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幕末でめぐる京都・再発見の旅

2020.11.5
幕末でめぐる京都・再発見の旅

NHK大河ドラマでも注目を浴びた幕末維新。多くの志士たちが駆け抜けた痕跡をたどりながら動乱の京へと心を馳せる旅を、幕末維新史の達人に案内してもらいましょう。
 

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多数の大火や戦火を乗り越えてきた京都には、幕末維新時の建物が残っていて、見どころがたくさんあります。ほかの土地に比べても佐幕・倒幕の両派が活躍した地であるため、ニュートラルに史実に触れることができるのも魅力です。歴史はどちらか一方からだけ見ると、どうしてもゆがみが生まれてしまいますから」と、木村さん。勝者や敗者に関係なく、龍馬であろうと新選組であろうと、誰のファンであってもおもしろさを堪能できる——これぞ、京都の懐の深さではないか。

まずは、木村さんの職場である「霊山歴史館」へ。うろ覚えになっている記憶を正すため歴史を復習してから、まちへ繰り出そう。そこで、我が国の行く末を憂い、異国に負けない新しい日本をつくろうとした幕末を生きた人々の、熱い想いとまっすぐな生きざまを追いかけてみてはいかがだろうか。そのためにも、歴史館の背後にある霊山墳墓には必ず立ち寄るべし。彼らの志と向き合ういい機会になるはずだ。

とかく、市内には数多の幕末ゆかりの地がある。たとえば、花街・島原。島原は大阪の新町・江戸の吉原と並んで、日本三大花街として公家や武家など身分の高い者たちの遊興の場であった。単に歌舞音曲の遊宴のみならず、和歌や俳句などを詠む文化サロンとしての役割も果たしていた。新選組が屯所を構えた壬生や西本願寺からも徒歩圏内で、多くの隊士が通ったといわれ、山南敬助や土方歳三のなじみの女性たちがいたことでも知られる。彼らと京女たちとのロマンスもまた、トリップポイント。妄想が膨らむこと限りなし。現在では、揚屋(料亭)だった「角屋」と置屋だった「輪違屋」、島原入り口に残る「大門」の3カ所に往時の佇まいを感じることができる。

そこから南へ下れば、酒処としてその名を轟かせている伏見がある。伏見は、京都と大阪を結ぶ中継地であり、京都の南玄関口として栄えた川港町。水上交通から陸上交通へと切り替わる街道の要衝として繁栄を極め、寺田屋騒動に加えて、龍馬襲撃事件、鳥羽・伏見の戦いといった大きな事件が起こった地で幕末好きなら見逃せない。龍馬や薩摩藩士が定宿とした「寺田屋」は、いまも旅館として現役だ。「薩摩藩伏見藩邸跡」や薩摩寺とも呼ばれる「大黒寺」、鳥羽・伏見の戦いで薩摩藩が陣を敷いた「御香宮神社」といった史跡も、必見だ。

偏った見方から抜け出し、歴史を俯瞰で見る快感。一度味わうと癖になること間違いなし!

激動の幕末史をおさらい!
幕末維新ミュージアム「霊山歴史館」

幕末維新の総合歴史博物館。5000点を超える収蔵資料を誇り、常設展・特別展では約100点を展示。再現模型や撮影、クイズのコーナーなどがあり、幕末維新史について楽しく学べるアミューズメント的空間。

龍馬を斬った刀
京都見廻組の桂早之助が、近江屋で龍馬を斬った脇差だといわれている。血さび、歯こぼれは当時のまま。凶刃に倒れたとき龍馬は齢33歳だった。

幕末維新ミュージアム「霊山歴史館」
住所|京都市東山区清閑寺霊山町1
時間|9:00〜17:30
※受付は閉館30分前
休館日|毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)※展覧会の切り替え時には展示替え休館日がございます。
料金|一般900円、高校生500円、中小生300円
Tel|075-531-3773
https://www.ryozen-museum.or.jp/

坂本龍馬・中岡慎太郎ら
幕末の志士が眠る
「京都霊山護國神社」

特に人気が高い龍馬と慎太郎の墓。二人の銅像も建ち、熱心なファンの墓参が絶えない

日本初の官祭招魂社として建立。背後に広がる霊山は、明治維新史跡公園として整備され、木戸孝允や久坂玄瑞など386基の墓碑が並び、1356柱が幕末維新の志士として合祀されている。

