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佐賀県《嬉野 八十八/やどや》
“お茶”と“温泉”でもてなす旅館とは?後編

2023.6.27 PR
佐賀県《嬉野 八十八/やどや》<br>“お茶”と“温泉”でもてなす旅館とは?後編<br>

佐賀県・嬉野市のラグジュアリーな湯宿「嬉野 八十八(うれしのやどや)」。2023年10月1日のオープン前に押さえておきたい鍋島緞通や肥前吉田焼などの伝統工芸品や嬉野の美味を集めた食体験をご紹介。またプロデューサー兼アートディレクターの岡部 泉さんがこれまでに手掛けた九州の宿とともに「嬉野 八十八」の背景をひも解く。

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佐賀の技を結集して、おもてなしを用意

打ち合わせには実寸大のプリントを持参。緑が茶畑、青が大村湾の波を表し、宿のロゴとなっている七宝文様で囲んだモダンなデザイン

今回の取材で一番印象深かったのは、開業に携わる地元の農家や作家たちが皆、“新たなチャレンジ”を行っていること。既存の技術や伝統をそのまま取り入れるのではなく、岡部さんと作家たちがコラボするオーダーメイド的な手法で、「嬉野 八十八」の世界観が丁寧に紡がれている。「岡部さんとのコラボは刺激的。既成概念の枠を越えたものづくりにワクワクしています」と「224porcelain」の辻 諭さん。その言葉が示す通り、各ジャンルのつくり手たちも培った技術を惜しみなく発揮しながら、新しいモノやコトづくりを楽しんでいる。その全貌が明らかになる開業の日が楽しみで仕方ない。

鍋島緞通を代表する蟹牡丹文様。蟹は強さ、牡丹は豊かさを象徴

オリジナルデザインの「鍋島緞通」を玄関に
300年以上の歴史を誇る佐賀の伝統工芸品・鍋島緞通。佐賀藩鍋島家の御用品として珍重されてきた緞通は、玄関に敷かれる。「宿の計画がはじまった頃から、鍋島緞通を玄関に、というのは決めていました。茶畑の向こうに海が見える嬉野の自然を描き、『嬉野景』と名づけました」と岡部さん。「これだけ作家性が強い完全オーダーははじめて。私たちもワクワクしています」と「鍋島緞通 吉島家」の山副 里さん。職人3人が2〜3カ月をかけて制作する大作、現地でその美しさに触れたい。

新しいスタイルの茶器を「224porcelain」と開発
「茶を科学する」をテーマに、岡部さんが考案したのが斬新なデザインの抽出器。彼女が描いたデッサンを元に制作を手掛けているのが、新しい肥前吉田焼の世界を切り開いている「224porcelain」の辻 諭さんだ。「最初はこのかたちでお茶を煎れるの? と驚きました。しかし、岡部さんから“茶葉の旨みを出し、香りを閉じ込めたい”という意図を聞き、実に理にかなっているかたちだと納得した次第。岡部さんと私、茶師たち。チーム嬉野で最高の一杯をお届けできると思います」(辻さん)。

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嬉野を中心に半径88㎞の範囲から
集めた食材を生かす

嬉野の中心地から離れた標高325mの場所にある「かや農園」の西洋野菜。清らかな水で育ち、寒暖差によって濃厚な旨みが閉じ込められている。朝食のサラダなどに登場予定

旅の愉しみとなる「食」のコンセプトは「88キロフード」。嬉野を中心に半径88㎞圏内から厳選した山海の幸を存分に楽しませてくれる。開業にあたり、料理長・小原孝文さんは半年をかけて東奔西走し、とびきりの食材を選んだ。「生産地を訪れることで食材への理解も深まり、九州の食の豊かさを体感しました。それぞれの素材がどのように育ち、つくられているのかというストーリーとともにお客さまに伝えていきたい」と小原さん。

嬉野の山間部で育った「かや農園」の西洋野菜をはじめ、夏に旬を迎える天草産のタケノコ、皮ごと食べられる壱岐のバナナ……、一例を聞くだけでも、早くテーブルに着きたくなる。新しい食との出合いと口福感が、食通たちをも満たしてくれることだろう。

「かや農園」の代表・田中悦子さん(写真右)と小原料理長(写真左)田中さんは経験ゼロから独学で野菜づくりを学び、農園を率いている
「かや農園」の野菜はJR嬉野温泉駅前の複合施設「UPLIFT SHIMOJYUKU」で購入可能
嬉野から半径88㎞の範囲から集めた食材を生かす
北は壱岐、南は天草、西は五島、東は日田まで、半径88㎞圏内のエリアから厳選した旬野菜や魚、こだわりの肉などを創作料理や炭火焼で味わえる。レストランには30の個室も完備している

