石井 川添さん、高橋さん、あとはお願いします。コロナに負けず、頑張りましょう!
玉田 川添さんはご自宅から。高橋さんはオフィスからです。
川添 僕の研究室は大学にあるんですけど、いま、閉鎖中ですから。Zoomを使って自宅で80人くらいの学生に講義をしている。普段の授業よりも参加しやすいみたい。
高橋 コミュニケーションがちゃんとできるのがいいですよね。
川添 スライドを画面を共有すると、顔は見えにくいですけど。
玉田 もうすでに授業がはじまっているんですか。
川添 先々週くらいから。
玉田 高橋さんは、ディスカバー・ジャパンを4冊無料配信してますよね。
高橋 そう、飛騨高山、瀬戸内、京都、それから一流ホテル。3月から1カ月限定の予定だったんですけど、この状況なので延長です。
玉田 みんなが旅に行きたい気持ちを膨らませているんです。こういうときだからこそ、地方とのつながりを大切にしたい。近い未来は、行かなくてもいいくらいリアルになるのかなあ。
野呂 やっぱり行かなくちゃ楽しくないでしょ。テレビでディズニーランドを見たら、行きたくなるものです。
佐藤 川添さん、何飲んでるの。
川添 近くのスーパーで買ってきたシャルドネです。
高橋 僕、川添さんの髪型が気になるなあ(笑)。坊主がトレードマークだったのに、髪が伸びている。
玉田 Zoom飲み会、よくやってますか。
川添 最近、「Zoom交流会」をしてみたいと思っていまして。ふたつのグループがiPadをそれぞれ用意して、お互いの画面を見ながら話す、8人と8人でどういう会話になるのかという実験。オンラインとオフラインを組み合わせて、向かい合わせた15㎝のiPadの中に緊張関係が生まれる。
野呂 さすが研究者的に楽しんでますねえ。
川添 でも、それぞれが違うものを食べたり、飲んだりしてるけど、一緒に集まることの楽しさが恋しくなりますね。
高橋 一緒に飲んだり食べたりすることのありがたみをつくづく感じます。解除されたら、物すごい開放感を感じるんじゃないかなあ。
野呂 六本木も銀座も丸の内も人があふれる気がする。
高橋 僕はこの前、庭でバーベキューして寝袋で寝てキャンプ気分を味わいました(笑)。
玉田 おうち時間、楽しんでますねぇ。ここ1週間は何をしてましたか。
川添 委員会的な打ち合わせがなくなって、少しラクになった。承認的なことはオンラインでできるからそれはよかった。ここ1週間は、Zoom飲み会も増えてきたから酒量は変わらないですね。
玉田 Zoom飲み会の新しいアイデアありますか。
川添 お酌制度があるといいですね。蛇口のような機能で、好きな人にお酒を注いでもらえる。
野呂 いま、みんな寂しいから、知り合いの女性をZoom飲み会で口説くっていうのはありかな。
玉田 まさに下心ですね。
野呂 不満を聞いてあげるだけでいいから。出掛けられない、買い物に行けない、そんな不満を聞いて、収束したらお寿司食べに行こうよって約束できる。
高橋 川添さんの下心は。
川添 都市っていうのはもうけるチャンスを得るところですよね。人が高密度で集まる。インフラもそれに合わせていたんだけど、それがあんまりうまくいってなかったのがわかったから、公園も道も、新しい都市が求められるチャンスだなあとは思いますね。
野呂 Zoomの打ち合わせが増えて、なんか無駄がなくなっちゃいましたよね。適当なこと言って「はい、すぐ原稿送ります」、「用事があって行けません」とか嘘が減りました(笑)。
川添 言い訳ができない都市はいづらいかもしれない。
野呂 詐欺師がいっぱいの世の中って楽しいでしょ(笑)。
川添 我々は、無駄を求めて、どうしようもないことやってましたからね。そこからの気づきが個性だったわけですよね。無駄をなくすことは、個性をなくすことに近いかもしれない。『Discover Japan』の半分は無駄だから(笑)。
高橋 無駄こそ、人生の原動力ですよ。
野呂 コンビニで美味しい唐揚げを買える時代に、丸の内に行って佐藤さんの武勇伝を聞きながらラードご飯を食べるって相当無駄だけど、それが楽しいんだよね。玉田さんは自粛中どんなですか。
玉田 毎日、炊事に追われてますよ。あとは娘につき合わされて、夜な夜なトレーニングに励んでるんです。腹筋、背筋、 二の腕、コロナ明けにはバニーガールできるスタイルになれるかな(笑)。
男子一同 ええー!
玉田 皆さん、コロナ太りに気をつけましょうね。
≫リモートワークの可能性、嬉野「和多屋別荘」「BESS」「国立公園」
取材=2020年4月16日
text=Kiyoshi Yoshinaga photo=Kazumi Kiuchi
2020年6月号 特集「おうち時間。」