酒を愛するうつわ作家8人に聞いた!
酒と肴と地元自慢〈前編〉
料理や酒を引き立てる。そんなうつわを生み出す作家たちは、夜な夜などんなお酒、おつまみ、器で晩酌を繰り広げているのか?
青木良太さん、小路口力恵さん、古賀雄大さん、松本かおるさん、伊藤惠さん、高原卓史さん、伊勢﨑創さん、大饗利秀さん、Discover Japan Lab.でも取扱い中の作家8名に、行きつけの名店や、晩酌の肴になりそうな秘蔵レシピをうかがいました!
1|青木良太
岐阜県土岐市
青木良太(あおき りょうた)
陶芸家。一人で生み出したとは思えないほどバリエーション豊かな作風が特徴。年間1万5000種にも及ぶ釉薬研究を繰り返し、陶芸のあらゆる可能性を模索。いまだかつて誰も見たこともない、新たな作品を生み出そうとしている。
酒を飲むことを“アル中する”と表現する青木さん。365日飲むためにも健康に気を遣い、身体も鍛えているという、生粋の酒好きである。「料理はうつわをつくるようになってから意識するように。焼酎だったらガッツリ食べたいなど、お酒に合わせて料理を用意します。いろいろな作家さんのうつわを買いますが、どれも観賞用。結局、青木良太の作品が一番いいなと、洋服のように気分で選んでいます」と、ご自身が欲しいうつわをつくっているからこその境地に。「レシピをいろいろと紹介しましたが、結局のところ頂点のおつまみは“月”。満月はもちろん、爪切りで切ったような三日月もきれい。古今東西やってきたことで、私も毎日実践し、アル中しています」
〈自宅〉脱水締めの刺身
青木さんが“魚の師匠”と呼ぶ「サスエ前田魚店」の店主・前田尚毅さんから教わった技法。「2割引の刺身が狙い目で、今回は250円で手に入れたもの。ひと手間加えるだけで一流店の味に激変するので、もう外で刺身を食べることはないかなと思っています」
材料
スーパーの刺身
塩
つくり方
1 スーパーで冊の刺身を購入し、氷などで冷やしたまま持ち帰る
2 塩を魚の両面に振り、まな板にのせて斜めにして15分ほど置き、魚から水分を出す
3 クッキングペーパーで水分と塩を拭き取る
4 15分ほど冷蔵庫で寝かした後、ラップをして食べる直前のタイミングで取り出してスライスして完成
〈自宅〉簡単ローストビーフ
日本酒の糖質を相殺するべく生まれた筋トレ向きのメニュー。「高タンパク低脂肪な外国産の赤身肉がおすすめ。おもてなしとして日本酒とともに出すと必ず喜ばれる鉄板の組み合わせです。醤油やマスタードなど、お好みの調味料とフィーチャリングしてください」
材料
牛かたまり肉
塩
コショウ
つくり方
1 常温に戻した牛肉にランダムにフォークを刺し、 塩・コショウを擦り込む
2 フライパンに油を引いて強火で温め、熱々になったら1を入れる
3 15〜30秒ほど熱し、 表面に少し火が通ったら裏返して、全面を好きな焼き色に焼く
4 3を取り出し、ラップを5重ほどピチピチに巻き、ジップロックに入れて中の空気を抜く
5 沸騰した湯に4を入れ、火を止めて肉のサイズに合わせて30〜60分ほど温めて取り出せば完成
〈自宅〉トマトと玉ねぎだけのサラダ
秘密の青木家レシピを大公開。「子どもの頃から大好きなメニューで、いまでも実家に帰ったら必ずつくってもらう究極に美味しいトマトサラダです。日本酒との相性も抜群で、飲んだ後にも食べたくなる一品。必ず冷蔵庫で冷やしてから食べてください」
材料
トマト
タマネギ
オリーブオイル
かんたん酢(またはすし酢)
塩
黒コショウ
つくり方
1 トマト3個を湯むきしてひと口大の大きさにカット
2 タマネギを1個用意し、半分はみじん切り、半分はすりおろしにする
3 2のおろしタマネギにオリーブオイル大さじ4、かんたん酢大さじ3、塩小さじ1弱、お好みで黒コショウを混ぜてドレッシングをつくる
4 1と2のみじん切りにしたタマネギ、3を混ぜ合わせれば完成
