《星野リゾート 青森屋》
ねぶた祭の熱気に包まれて青森文化を満喫|前編
青森の祭りや文化を体感できると人気を集める青森県三沢市の温泉宿「星野リゾート 青森屋」に、ショーに特化した会場が完成した。祭りの迫力や熱気だけではなく、季節とともにある青森の人たちの熱い想いを垣間見ることができる。前編ではここで繰り広げられるショーについて、史上初の女性ねぶた師・北村麻子さんに紹介いただいた。
青森らしさが詰まった滞在型テーマパーク
広大な敷地や館内の至るところに青森らしさがあふれている。伝統工芸を取り入れた客室、青森ヒバの湯、郷土料理を味わえるレストラン、そしてその最たるものは、青森の祭りを体感できるショー会場「みちのく祭りや」だろう。この会場は4月にリニューアルオープンし、ショーの内容も一新。青森を代表する4つの祭りを楽しめるとあって期待が膨らむ。
会場で観客たちを出迎えたのが、花笠を被った二人の踊り子。このかわいい影絵の跳人(はねと)に掛け声や基本のステップを教わると、舞台には雪に閉ざされた青森の冬が映し出される。やがて春になり世界が色づき、夏、空に花火が上がるといよいよ祭りがスタート。五所川原立佞武多(ごしょがわらたちねぷた)にはじまり、弘前ねぷたまつり、八戸三社大祭(はちのへさんしゃたいさい)、そして青森ねぶた祭と、各地の祭りが目の前で繰り広げられる。
「各地の山車(だし)を中心に、祭りのダイジェストを同時に観られるのは斬新です。プロジェクションマッピングとアナログの影絵。それらを合わせることで、新しさと、青森らしいほっこり感もあって」と、ねぶた師の北村麻子さん。
青森ねぶた祭では、跳人たちが「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声とともに踊り歩いて祭りを盛り上げる。「青森の子どもは小さいときから親に連れられ、そこで大人たちが童心に帰って楽しんでいる姿を見てきました。だから皆、ねぶたが大好きなのです」。
ショーでは季節の情景も大切にされている。「青森の人の、冬を乗り越えて春が来たときの喜びが表現されていて、思わず涙が出てきました」。フィナーレでは、山車が放つ光と映像が掛け合わさる。その幻想的な世界に、観客たちは息をのむ。演者は皆、青森屋のスタッフで、演出にも加わっているということにも驚かされる。
この夏、青森市で3年ぶりに青森ねぶた祭が開催される。このショーを観た人たちも、きっと跳人になって踊りたくなることだろう。
星野リゾート×伝統芸能で
広がる祭りの魅力
〈教えてくれた人〉
ねぶた師・北村麻子さん
1982年、青森県出身。父であり、6代目ねぶた名人である北村隆氏に師事。2012年に初の女性ねぶた師としてデビュー。ねぶた師に贈られる最高賞・最優秀制作者賞など、数々の賞を受賞。
青森の人々の想いを表現した
民謡と津軽三味線で祭りの世界へと誘う
長く厳しい冬を耐え、春が来た喜びは、移りゆく季節の映像とともに津軽三味線の演奏、さらには民謡が加わって表現されている。「民謡は、お祝いのときの歌なんです。コロナ禍では1回も聴いていなかったので、あの歌を聴いたときにグッとくるものがありました」と北村さん。
青森四大祭りが一度に楽しめるショー構成
4つの祭りは山車も違えば、お囃子も掛け声も違う。そんな各地の祭りの特徴を際立たせるため、五所川原立佞武多を除いて本物の山車が用いられ、影絵やプロジェクションマッピングなどの映像と照明をフル活用。それぞれの祭りにフォーカスしながら、青森人共通の祭り魂を伝えている。
伝統を新たな見せ方で!
プロジェクションマッピングで山車の迫力が倍増
ショーの終盤、各地の祭りのパフォーマンスが終わり、演者紹介を行った後に、山車のプロジェクションマッピングがスタート。山車が放つ光、会場のライトと映像が見事に融合し、まるでねぶたに命が宿ったかのよう。再びラッセラーの掛け声とともにお囃子の演奏がはじまり、フィナーレを迎える。
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text: Yukie Masumoto photo: Norihito Suzuki
2022年8月「美味しい夏へ出掛けよう!」