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《連載第3回》
赤福「オカゲ屋敷」メイキング・ストーリー

「オカゲ屋敷」を紡ぐ。
リサーチ第2弾をレポート!

2026.3.27
<small>《連載第3回》<br>赤福「オカゲ屋敷」メイキング・ストーリー</small><br>「オカゲ屋敷」を紡ぐ。<br>リサーチ第2弾をレポート!

三重県伊勢市にある「おかげ横丁」の中核施設「おかげ座」のリブランディングを担うこととなった、ビジュアルデザインスタジオ・WOWとトータルメディア開発研究所のクリエイターたち。2024年夏、WOWが手掛ける映像インスタレーション作品『BAKERU』をベースとした基本計画案を提案し、当初は2025年2月のリニューアルオープンを目指してプロジェクトは順調に進むと思われたが、彼らはあらためて伊勢の文化と向き合う。その詳細を追っていく。

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デジタルだけでは残らない、
赤福が示した“300年の価値観”

伊勢内宮参道沿いに店を構える赤福本店。300年以上にわたり暖簾を守り続けてきた老舗の看板は、伊勢の時間の流れをいまに伝えている

コンテンツ制作の現場においてプロジェクト実現のためには、クリエイターはもちろん、クライアントを含めた関係者全員が想い描いた“夢”=プロジェクト案を、“予算”という現実に落とし込む工程が必要となる。

2024年7月、WOWとトータルメディア開発研究所が満を持して提案したリニューアル計画案「おかげ横丁 イセカイミュージアム」も、その段階を迎えようとしていた。ところが、である。

WOWのプロデューサー・稲垣拓也さんは、赤福サイドの反応から、言葉には表れていない想いがあるのではないかと感じ取っていた。そこで赤福の意図をよりいっそう理解するため、関係者と対面で接する機会を積極的にもった。その対話を通して浮かび上がってきたのは、計画案とは異なる価値観だった。

おかげ横丁の空間づくりの源流を探るべく、門前町の面影を残す麻吉旅館など周辺の建築もめぐりながらリサーチを重ねた

「いま思うと『おかげ横丁 イセカイミュージアム』の計画は、映像を駆使するコンテンツが多すぎました。デジタルだけだと廃れるのも早いと、赤福の濵田社長は思われていたようです。300年以上の歴史をもつ赤福において、“長く愛されるアナログ的なもの”が大切な要素として求められていたんだと思います」と稲垣さんは振り返る。

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次なる計画案は、
伊勢玩具にヒントあり?

そこでクリエイターたちは「人々に長く親しまれ、来場者同士が世代を超えてコミュニケーションできるようなコンテンツ」を軸に、次なるプロジェクト案の構想を練りはじめた。よりよいものを追求する中で、関係者が一堂に会する企画会議も継続的に重ねられていた。そこで飛び出した「伊勢の縁起物がテレビで取り上げられていた」という話題をきっかけに、「縁起が良くなりそうなmuseum」案が2025年2月に提案された。

明治期に普及したとされる伊勢玩具から着想を得た「縁起が良くなりそうなmuseum」の草案(※当時の企画資料から抜粋)

明治期の頃より伊勢では、独楽(コマ)やだるま落とし、けん玉といった木製玩具に鮮やかな色彩を施した「伊勢玩具」が盛んにつくられ、神宮の参拝客が買い求める土産品として定着していた。
こうした伊勢玩具を用いた遊びや福笑いのような日本に古くから伝わるアナログな遊びと、デジタルコンテンツを組み合わせたミュージアムを構想したのである。この案の登場により、プロジェクトメンバー一同はあらためて「伊勢らしさとは何か?」について向き合うこととなる。

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伊勢らしさの答えは
「神恩感謝」の暮らしにあった

常夜灯と「神恩感謝」ののぼりが迎えるおかげ横丁の入り口。伊勢に息づく祈りの文化を象徴する風景だ

「伊勢らしさ」についてあらためて想いをめぐらせたメンバーたちは、「縁起が良くなりそうなmuseum」案をめぐって議論を重ねた。その結果見えてきたのは、全国各地で親しまれている縁起物を中心に据えるだけでは、伊勢の文化や風土ならではの魅力を十分に伝えきれないのではないか、という課題だった。トータルメディア開発研究所の島村昌志さんはこう語る。

「最初の『イセカイミュージアム』の次に、『縁起が良くなりそうなmuseum』という振り切った案を出すことで、メンバー皆が“伊勢らしさ”を見つめ直すきっかけになりました。このように、時には寄り道しながらも最終的には目指すべき原点に立ち返っていくことができるこのプロジェクトチームは、いいチームだなって思いましたね」。

オカゲ屋敷プロジェクトのコアメンバーの二人。WOWプロデューサーの稲垣拓也さん(右)、トータルメディア開発研究所の島村昌志さん(左)

プロジェクト案の模索が続く一方で、2024年秋からPR動画制作のため、WOWの稲垣さんは月2~3回の伊勢通いを続けていた。そこで深く印象に残ったのが、伊勢神宮を中心とした暮らしを営む伊勢の人々の所作。たとえば毎日10時になると、赤福やおかげ横丁で働く人々はいったん仕事の手を止め、神宮の方角に向かって祈りを捧げる「神宮遥拝」をごく自然に行っている。

ほかにも、日々の掃除の仕方や神棚への拝礼など、伊勢の人々が日常的に「あたり前」に行う所作に触れるうちに、稲垣さんには「暮らしのすべてが『神さまのおかげ』と感謝しながら暮らす、伊勢の人々の“神恩感謝”の心こそが伊勢らしさではないだろうか」という想いが芽生えていった。

こうして2025年5月、「おかげ横丁 おかげ屋敷」(当時はひらがな表記)という名称がはじめて提示された。その後、同年9月には「おかげ横丁 オカゲ屋敷」として構想が整理され、3案目として提案されるに至る。次回、第4回目の連載記事では、2026年6月にリニューアルオープンを控える「オカゲ屋敷」の魅力に迫っていく。

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〈赤福の観光まちづくり〉
前編|赤福300年の歴史から見た「お伊勢参り」とは?
後編|伊勢の歴史や風土、食文化と出合う。

〈オカゲ屋敷-メイキング・ストーリー-〉
01|世界的クリエイター集結!「おかげ座」リブランディング始動
02|「伊勢だからこその表現」とは?
03|「オカゲ屋敷」を紡ぐ。リサーチ第2弾

text: Makiko Shiraki(Arika Inc.) photo: Kenji Okazaki

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