《ミライｏｎ図書館》
建築美も楽しめる、長崎県と大村市の共同運営による複合型図書館

長崎県の空の玄関口である大村市に2019年、長崎県と大村市が共同で運営する図書館「ミライｏｎ図書館（ミライオンとしょかん）」がオープンした。個性と開放感にあふれる建築を手掛けたのは、佐藤総合計画とINTERMEDIA。九州トップクラスの収蔵能力を誇る複合型施設の全貌に迫っていく。

収納能力は九州最大規模の202万冊！

2019年10月、長崎空港を有する長崎県大村市に大村市立図書館と長崎県立長崎図書館が一体となった複合型施設「ミライｏｎ図書館」が誕生した。都道府県と市町村が共同運営する図書館は、高知県の「オーテピア高知図書館」以来、日本で2例目となる。収蔵能力はなんと約202万冊。都道府県立図書館の中では全国で6番目、九州ではトップクラスを誇る。

「ミライｏｎ図書館」という施設名は、全国から1500以上の応募があった中から選考。「現在・未来の多くのことを知り、未来の自分を育てるためのスイッチをｏｎできる場所になってほしい」という願いが込められている。また、図書館や歴史資料館で、過去や現在のさまざまな歴史や文化を学ぶきっかけとして、未来の自分や郷土について考え、夢を抱き、自発性や積極性を高めてほしいという期待も込められている。また「ｏｎ」の部分は、「大村市（Omura）」と「長崎（Nagasaki）」の頭文字でもあることから、長崎県と大村市が共同で整備する施設に相応しいネーミングとなった。

造船所のドックをイメージした建築

INTERMEDIA（インターメディア）
佐々木信明氏と息子の佐々木翔氏が代表を務める設計事務所。長崎県を中心に活動し、あたご保育園が平成29年度日事連建築賞にて国土交通大臣賞を受賞。長崎港松が枝国際ターミナルビルはグッドデザイン賞ほか多数受賞。

佐藤総合計画
佐藤武夫氏が創設した建築設計事務所を前身とする設計事務所。東京を拠点に全国各地の公共施設などを手掛け、数々の賞を受賞。オーテピア、東京国際展示場、岩国市庁舎ほか

ミライｏｎ図書館の大きな特徴のひとつが、湾曲した美しいデザインの建築だ。設計は、長崎県を拠点に活動する建築家・佐々木信明氏率いるINTERMEDIAと、佐藤総合計画が共同で担当した。

施設が建つのは多良岳を背景とした大村湾を望む扇状地。自然豊かな環境を中心市街地と繋ぎ、町の流れを引き込む「湾」のような形状を意識して、この湾曲したデザインが生まれた。

1階から4階まで一部吹き抜けになった巨大空間は、造船業の歴史が長い長崎という土地柄から造船所のドックをイメージ。この「ブックドック（船渠）」は、各階を横断し、独立した動線を持つ管理諸室や閉架書庫のコアとなり、図書館サービスを供給する基地・心臓部と位置づけられている。ひな壇状の「ブックカダン（花壇）」と呼ばれる閲覧空間には、その名の通り、花々を植えるように書架やキャレル、閲覧室が配置されている。
湾型のひとつ屋根の下、「ブックドック」と「ブックカダン」が融合し、図書館での活動と風景が連続するシームレスな空間を生み出している。

施設紹介

このほか200名収容できる多目的ホールや開架4万冊のこども室、大村市の歴史やゆかりのある人物に関する資料なども備えている。

ミライｏｎ図書館は、県民はもちろん、長崎空港や大村駅からも至近であることから観光客が長崎県の情報を入手するにも便利。スタイリッシュな建築の中には、細やかな気遣いが散りばめられており、その創意工夫からもインスピレーションが得られそうだ。

ミライｏｎ図書館（長崎県立・大村市立一体型図書館）
住所｜長崎県大村市東本町481
Tel｜0957-48-7700
時間｜平日10:00～20:00、土日祝日10:00～18:00
アクセス｜電車 JR大村線大村駅下車徒歩約3分、車 大村ICから約8分・長崎空港から約11分、バス 長崎県営バス（高速シャトルバス）から約45分ミライｏｎ下車
https://miraionlibrary.jp/