ART

日本民藝館《柳宗悦と朝鮮の工芸》
陶磁器、木工、石工、金工…
民族独自の造形美とは

2022.9.18
日本民藝館《柳宗悦と朝鮮の工芸》<br>陶磁器、木工、石工、金工…<br>民族独自の造形美とは
刷毛目茶碗 朝鮮時代 15世紀後半~16世紀前半 日本民藝館蔵

暮らしの中の美や柳宗悦の世界観に触れられる東京目黒区にある日本民藝館。2022年9月1日(木)~11月23日(水・祝)にかけて、企画展「柳宗悦と朝鮮の工芸 陶磁器の美に導かれて」が開催。朝鮮陶磁器をはじめとする300点の諸工芸品から見えてくる、民族固有の独自の造形美と深い精神性とは?

日常品の中から、
驚くべき美の姿を見出す


染付鉄砂葡萄栗鼠文壺 朝鮮時代 17世紀末期~18世紀初期 日本民藝館蔵

日本民藝館の創設者である柳宗悦(1889~1961年)は、朝鮮陶磁器との出会いを契機にして朝鮮時代(1392~1910年)の工芸美に注目し、透徹した審美眼によって優れた蒐集を成した。そして、その美に触発されて数々の論考を著し、展覧会を通して朝鮮工芸の魅力を世に問い続けてきた。

柳は晩年に、「かく朝鮮の器物を好きになったのは、私にとって種々生涯の方向を定める事にもなり、うたた感慨が深い」(『四十年の回想』1959年)と述懐しているが、柳は民衆の日常品の中に驚くべき美の姿を見出し、それが契機となって後の民藝美論の思索へと深められていった。

ちなみに柳が活動していた当時の朝鮮は、1910年の韓国併合によって日本の統治下におかれ、同化政策が強引に推し進められていた。しかし、柳はそのような時流に抗うように朝鮮民族の生み出した陶磁器や絵画、彫刻、建築などに独自の美と価値を見出し、朝鮮の人々に対しても深い親愛の情を寄せていったのである。そして、1919年3月1日に起きた民族独立の運動にも理解を示し、さらには民族固有の文化を守るためにペンを持って闘ったのだった。

今年は、そんな柳の朝鮮文化に対する自らの敬愛の想いを披瀝した、最初の著書『朝鮮とその藝術』刊行されて100年にあたる年。美への喜びを通し「互いを認め合い、平和に生きる」ことを呼びかけたこの本の意義は、いまも、そして今後も色褪せることはないだろう。
この節目の年に企画された本展では、同館の所蔵する朝鮮陶磁器を中心とする朝鮮時代の諸工芸品の中から優品約300点が選ばれ、一堂に展覧する。暮らしを彩った陶磁器、絵画、木工品、石工品、金工品などに表れる、民族固有の独自の造形美と深い精神性をぜひ堪能しよう。

炉 朝鮮時代 19世紀 日本民藝館蔵
螺鈿花鳥文箱 朝鮮時代 17世紀末期 日本民藝館蔵


文字図 孝 朝鮮時代 19世紀後半 日本民藝館蔵


漆塗網代張箪笥 朝鮮時代 17世紀末期~18世紀初期 日本民藝館蔵

柳宗悦と朝鮮の工芸 -陶磁器の美に導かれて
会期|2022年9月1日(木)~11月23日(水・祝)
会場|日本民藝館
住所|東京都目黒区駒場4-3-33
時間|10:00~17:00(最終入館は閉館30分前まで)
休館日|月曜(祝日の場合は翌日)
料金|一般1200円、大高生700円、中小生200円
交通|京王井の頭線駒場東大前駅西口より徒歩7分
Tel|03-3467-4527
https://www.mingeikan.or.jp/

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