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日本の海を支える“海藻”の現状とは…?

2025.7.4
日本の海を支える“海藻”の現状とは…?

海の生態系が変化し、危機にさらされている海藻。そんな海藻の種類や役割、現状について、海藻のベンチャー企業、シーベジタブル共同代表・友廣裕一さんに教えてもらった。

シーベジタブル共同代表
友廣裕一(ともひろ ゆういち)
大学卒業後、農山漁村をめぐり、2016年にシーベジタブルを設立。地下海水を用いた青のりの陸上栽培を世界初実現するなど、新たな海藻食文化の創造と生態系回復を目指す。

海藻の種類、いくつ言えますか?

日本の海域に生育している約1500種類の海藻は、すべて毒をもたず食用になり得るといわれている。シーベジタブルは、新しい食体験をもたらす未知の海藻の魅力や食べ方を日々、研究開発している。
「すじ青のり あつばアオサ はばのり 若ひじき とさかのり みりん ねばりもずく スーナ……」

海の中での海藻・藻場の役割

生物多様性の維持
海藻の表面には小型生物が生息し、餌となるだけでなく、産卵場や幼仔の生育場を提供するなど、藻場は多様な生物種の保全の要となっている。

炭素の固定
海藻は光合成によって水中の二酸化炭素を吸収し、炭素を固定。海藻が死んだ後もその炭素は海底にとどまるので地球温暖化抑制に貢献。

水質の変化
海藻は濁りを防ぐ効果もあり、豊富な海は透明度が高い。また窒素やリンの吸収による富栄養化を防止するなど水質の浄化につながっている。

生態系ピラミッドを支える藻場

藻場は沿岸生態系の基盤として重要な役割を果たす。たとえば海藻の表面にはケイ藻やヨコエビなどが豊富に生息し、小魚や甲殻類の餌となり食物連鎖を支える。さらに、スズキやイカが産卵場所として利用し、隠れ場所として稚魚の成育を助ける。生態系ピラミッドの土台として藻場があることで、小魚から大型魚まで多様な生物を育み、生物多様性の維持につながっている。

海藻の現状を知っていますか?

出典:環境省「藻場(海草・海藻)のインベントリ報告について」より一部抜粋及び編集 ※藻場面積は海藻と海草にて構成されたデータを使用

“海藻の生産も、天然の藻場も減少中”
天然の藻場は、27年間で約16万ha減少した。1年で換算すると東京ドーム約1200個分の面積が減少する深刻な状況に陥っている。

参考:シーベジタブル

高知県四万十川など全国の産地で、1980年には乾燥重量で年間約60t水揚げされていたすじ青のりは、2020年より4年連続漁獲量がゼロの不漁に。

日本全国の藻場でアイゴやイスズミ、ウニなどの食害による「磯焼け」が起こっている。磯焼けが発生すると食害を防ぐための対策が難しく、海藻の資源量が減少すると沿岸漁業にも大きな影響を及ぼす。

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【前編】
《シーベジタブル》が目指す、
海藻の未来とは?

 
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進化を続ける海藻文化
01|日本の海を支える“海藻”の現状とは…?
02|次代を切り開くポテンシャルを秘める海藻【前編】
03|新たな海藻の食体験【後編】


2025年6月号「人生100年時代、食を考える。」

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