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島根県松江市 三英堂の「菜種の里」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2024.2.13
島根県松江市 三英堂の「菜種の里」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は島根県松江市にある和菓子の老舗・三英堂の「菜種の里」を紹介。大名茶人として名高い松江藩七代藩主・松平不昧公が詠んだ歌に着想を得た、やわらかな黄色が目に美しい逸品です。

福田里香(ふくだ りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。13年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

板状の菜種の里を箱から取り出したところ

島根県には民藝好きなら一度は訪れたい「出雲民藝館」があります。出雲地方きっての豪農「山本家」の寄付により1974(昭和49)年に開館。歴史的価値が高い山本家の邸宅の一部を改修し展示館としていて、大変見応えがあります。
 
島根で民藝探訪をするなら、松江市の老舗「三英堂」も外せません。本店には甘味好きとして知られた河井寬次郎が命名した竿もの菓子「日の出前」があります。それから春先におすすめなのは、松江藩七代藩主で大名茶人として歴史に名を残す松平不昧公が御好みとされた「菜種の里」です。不昧公引歌「寿々菜さく 野辺の朝風そよ吹けは とひかう蝶の 袖そかすそふ」から着想を得たお茶席菓子で、クチナシで染めた黄色い落雁で一面の菜の花を表現し、白い煎り米で春の菜畑の上を蝶が飛び交うさまを描いています。春を抽象的に切り取った銘菓です。職人が手作業でふるいにかけ、型で押し固める製法に手仕事の美を感じます。口に入れるとほろりと砕ける一品でお抹茶や玉露にぴったりです。

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松平家の家紋を配した掛け紙。1枚入972円

三英堂 寺町本店
住所|島根県松江市寺町47
Tel|0852-31-0122
営業時間|8:30〜17:30
定休日|不定休

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
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