岡部 泉さんがこれまでに手掛けた九州の宿

「今回はどんな“人”をつくろうか」。宿を人にたとえ、キャラクターの輪郭を描いていくことから岡部さんのプロデュースははじまる。「“人格=宿の役割”。今回描いたのは“たくさんの引き出しを持っている人”。嬉野の魅力を余すところなく複合的に取り入れ、お客さまに提供したいですね」(岡部さん)。

すでに岡部さんはJR九州とともに「別府温泉 竹と椿のお宿 花べっぷ」、「奥日田温泉 うめひびき」を手掛けてきた。これらの宿も“現地の人々と協業して地域資産を掘り起こし、地域とゲストをつなぐ宿をつくる”という岡部流セオリーが貫かれている。
「花べっぷでは、伝統工芸品の竹細工にフォーカスしました。また“別府”という名の椿に出合ったことから“ふんわり やさしい”というコンセプトに。楚々とし、品のある人格を描きました。一方、うめひびきは大山町が梅の郷でしたので、テーマはずばり“梅”に。梅の花は上を向いて咲く。その姿のように凛とした宿にしたいと。梅酒工場の見学や、梅酒づくり体験なども用意しました」
これまでの成果を踏まえ、完全新築で挑む「嬉野 八十八」。美肌湯に嬉野茶、九州の食材を楽しめる料理。心ほどける極上の時間に期待が高まる。

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ラウンジにある竹のパーテーションは15人の職人の手によるもの

女性ファンを魅了する寛ぎの温泉宿
別府温泉 竹と椿のお宿 花べっぷ

世界有数の温泉地・別府にある湯宿。館内には別府の伝統工芸品である竹細工がふんだんに取り入れられ、ナチュラル感のある空間を演出している。また、岡部さんが「別府」という名の椿にインスパイアされたことから、客室にも風雅な椿の名前がつけられている。女性大浴場には高濃度酸素湯マイクロバブルバスやスチームサウナがあるほか、椿オイルを使ったトリートメントも受けられるとあって、リピートする女性ファンも多い。

住所|大分県別府市上田の湯町16-50
Tel|0977-22-0049(10:00〜19:00)
客室数|30室
料金|1泊2食付2万4450円〜(税込、入湯税別)
IN|15:00 OUT|11:00
www.hanabeppu.jp

窓の外には切り立つ響渓谷が広がる

梅の郷にある“梅尽くし温泉”
奥日田温泉 うめひびき
かつて江戸幕府直轄の天領だった日田。その中心地から車で25分ほどの山間部にある。「観光地として知られる日田ですが、その奥にも素晴らしい場所があることを伝えたくて“奥日田”という冠をつけました」(岡部さん)。梅の郷として知られる大山町。敷地内には梅酒工場や直売所もあり、2月中旬〜3月には梅まつりも開催される。また、客室やテラス、大浴場から望める響渓谷の絶景も一見の価値がある。

住所|大分県日田市大山町西大山4587
Tel|0973-52-3700(10:00〜12:00/13:00〜17:00)※水曜は電話受付定休
料金|1泊2食付2万6000円〜(税込、入湯税別)
IN|15:00 OUT|11:00
www.umehibiki.jp

ただいま絶賛、建設中!
「チーム嬉野」のチャレンジが結実した「嬉野 八十八」。開業は10月1日を予定している。現在、急ピッチで工事が進行中。写真は離れ棟の庭にて。客室によって異なる雅趣あふれる庭をつくるべく、植栽が進められる

嬉野 八十八
住所|佐賀県嬉野市嬉野町下宿丙2400-30
Tel|0954-20-2188(10:00〜17:00)※水・土・日曜、祝日は電話受付定休
客室数|36室(母屋棟24室、離れ棟12室)
料金|1泊2食付(母屋棟)3万5200円〜、(離れ棟・オールインクルーシブプラン)8万3600円〜(税込、入湯税別)
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAほか
IN|15:00 OUT|11:00
夕食|創作料理(食事処)
朝食|和食(食事処)
アクセス|車/長崎自動車道嬉野ICから約5分 電車/JR嬉野温泉駅からタクシーで約7分
施設|ティーセレモニールーム、食事処、大浴場、サウナなど

 

≫公式サイトはこちら

 

text: Chie Nakano photo: Azusa Shigenobu
2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」

 

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