TRADITION

妖怪と日本人の歴史 〈古代〜中世〉
|「妖怪」とはどのような存在?

2026.8.23
妖怪と日本人の歴史 〈古代〜中世〉<br><small>|「妖怪」とはどのような存在?</small>
惟宗允亮『政事要略』江戸時代中期/国立国会図書館デジタルコレクション

日本人にとって「妖怪」とはどのような存在であるのか。古代から現代まで、そのかかわりの変遷をたどってみよう。今回は古代〜中世と日本人の関わりについて兵庫県立歴史博物館 学芸課長の香川雅信さん監修のもと迫っていく。

監修=兵庫県立歴史博物館 学芸課長
香川雅信(かがわ まさのぶ)
1969年、香川県生まれ。日本ではじめて妖怪研究で博士号取得。日本民俗学が専門で、研究テーマは妖怪と玩具。『妖怪を名づける 鬼魅の名は』(吉川弘文館)など著書多数。

Q. そもそも「妖怪」って何?

角のある恐ろしい顔の面をつけた方相氏(ほうそうし)が、疫病や災厄の鬼を追い払う「追儺(ついな)の儀式」。節分の豆まきのルーツだ
惟宗允亮『政事要略』江戸時代中期/国立国会図書館デジタルコレクション

A. 不思議な現象を説明づける“概念”
「理由はわからないけれど起こってしまう不思議なこと。それを説明する“概念”が妖怪の原点です」と香川さん。日常的な理解では説明のつかない現象があると人間は不安になる。そこでその現象の主体を「妖怪の仕業だ」と後付けしていったという。鬼、天狗、狐、狸が古代・中世では不思議な現象の主体であった。

Q. 「妖怪」と「幽霊」の違いは?

A. 恐れの対象が自然か人間か
妖怪学の第一人者・小松和彦氏の定義では「祀られている超自然的存在=神」、「祀られていない超自然的存在=妖怪」。もともと自然への恐れが妖怪だったが、同じ妖怪でも「幽霊」は人間への恐れであるという。

Q. 妖怪はいつから存在する?

A. 『日本書紀』に登場する神が源流
『日本書紀』には「天孫降臨以前の日本は『蛍火光神』や『蝿声邪神』がおり、草木が人語を発する地だった」と表現されている。蛍火光神は「怪火」、蝿声邪神は「音の怪」と、民俗学者・柳田國男が『妖怪名彙』で挙げたものに相当し、これら「邪しき神」は討伐の対象で後に妖怪と呼ばれるような存在だった。

Q. 化け物(妖怪)は
どのように描かれたの?

A. 武家社会の成立で“退治”されるように
平安時代において天狗、狐、狸は「かろうじて退治できる対象」であったが、鬼は人間にはどうしようもない存在であった。しかし鎌倉時代になると武士の強さをアピールするため、鬼をはじめとする妖怪退治の話が多くつくられるようになったという。

line

text: Nao Ohmori
2026年7月号「納涼、しましょ。」

RECOMMEND

READ MORE