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京料理の老舗《たん熊北店 京都本店》で学ぶ
懐石料理のルーツは茶にあり【後編】

2022.11.28
<small>京料理の老舗《たん熊北店 京都本店》で学ぶ</small><br>懐石料理のルーツは茶にあり【後編】

本格的な茶事に招かれる前の予習にもなる「たん熊北店 京都本店」の体験プランは、店のカウンター席で行われる。うつわの扱いや食事の仕方から亭主とのやりとりに至るまで、丁寧なレクチャーが茶懐石への理解を促す。

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美味しく体験して学べる!
茶懐石の作法

主人の栗栖正博さんは若い頃から茶の稽古に励み、茶会の料理も任されている。体験プランでは主人自らが茶事の亭主役となってルールを教えてくれる。

<飯 汁 向付>

亭主から飯、汁、向付をのせた折敷を受け取る。折敷を受け取ったときは軽く会釈をし、それから手前に下ろす。折敷の向こうに、煮物椀などを置ける空間を少しつくる
折敷の左側に置かれた飯と右側の汁の蓋を同席する人と同時に開ける。茶懐石のルールは所作の美しさを重視し、蓋を取るときは指を揃えて見た目のよさも意識したい
同時に蓋を取った後は、左手に持っている飯椀の蓋をひっくり返し、その上に汁椀の蓋をぴったり合うように重ね、折敷の右側のやや下の位置に静かに移動させておく
茶懐石はまず飯から食べはじめる。両手で取り上げた飯椀を左手で預かり箸を取り上げる。折敷の右端に掛かっていた箸は真上から箸の中心部を持ち、右手で取り上げる
取り上げた箸の先を、いったん左手の中指と薬指の間に軽く挟むようにして固定。箸がグラつかないよう気をつけながら、右手は箸に添わせるような動きで正しい持ち方に持ち替える
飯が少ないのは「炊き上がりを食べてほしい」との心配りから。少し残すイメージで、全部食べ切らないこと。箸は左端に先を3㎝ほど出しておく。続いて汁椀を手に取る
飯、汁をいただいた後、それぞれいったん蓋をする。蓋をするときは右手で重なった蓋を覆うように持ち上げる。この後、亭主から差し出された盃台から盃を取り一献目の酒を飲む
酒が飲めない場合は、盃台の中央にある「したみ受け」に酒をこぼす。茶懐石は酒が何度か出されるので苦手なときはあらかじめ伝えておくのも手。盃は向付の右側に置く
向付をいただく。うつわと箸はこれまでと同様に扱い、加減酢などの水気が落ちないように懐紙を取り皿代わりに。懐紙は自分で用意しておく。残肴入(ざんこういれ)もあると便利
向付を食べた後は、加減酢などの水分を懐紙で吸い取るように少し押さえながら拭き取る。その際に使った懐紙は残肴入などの中にしまう。向付の皿はこの後の料理の取り皿としても使う

<飯器 汁替>

亭主が飯器を用意し「お給仕しましょうか」とたずねるので「どうぞお任せを」と答える。飯器は左手で支え、自分で飯をよそう。亭主は汁替のため、汁椀を丸盆にのせて下がる

<煮物椀>

折敷の向こうに置かれた煮物椀を両手で取り上げ、左手に預かってから蓋を開け、まず香りを楽しむ。いただく際は香りの素材である吸い口を手前に移動させて口を付ける

<焼物>

二献目の酒の後、中節の箸を添えた焼物が亭主から客に手渡される。それを左手に預かり、これまでと同様の箸の扱いで箸を持ち替え、自分の分の魚を向付のうつわに取り分ける

<預鉢>

焼物と同様の扱いで向付のうつわに取り分ける。炊き合わせの場合は、盛りつけられている料理をひとつずつ選ぶ。預鉢はなるべく身体の近くで持つようにすると取り分けやすい
2回目の飯器が手渡される。1回目と同様、給仕のやりとりをしてここでも自分で飯をよそう。汁替も促されるが2回目は「十分頂戴いたしました」と断るのがマナー

<箸洗>

折敷の向こうの煮物椀の横に箸洗が用意される。煮物椀は亭主が差し出す丸盆にのせて返却。箸洗も煮物椀と同様、味わう姿を美しく見せるために、箸をお椀の中に入れていただく

<八寸>

亭主は「一献どうぞ」と三献目の酒を勧めた後に、「小吸物椀の蓋をお借りいたします」とあいさつ。海のものを客の小吸物椀の蓋に盛りつけ、折敷の向こう側に置かれる
三献目の酒をいただいた後、海のものがのった小吸物椀の蓋を両手で取り上げ、これまでと同様の扱いで箸を持ち直す。海のものは味が濃過ぎないように調理されている
主人が「一献頂戴したいと思います。そちらの盃をお借りしたいと思います」と正客(客)に伝えるので正客は懐紙で盃を清めて、盃台に戻す。正客とは茶会の最上位の客をさす
亭主への酒は次客(正客の隣に座り、一緒に体験をする客)が注ぐ。酒を注いでいる間、正客が亭主の酒の肴となる八寸を懐紙に取り分ける。この酒の酌み交わしを千鳥の盃と呼ぶ

<湯桶 香の物>

正客が「どうぞお湯をお願いします」と言うと、亭主が湯桶と香物を持って出てくる。香物は向付のうつわに取り分ける。湯桶は持ち手の下の部分を指で挟むように持って扱う
飯椀と汁椀の蓋を同時に開け、はじめと同じように折敷の右横に置いておく。湯桶の湯を飯椀、汁椀のそれぞれに注ぎ、沢庵で汁椀を清めた後、汁椀の湯を飯椀に移す
飯椀のうつわに残る米粒を沢庵で拭い取るようにして清める。沢庵はゆっくり咀嚼し、口中をさっぱりとさせる。すべての食事が終わったので飯椀、汁椀、箸を懐紙で清める
箸は右端に掛け、飯椀と汁椀はこれまでと同様の扱いで蓋をしめる。茶懐石の終わりを亭主に伝える目的で、参加者がいっせいに折敷の上で箸を落として音を立てる

<菓子 薄茶>

蓋付きの縁高の菓子器蓋を少しずらしてから、黒文字を中に差し入れた後、蓋を取る。菓子に黒文字を差し、軽く手を添えて懐紙に取ってもいい。菓子は自家製のものが用意される
亭主自らの手前で薄茶が点てられる。抹茶茶碗は正面を外す目的で時計回りに回転させる。三口程度で飲み終えた後は逆回りに戻す。飲み終えた後の回し方は流派によって異なる
茶会と同様にしばらく道具を拝見する時間ももてる。茶碗を拝見するときは両手で丁寧に扱い、絵付けや造形などに意識を向けてみる。あらかじめ指輪などのアクセサリーは外しておくこと

たん熊北店 京都本店
住所|京都市中京区紙屋町355
Tel|075-221-6990 
営業時間|12:00〜15:00(L.O.13:30)
17:30〜22:00(L.O.19:30) 
定休日|不定休 
※茶懐石コース2万4000円(2〜5名。12:00か18:00〜18:30スタート)、要予約(1週間前まで) 
https://tankumakita.jp

text: Mayumi Furuichi photo: Toshihiko Takenaka
Discover Japan 2022年11月号「京都を味わう旅へ」

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