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《美味しい魚図鑑》 Vol.5 ヒラメ
目が上に付いているのはなぜ?

2022.3.1
<small>《美味しい魚図鑑》 Vol.5 ヒラメ</small><br>目が上に付いているのはなぜ?
photo by shosa

スーパーに並ぶあの魚、この魚。どんな海に生息し、どこで捕れるものが美味しいのか。本当の旬はいつで、どんな料理が合うのか。魚を知り尽くす小川貢一さん監修のもと、日本人なら知っておきたい魚の基本を詰め込みました。

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小川貢一(おがわ・こういち)さん
956年、東京・築地生まれ。仲卸3代目として築地で育つ。魚を知り尽くし、かつて築地で魚料理店の店主を務めた料理人でもある。著書に『本当に美味しい魚の見極め方』など多数

砂地にいる底魚。脂がのる冬が旬

北海道から九州までの広範囲にわたり、水深3〜20mの砂泥地に生息するヒラメ。大きいものは100㎝前後まで成長する。最近は天然ものが減り、養殖ものや、中国などからの輸入ものが一年を通して多く流通している。

近海の天然ものは活魚で流通する高級品で、割烹料理店や寿司店で好んで使われる。砂地の底でじっとしている魚ゆえ、海域を超える移動はしない。そのため美味しい時期は地域により異なるが、一般的には冬場が旬。「寒ビラメ」と呼ばれ、脂がのって身が締まり、濃厚な旨みをまとう。それを過ぎると春から初夏の産卵に向けて身が痩せてくる。

見た目に反し、透き通った身はほかにはない美しさ。淡泊で繊細ながら、旨み成分であるイノシン酸が豊富なためコクがあり、さまざまな料理で楽しめる。

<鮃の基礎知識>

●科
ヒラメ科

●旬
10〜2月

●名前の由来
平たい身体に目がふたつ並んでいるため「平目」。漢字一文字ではつくりは「平」となった

●魚種
ヒラメ

●地域名、幼名
関東では幼魚を「ソゲ」、体長50〜60㎝のものを「大ソゲ」、それ以上を「ヒラメ」と呼んでいる

●選び方のポイント
全体的に張りがあり、身が厚く、表面が乾いていないもの。腹が青いものは鮮度が落ちているので注意

●主な生息地
東北や長崎、山口など

●県別漁獲量ランキング
北海道:1000t
青森:800t
宮城:700t
福島:500t
長崎:300t
千葉:300t

Q:なぜ目が上にふたつ寄っている?
A:目が上に付いているほうが海底暮らしに便利だから

海底の砂地や岩にぴったりと横たわって獲物をそっと待ち、小魚や甲殻類、イカなどが寄ってくると突然飛び出して捕食する。そのため、目は上に付いていたほうが都合がいい。ちなみに、表面はカモフラージュのため海底の模様に合わせた体色に変化し、裏面はきれいな白色をしている。

Q:ヒラメのエンガワってどこのこと?
A:背びれや腹びれの付け根の部分

ヒラメは泳ぐときにヒレをたくさん使うため、ひれを動かす骨の周りに付いている筋肉が発達している。エンガワはこの筋肉のことで、わずか5%しか取れない稀少な部位だ。筋肉質で独特の弾力、上品な甘さを秘めており、刺身にするととても美味しい。

Q:ヒラメの美味しい食べ方は?
A:薄造りや昆布締め、フライやムニエルにしても

刺身なら、鮮度がよく歯応えがしっかりしたものはそぎ切りの薄造りに、ひと晩寝かせて旨みがのったものはやや厚めに切るといい。和食ではほかに、昆布締めや蒸し物にも使われる。洋食ならソテーやムニエル、フライがおすめ。加熱すると身がふわっとして、刺身とは異なる美味しさを楽しめる。

<column>
フレンチでお馴染みのシタビラメ

牛の舌に似ていることからシタビラメ。ヒラメと名がつくものの、ヒラメとは別の種で、旬は春から秋。フランス料理ではシタビラメのムニエルがお馴染みで、しっとりとした繊細な身を、レモンバターソースや焦がしバターソースなどで味わう。魚の出汁(フュメ・ド・ポワソン)の重要な素材でもある。

<trivia>
子ども時代は目が両サイドに!

生まれて間もないヒラメは、身体の両サイドに目が付いていて、海中を浮遊。生後20日を過ぎると右目が左側に片寄りはじめ、海底に下りて砂地で暮らすようになると左側(海底に横たわった上側)に移動する。
 

ヒラメとの見分け方は?

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Vol.8|アジ
Vol.9|イワシ
Vol.10|イカ

text: Yukie Masumoto 写真提供=国立研究開発法人水産研究・教育機構、
フーズリンク、農林水産省「うちの郷土料理」、小枝圭太(東京大学総合研究博物館)、
標津サーモン科学館、PIXTA
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」

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