知っておきたい
「林業の歴史」
林業の営みの痕跡は各地に残され、「林業遺産」として選定されている。この林業遺産をひも解けば、日本人と森林との関係性が見えてくるだろう。今回は、人間と森林の営みを研究する「林政学」を専門とする東京大学大学院准教授・柴崎茂光さんに、林業の歴史について話をうかがった。
東京大学 大学院 農学生命科学研究科 准教授
監修=柴崎茂光(しばさき しげみつ)
専門は林政学。2021年から現職。山地や林地でのフィールドワークを核に、森林環境の保全と山村や離島地域の持続可能な発展の両立可能性について研究している。著書に『林業遺産へ行こう』(文一総合出版)など。
〈〜江戸時代〉
採る林業から育てる林業へ

『木曽式伐木運材図会』(部分)/林野庁中部森林管理局蔵
原生林を伐採する林業が主流だったが、人口増加や都市の誕生によって木材の需要が急激に増え、過度な伐採が進行。16世紀半ば頃には全国に「尽き山」が続出する。この状況を改善するために、17世紀半ば頃から植林や手入れを伴う「育成型」の林業が生まれた。
〈明治時代~第二次世界大戦〉
国内需要が高まり“儲かる産業”に

『國有林 下巻』(1836年)
明治時代には、国の産業の基盤として官林育成が進められた。その後、第一次世界大戦の好景気や関東大震災後の住宅再建などで木材の需要が高まり、価格も高騰。“儲かる産業”となる。ただし海外への戦線拡大の中で、軍による主に燃料としての需要も急増し、過剰伐採が進んだ。
〈終戦~〉
木材輸入自由化と国内産業の衰退

戦後は荒廃した土地の回復と、国土緑化運動が進められる。経済成長の中での木材需要の高まりと価格高騰を受け、1961年から木材の輸入を自由化。これにより日本の森林の経済的価値は急落した。木材自給率は一時期よりは増加したものの、現在も4割程度にとどまっている。
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text: Discover Japan
2025年9月号「木と生きる2025」































