佐賀県唐津市 お菓子の蔵 鶴丸
「唐津焼陶片せんべい」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2023.10.27
佐賀県唐津市 お菓子の蔵 鶴丸<br>「唐津焼陶片せんべい」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は佐賀県唐津市に店を構えるお菓子の蔵 鶴丸の「唐津焼陶片せんべい」を紹介します。職人の手描きによる柄の美しさは必見です。

福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。13年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

「唐津焼陶片せんべい」9枚入り3100円

「日本民藝協会の機関誌『民藝739号』(2014(平成26)年刊)「唐津と武雄の焼物」特集には、柳宗悦の随筆「絵唐津の公案」が再録されています。また日本民藝館の所蔵品「絵唐津芦文壺」(17世紀)は、重要文化財指定の逸品です。柳宗悦の名著『手仕事の日本』(1948(昭和23)年刊)では、唐津焼のルーツに触れるなど、民藝と唐津焼は関係が深いのでした。
 
約500年の歴史があるといわれる唐津焼ですが、明治維新の際に藩の庇護を失い、多くの窯元が廃業したという。しかし、後に人間国宝となった12代中里太郎右衛門(1895〜1985年)は、古唐津の再現や伝統技法「叩き作り」を復活させるなど、唐津焼を再興しました。子孫の14代中里太郎右衛門が監修した銘菓が「お菓子の蔵 鶴丸」の「唐津焼陶片せんべい」です。陶片を模した卵煎餅に「絵唐津」の特徴である、灰釉に鉄砂による絵付けを砂糖衣で表現しています。草花や樹木、動物など古典柄を描いた瀟洒な絵柄はサクサクで美味しい。しみじみかわいい和のアイシングクッキーです。

読了ライン

父・中里隆(12代中里太郎右衛門の五男)とともに作陶する「隆太窯」の中里太亀(たき)作の絵唐津の皿

お菓子の蔵 鶴丸
住所|佐賀県唐津市二タ子2-2-53
Tel|0955-72-3695
営業時間|9:00〜17:00
定休日|土・日曜
www.tsurumarusenbei.jp

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」

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