渋谷パルコ《包丁展》
“切れ味”の違いに出合い、包丁の魅力を再発見
淺野鍛冶屋/三寿ゞ刃物製作所/志津刃物製作所

手にしっくりと馴染む包丁は、料理の時間を豊かにする相棒。渋谷パルコ・Discover Japan Lab.では、2025年4月3日(木)~4月13日(日)にかけて、企画展《包丁展》を開催。プロフェッショナルも納得の鋭い切れ味ながら、初心者の最初の一本にも最適な包丁に出会うことができる。
《淺野鍛冶屋》
手作業が生み出す美しさが生活を豊かにする

25代・藤原兼房刀匠に入門した刀匠・房太郎こと淺野太郎さんが設立。海外やYouTubeで刀鍛冶の魅力を広めるなど、ワールドワイドな活動を展開する
「鍛冶にまつわる仕事は、すべてエンターテインメント」。そんな理念を掲げる刀匠の房太郎さんは、世界各地を奔走して刀鍛冶の魅力を広めてきた鍛冶集団の長。鋼を自在に扱う職人が研ぎ澄ました包丁は、切れ味鋭い日本刀の技術から生まれたとあり、食材を切ったことに気づかないほどスッと刃が下りる代物。さらには一般的な包丁よりも1枚多く鋼材を張り合わせることで、経年による反りも防いでいる。
プロユースな一本と思われるかもしれないが「思い入れのある道具を手にすると、それにより身の回りが整えられたり、時間の使い方が変わったりと、生活が少しずつ変化していきます。食べる人のことを考えながら料理をする時間は、とても優しくて温かいもの。料理をする時間が取れない方にとってのきっかけになればうれしいです」と房太郎さん。趣味は道具から入るといった人にこそ、切る喜びを味わってほしい。
筆先(6寸)

白鋼を両側からステンレスで挟み込んだ柳刃包丁。鎬筋がきれいに出てこその包丁とあり、見た目の美しさには特に心血を注いでいる。
《三寿ゞ刃物製作所》
本来の切れ味と実用性を併せもつ、小型包丁の世界

鍛冶の街・兵庫県三木市において、水研ぎから手作業で仕上げる包丁メーカー。大工や園芸向けといった多彩な道具を生む三木とあり、産地間協業を生かしたキッチン用品も考案中
いまでは一般的となったステンレス製の包丁だが、その元祖といえば1946年に日本ではじめて「ステンレス割込包丁」を製造した「三寿ゞ刃物製作所」。芯材である鋼をステンレスで両側から挟み込んだ万能包丁は三寿ゞ刃物の代表作であり、いまなおつくり続けられている逸品。自身も自社包丁のファンだという3代目の宮脇大和さんは「近年は小回りの利く小包丁の世界が注目を浴びています。大きい包丁を使わなくてもいいときや、台所がコンパクトな一人暮らしの場合は、小さめの包丁のほうが便利。刃の幅が狭いので、薄切り野菜もくっつきにくいですからね」と近年の動向を教えてくれた。
小さくとも鋼の高度を上げた上で鋭角にしっかり研ぐといった三寿ゞ刃物が誇るものづくりは健在。軽いながらも肉の筋切りも野菜のくり抜きも思いのままとあり、セカンド包丁としてはもちろん、初心者の一本目にも最適である。
三寿ゞ庖丁(小)

初代から変わらない素材でつくり続ける三寿ゞ刃物のスタンダードモデル。手に馴染むほどに愛着のわく逸品。
アジ切包丁

ステンレス鋼を使用した手のひらサイズの小型万能包丁。鯵などの小魚をさばく、下ろすなどの細かい作業も疲れにくい。
御料理はじめ

子どものはじめての包丁にふさわしい、正しい切り方が覚えられる一本。大人用と変わらない切れ味を保ちつつも安全性を兼ね備えている。
《志津刃物製作所》
機能性×デザイン性で、“切る”がもっと身近になる

1959年、岐阜県関市で創業。磨き職人であった初代が「刀匠が生み出すような名品がつくりたい」との思いから、鎌倉時代に活躍した刀匠「志津三郎」にあやかって命名した
長らくOEMメーカーとして刃物を製造してきた「志津刃物製作所」。2010年頃から自社製品を手掛けるようになるが、100社を超える刃物メーカーがひしめく関市とあり、自社ブランドが市場に入り込む余地はなし。そこで志津刃物では販売先をセレクトショップに絞り、インテリアに馴染む家庭用包丁をリリース。雰囲気あるデザイン包丁を展開してきた。

「刃物は危ないもの、遠ざけたいものというイメージが強いですが、人類最古の道具である刃物は、本来は身近な道具のはず。思わず手に触れたくなるような道具づくりを目指しています」と話すように、「TONSTONシリーズ」は切れ味だけでなく、包丁の置き場所から考案されたもの。菜箸や木べらのような調理道具とともにキッチンの上に置いておくことで、切るという動作を気軽なものに。普段の暮らしの中でトンと切れてストンとしまえる包丁は、現代のコンパクトなキッチンに似合うちょうどいいサイズだ。
TONSTON KNIFE

刃先に丸みをもたせ、親しみやすい意匠ながら切れ味は抜群。無垢の木を丁寧に磨き上げた持ち手は、なめらかで触り心地がいい。
TONSTON POT

調理道具と一緒に収納できるポットで、仕切り板には軽い力で包丁が取り出せるマグネットを内蔵。天然木で、まな板としても使える。
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《包丁展》作品がオンラインで買える!
公式オンラインショップ
包丁展 淺野鍛冶屋・三寿ゞ刃物製作所・志津刃物製作所
会期|4月3日(木)~4月13日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・質量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Natsu Arai photo: Shiho Akiyama
2025年5月号「世界を魅了するニッポンの香り」