FOOD

兵庫県・神戸市《open air》
誰もが楽しめる“クラフトビール”の
入り口となる一杯に出合う

2025.9.9

兵庫県・神戸市《open air》<br>誰もが楽しめる“クラフトビール”の<br>入り口となる一杯に出合う

廃校を再生した神戸の複合施設「NATURE STUDIO」から誕生したブルワリー《open air》。多様な交流を育む、誰にでも“開かれた”クラフトビールとは？

open air（オープンエア）
新しいスタイルのビールを生み出すオープンイノベーションの文化を神戸から発信。ヘッドブルワーのベン・エムリックさんをはじめ、国際色豊かなメンバーで構成されている。

オープンな空間でビール造り

廃校となった神戸市立湊山小学校の跡地を活用して生まれたコミュニティ型複合施設「NATURE STUDIO」。立ち上げに携わっていた工務店経営者の村上豪英たけひでさんは「排水設備の整った給食室を改装すれば、ビール醸造ができるかも」とひらめいた。これが「open air」のはじまりである。

繁忙期でなければ見学も可能。老若男女が行き交う場所とありオルタナティブな未来に向けた取り組みも多い。ビールが飲めない人も楽しめる場を意識している

建築の仕事において村上さんが関心を寄せていたのは建物ではなく、いかに建物を活用するのかといったソフト面。ブルワリーの立ち上げ前から村上さんの人となりを知るセールスプロモーションの齊藤夏美さんは「村上は工務店の経営と並行して、神戸でさまざまな社会実験に取り組んできました。その代表例のひとつが、閑散としていた都市公園で開催したアウトドアライブラリー。彼はその中で、オープンエアな空間では老若男女を問わず自然発生的にコミュニケーションが生まれることに気づいたんです」と教えてくれた。

カフェなら主婦、酒場なら会社員と、屋内は同じ属性の人たちで盛り上がる傾向にあるが、屋外の場合は見知らぬ人とも会話が弾む。「そんな空間にビールがあると、もっと心地よくなる。そんな思いから出発し、それがブランドイメージやビジョンに結実しています」と、ビールもまた建築同様に場の体験から生まれたもの。そんな村上さんの姿勢に賛同し、いつか一緒に働きたいと考えていた仲間がオープンエアに集まった。齊藤さんもその一人であり、迷わず参加を決めたという。

目指すのは誰にでも“開かれた”ビール。ハイアルコールがトレンドのクラフトビールにおいて、オープンエアではアルコール度数５～６・５％が主流。間口が広く「毎週１～２種類の新作を出し続けているので、好みのビールと出合いやすいんです」とリリース頻度も高い。夏という季節ひとつを切り取っても、爽やかな初夏から残暑の余韻までの移ろう時間をビールで表現。その味わいをヘッドブルワーのベン・エムリックさんがラベルに描き出し、村上さんが詩を添えている。

時には予想だにしない風味が完成し、味とデザインが噛み合わないこともあるそうだが、それもまたクラフトビールの醍醐味。ビールは大人の嗜好品だが、子どもや飲めない人が醸造風景や雰囲気を楽しむだけでもいい。そんなビールを通して広がる多様性を、オープンエアは未来に思い描く。