2|伊藤 惠
和歌山県岩出市
伊藤 惠(いとう めぐみ)
僧のうつわとして、中世より和歌山県岩出市の「根來寺(ねごろじ)」でつくられていた朱塗の漆器を制作する根來塗師。折敷などの伝統的な漆器はもちろんのこと、洋食器とも合わせやすい箸、コップ、皿、酒器なども手掛けている。
根來塗は大量生産ができないため、自身の作品であっても手元に揃えられていないそう。「中でも片口はすぐに売れてしまうので、まだ使ったことがないんです。漆器は軽いので、ぜひとも大ぶりのうつわも使ってほしい。いつもの食事をかっこよく盛りつけるだけでも、毎日が豊かに過ごせるかと思います。いまの時代だからこそ日々を丁寧に生きたいですよね」と、漆がしっかりと塗られた伊藤さんの作品は、水洗いだけでもツヤと味わいが増すという。「お酒はお気に入りを四合瓶で購入し、ちょこちょこと飲むスタイル。最近のおつまみは近所で購入した刺身や珍味が多いです」
〈自宅〉満月会飯
地元の中国料理店「満月」の名物メニューこそ、伊藤さんのソウルフード。「好き嫌いの多い子どもだったのですが、ほうれん草がたっぷり入った満月会飯は、好きなものが詰まった一品。母が私のために店の味を再現してくれたこの料理が、成長を支えてくれたといっても過言ではありません。朱色のうつわに普段のごはんをのせると、それだけでごちそうに見えます」
材料
豚バラ
ほうれん草
卵
鶏ガラスープ
醤油
砂糖
みりん
片栗粉
つくり方
1 豚バラ200g、ほうれん草1束をひと口大にカットする
2 温めたフライパンに油を引いて、豚バラ、ほうれん草の順に炒める
3 水700㎖を入れ、鶏ガラスープ大さじ2を入れた後に、醤油
大さじ3、砂糖大さじ3、みりん大さじ2を入れて味を調える
4 しばらく煮込み、水溶き片栗粉を適量入れて好みのあんばいでとろみをつける
5 卵4個分の溶き卵を入れ、卵が少し固まったら完成
3|古賀雄大
富山県富山市
古賀雄大(こが ゆうだい)
柔らかな美しい光の入りと反射が特徴的なガラスを、一つひとつ手作業で制作。テーブルに映る影の表情もうつわの一部としてとらえており、口当たりのよい酒器は唇に薄いガラスの縁が当たるよう、外側に開いたかたちでつくられている。
一時期は釣りにハマっていたという古賀さん。「毎日飲んでいるのですが、釣った魚のさばき方をYouTubeで調べて、一から肴をつくっていたこともあります。酒蔵がたくさんあり酒の肴にぴったりな刺身が美味しい富山は、今回の企画にドンピシャな場所。ぜひ富山の居酒屋で、新鮮な魚を肴に地酒を飲み比べてみてほしいです」
〈自宅〉刺身
「そのままでも十分美味しいですが、余裕があるときは冊で購入して、塩で水分を抜いたり、昆布締めにすることも。富山は昆布の消費量が多く、自宅には大量にストックがあります」と、刺身の下処理にもご当地色あり。
材料
スーパーの刺身
つくり方
パックから取り出して、古賀雄大のうつわに盛れば完成!
4|小路口力恵
富山県富山市
小路口力恵(しょうじぐち りきえ)
「やさしく、やわらかく、ここちよい。」をコンセプトに制作。吹きガラスでつくられた生地の表面に研磨機で模様をつけた「はつり スインググラス」をはじめ、繊細な白さを表現した温かみのあるガラスを生み出している。
酒は好きだが、それ以上に飲みの場の雰囲気が好きだそう。「お酒はひと区切りするためのアイテムなので、週末の食後にゆっくりと楽しみます。特別な一本を手に入れたときは、コレクションしている片口とぐい呑みを出すことも。地酒の『満寿泉』も常備していて、自作のグラスでロックで飲むことが多いです」
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text: Natsu Arai
2023年1月号「酒と肴のほろ酔い旅へ」