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東京のまち歩きで
思考と心身をととのえる【前編】
|東北大学 山田陽介×都市史学者 岡本哲志

2026.6.29
東京のまち歩きで<br>思考と心身をととのえる【前編】<br><small>|東北大学 山田陽介×都市史学者 岡本哲志</small>

まち歩きのスペシャリスト・岡本哲志先生と、身体活動科学の第一人者である山田陽介教授とともに、東京の日比谷・皇居外苑・丸の内をめぐる。都市空間の発見と健康的な歩行を組み合わせた「思考」と「身体」がととのうまち歩きを実践!

岡本哲志(おかもと さとし)
都市形成史家・博士(工学)。法政大学デザイン工学部建築学科教授を経て、岡本哲志都市建築研究所主宰。2012年度都市住宅学会賞受賞(共同)。長年にわたって国内外の都市と水辺空間、東京の都市形成史の調査・研究に携わる。

山田陽介(やまだ ようすけ)
東北大学医学系研究科運動学分野・医工学研究科スポーツ健康科学分野教授。2009年京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。米国ウィスコンシン大学マディソン校研究員などを経て2024年より現職。第21回日本学術振興会賞受賞。

まち歩きの動きは
健康につながっている!?

今回のルートは、 約1時間30分で歩けます!

皇居の周辺に広がる日比谷・皇居外苑・丸の内エリア。この一帯は、約400年前まで日比谷入江と呼ばれる海で、徳川家康が江戸城を築城する天下普請による埋め立てによって地盤が形成された。まず訪れたのは日比谷公園。有楽門から入ると、荘厳な石垣と心字池が目に飛び込んでくる。この石垣は、江戸城の周辺にめぐらせた内濠、外濠を守る要所・江戸城三十六見附のひとつ「日比谷見附」の遺構だ。

▼MAP ① 江戸時代の石垣がいまも日比谷公園に
1629年、仙台藩初代藩主・伊達政宗が築いた石垣を移築。この石垣があった日比谷御門は、城門の上に櫓をのせた渡櫓門と近世城郭の定番である高麗門を設置。門前には橋を架けず、攻め込んできた敵を濠に落とす「武者落とし」の構造で防御を強化した独特の構造だった

「心字池は、氷河期の川をルーツにもち、江戸時代にその痕跡を生かして掘割がつくられました。日本初の洋風近代公園をつくる際に、この石垣と心字池の水面を残したことは、江戸の記憶を伝える意味で非常に大きいです」と岡本さん。

日比谷御門の防御に徹した「武者落とし」の構造や深緑の反射が美しい雲形池、江戸時代の石材が残る門柱など、逸話に耳を傾けながらあちこちに視線を向けていると、山田さんがこう教えてくれた。

(右)▼ MAP ②
四季で表情を変える雲形池は、都市公園の噴水として国内で3番目に古い鶴の噴水がみずみずしい水景をつくる

(左)▼MAP ③
江戸時代の石垣を再利用した日比谷公園出入口門柱が歴史の継承を物語る

「これ、実は歩行学的にすごくよい行動です。無意識に歩いていると脳がオートマチックに動作を処理するので、エネルギーをあまり消費しません。反面、景色を見るためにきょろきょろしたり、身体をねじって振り返ったり、同じ距離でもゆっくり歩くなど、イレギュラーな行為をすると知らないうちにエネルギーを消費している。“有効な無駄使い”なのです」

まちと対話し、まちの歴史を歩く

▼MAP ④ 名所絵図の秘密は、由緒にあり?
霞が関は地盤が堅固であったことから明治時代に中央官庁街がつくられた。「霞が関坂は中世に関所があった由緒から、歌川広重などの浮世絵に描かれた一方、並行する汐見坂は伝承がなかったので描かれませんでした」

江戸普請の埋め立て後、日比谷界隈には大名屋敷が広がっていた。岡本さんが注目するのは、日比谷公園西側から霞が関へと抜けるゆるやかな登り坂、霞が関坂だ。

「当時、坂の両側に信頼できる外様大名の黒田家と池田家、現在の国会議事堂周辺の最奥には譜代大名の井伊家を配置しました。その高低差を生かし防衛設計を二重構造にした意図が如実にわかります」

国立文化財機構所蔵

そこから旧司法省へ歩みを進めると、目線の先には「桜田門外の変」の舞台となった外桜田御門が見渡せる。ここに立ち、当時に思いを馳せていると、その情景がありありと脳裏に浮かんでくる。

▼MAP ⑤ “霞が関の女王”と称される国の重要文化財
旧司法省。官庁集中計画を手掛けたドイツ人建築家、ヘルマン・エンデとヴィルヘルム・ベックマンが基本設計を行い、河合浩蔵が実施設計を担当した。左右対称の重厚なファサードとドーム屋根の塔屋、列柱ポーチが特徴

旧司法省は、明治の官庁集中計画で建てられたドイツ・ネオバロック様式の重厚な赤れんが建築。そして隣接する法曹会館は、司法界の社交の場として建てられ、戦災を逃れたことで現在も昭和のエレガントな建築美を伝えている。

「美的感覚に連続性があり、当時の姿でまちに残っていることは非常に価値が高い」と、法曹会館の瀟洒な深紅のらせん階段を上りながら岡本さんが話す。

▼MAP ⑥ 藤村朗建築の尖塔と
華美ならせん階段の建築美

八重洲ビルなどを手掛けた藤村朗が設計し、1937年竣工。第二次世界大戦の戦禍を免れ、日本の司法の独立を守るためにGHQの接収からも守り抜いたと伝わる。現在も司法界の交流の場として親しまれている

「たとえば駅の階段を上るときに余裕があれば、少し遅く、もしくは速く上ると健康効果が高い。身体の機能を高めるためには、普段の自分のペースを崩し、効率を考えない行動が大事なのです」と山田さんが続ける。

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【後編】
心身にうれしい名建築探訪をご紹介!

 
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日比谷公園
住所|東京都千代田区日比谷公園1-6

霞が関坂
住所|東京都千代田区霞が関2-2

法務省旧本館
住所|東京都千代田区霞が関1-1-1

法曹会館
住所|東京都千代田区霞が関1-1-1
Tel|03-3581-2146
館内見学|平日10:00~18:00
https://hosokaikan.com

東京のまち歩きで
思考と心身をととのえる

01|日比谷・皇居外苑・丸の内をめぐる
02|心身にうれしい名建築探訪

text: Ryosuke Fujitani photo: Kenji Okazaki
2026年6月号「ウェルネス入門」

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