京都霊山護國神社
住所|京都市東山区清閑寺霊山町1
時間|8:00〜17:00(入山受付は9:00〜)
料金|一般300円、中小生200円
Tel|075-561-7124
http://www.gokoku.or.jp/

禁門の変の激戦地
「蛤御門」

所蔵:環境省京都御苑管理事務所

もとは「新在家御門」という名で常に閉門していたが、天明の大火で開門した様をハマグリにたとえて「蛤御門」と呼ばれるようになった。長州が惨敗した「禁門の変」の激戦地となり、弾傷らしき跡が残る。

京都御苑(蛤御門)
住所|京都市上京区京都御苑
開館日|終日開苑・入苑自由
https://fng.or.jp/kyoto/

新選組結成の地
「八木邸」

郷士・八木源之丞の屋敷が、江戸からやってきた浪士組の宿舎となり、後に新選組の屯所となる。現在、八木家15代目が和菓子店を営み、その屋敷を一般公開している。近くには軍事演習が行われた壬生(みぶ)寺もある。

新選組壬生屯所跡(八木邸)
住所|京都市中京区壬生梛ノ宮町24
時間|9:00〜17:00(〜ガイド受付16:30)
料金|大人・中高生1100円、小人800円(ガイド、抹茶、屯所餅付き)、中高生600円、小人300円(見学のみの場合)
問|京都鶴屋鶴寿庵
Tel|075-841-0751

「旧前川邸」

八木邸の東向かいにある郷士・前川荘司の旧邸。こちらも新選組の屯所となり、「池田屋事件」の発端となる古高俊太郎の取り調べが行われた。山南敬助の切腹の場でもある。

新選組壬生屯所跡(旧前川邸)
※通常非公開。土・日曜、祝日のみ土間でグッズ販売
住所|京都市中京区壬生賀陽御所町49
時間|10:00〜17:00
https://kyu-maekawatei.com/

志士や新選組をした揚屋
「角屋」

入り口に建つ石碑「久坂玄瑞密議の角屋」からもわかるように、勤王・佐幕を問わず、多くの志士が利用した揚屋。屯所から近いこともあり新選組の隊士たちも訪れ、彼らがつけた刀傷も残る。芹沢鴨暗殺の夜に宴会が行われた「松の間」の眼前には、新選組の隊士たちも愛でたであろう立派な臥龍松も。

角屋もてなしの文化美術館
住所|京都市下京区西新屋敷揚屋町32
開館時間|午前10時~午後4時
開館期間|3月15日~7月18日、9月15日~12月15日
休館期間|7月19日~9月14日、12月16日~3月14日
休館日|月曜日(祝日の場合翌日)
入館料|一般1000円、中・高生800円、小学生500円(2階の特別公開料金を除く)
Tel|075-351-0024
http://sumiyaho.sakura.ne.jp/

龍馬御用達の旅籠
「寺田屋」

「寺田屋騒動」の舞台となった船宿。当時の面影をいまにとどめる。鳥羽伏見の戦いで焼失したため現在の建物は明治時代に再建したともいわれる。

寺田屋
住所|京都市伏見区南浜町263
時間|10:00〜15:40
休館日|月曜不定休、年末年始
料金|一般400円、大高中生300円、小学生200円
Tel|075-622-0243

鳥羽・伏見の戦い
薩摩軍の軍事拠点
「御香宮神社」

病に効くよい香りの水が湧き出たことから清和天皇よりその名を賜り、「ごこんさん」の愛称で親しまれる。薩摩軍(新政府軍)が屯所を構え、新選組がいた伏見奉行所と激戦が繰り広げられた。

御香宮神社
住所|京都市伏見区御香宮門前町174
時間|9:00〜16:00
料金|200円(石庭拝観の場合)
Tel|075-611-0559

 

食事処でも幕末に想いを馳せたい!

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text: Ryoko Yamada photo: Katsuo Takashima, Koan Kubota 地図=アルト・ディー・クラフト map: ALTO D CRAFT
Discover Japan TRAVEL 2019年号「プレミアム京都2019」


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