《健太郎窯》
すべて自然素材でつくる、風土に根ざした現代の唐津焼
佐賀県唐津市にある鏡山の中腹、虹の松原と唐津湾を一望する高台に建つ、陶芸家・村山健太郎さんの「健太郎窯」。古唐津をルーツに“現代の用の美”を探究する、健太郎さんのうつわづくりとその魅力に迫ります。
村山健太郎(むらやま けんたろう)
1978年佐賀県唐津市生まれ。2003年に有田窯業大学校を卒業後、唐津焼作家の川上清美氏に師事。2008年に唐津市内に独立、健太郎窯を築窯した。
@kentarougama
日常に溶け込む素直な器
佐賀県の北西、玄海灘に面する唐津市。福岡空港から車で約1時間圏内というアクセス至便な場所に位置しながらも、標高284ⅿの鏡山や国の特別名勝・虹の松原や唐津湾を有するほか、眼下に市街地や壱岐の島影も望む、豊かな自然の絶景が楽しめる。鏡山は神功皇后(じんぐうこうごう)が山頂に鏡を祀ったことに由来するとも言われ、数々の伝説を持つ山でもある。
そんな鏡山の中腹、虹の松原と唐津湾を一望する高台に健太郎窯に健太郎窯は立っている。
開窯して以来、風土との繋がりを大切に作陶しているという健太郎さん。この土地でどのように作品を生み出しているのだろうか。
「健太郎窯では“日常に溶け込む素直な器”であることを大切にしています。所有者が飽きずに使い続けられるよう、形状は極力シンプルに。日常の器として愛されてきた古唐津をそのまま写すのではなく、ともにこの時代に生きる料理人の価値観や食文化に寄り添う、“現代の用の美”を探求しています」
自ら土を掘り、すべて自然の原料でつくる
健太郎窯の作陶は、まず土を掘るところからはじまる。肥前の山を歩き、土や石、鉄などの原料を採取し、粘土と釉薬をつくっていく。うつわの原料はすべて、自然から手に入れたものだ。
「素材に個体差があるため、それぞれの土に適した精製方法を見定め、窯に入れる焼成温度も細かく見極める必要があり、手間がかかり非効率的です。しかし、素材から作り出し、土が持つ魅力と対峙するたびに、古の技術に隠された“ものの秘密”に触れることができます。原料の様子を観察し、できるだけ土のペースに合わせて面倒を見ていくことが、私の仕事。古唐津の伝統技術をベースにしながら、土や釉薬に関して研究を重ね、独自の素材感を生み出したいと日々模索しています」
読了ライン
斑唐津八寸皿
伊羅保銘々皿
黒唐津徳利
形のバリエーションも豊富な健太郎窯のうつわ。デティールにもこだわったデザインは、時に可愛らしく時に重厚感を放ち、老若男女問わず魅力を感じられる。
使いやすく暮らしにじんわりと馴染むうつわたちは、日々の生活をやさしく彩ってくれるだろう。