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《島根県立美術館》
2022年6月リニューアルオープン!宍道湖の夕日に包まれる絶景美術館

2022.7.2
《島根県立美術館》<br> 2022年6月リニューアルオープン!宍道湖の夕日に包まれる絶景美術館

旅の機運が高まりつつあるいま、おすすめしたいのがアート×自然で非日常を体験できる旅。自然豊かな場所に建つ美術館は、アート作品だけではなく建築、ロケーションからも感性を刺激してくれる。

島根県松江の宍道湖畔(しんじこはん)にある「島根県立美術館」は、“水との調和”をテーマにした美術館。建築設計は菊竹清訓が手掛けている。
2022年6月にリニューアルオープンし、新たな楽しみ方も生まれた同館についてひも解こう。

夕日に包まれる湖畔の美術館

島根県北東部に位置する宍道湖。約1万年前に形成されたと言われる湖で、東西約17km・南北約6km・周囲47kmと、国内で7番目の面積を誇る。宍道湖を全国的な知名度に押し上げたのが、空が茜色に変わる頃から始まる湖上の夕陽ショー。日没30分前のドラマは、湖を紅く染める夕陽に浮かび上がる嫁ヶ島のシルエットでクライマックスを迎える。この感動の風景は「日本の夕陽百選」にも選ばれている。

そんな絶景とともにアートが楽しめるのが、湖畔に建つ島根県立美術館だ。同館では宍道湖の夕陽をゆっくりと鑑賞できるよう、3月から9月にかけては日没30分後まで開館している。

同館が開館したのは1999年。前身となる県立博物館の美術コレクションを継承し、加えて新たなコンセプトによる作品収集を継続。現在は国内外の絵画をはじめ、版画、工芸、写真、彫刻などを展示。さまざまな展覧会やイベントも開催し、”水と調和する美術館”、”夕日につつまれる美術館”として親しまれている。

2021年からは約1年に及ぶ大規模改修を行い、2022年6月から再開館。ロビー天井の耐震化に加えて、空調や照明などの長寿命化工事を実施し、より安全で快適に美術作品が楽しめる環境に生まれ変わった。

国内で7番目の面積を誇る壮大な宍道湖。写真中央のカーブに沿って建つのが島根県立美術館だ

菊竹清訓が手掛けた
風景と一体化した建築にも注目!

菊竹清訓(1928-2011年)
福岡県生まれ。1950年早稲田大学理工学部建築学科を卒業し、3年後に菊竹建築研究所を設立。ブリヂストンタイヤの創業者・石橋正二郎からの依頼で「石橋文化センター」の設計を行う。1958年、生活空間を自由に組み替える自宅「スカイハウス」を世に送る。1958年から「海上都市」を構想し、1960年代に新陳代謝する建築や都市を追究するメタボリズム論を提唱する。また「か(構想)・かた(技術)・かたち(形態)」の設計理論を展開した。2000年のユーゴスラヴィア・ビエンナーレで「今世紀を創った世界建築家100人」の一人に選出。

穏やかな波状のカーブを描く高い天井を持つロビー空間に足を踏み入れると、目の前に美しい湖の景観が広がる。風景と一体化したような優美な建物の形態は、水面と大地をつなぐ「なぎさ」をイメージしている。
チタン製の大屋根は日光を柔らかく反射。対岸から見たときの視線を意識し、背後の山並みを遮らないように高さが低く抑えられている。屋根の円い開口部は展望テラスとなっている。
メインエントランスは冬の北西の季節風を避ける位置に設置。ロビーから湖の景観を楽しみながら展示室へとアプローチできる。

設計を担当したのは、出雲大社庁の舎や江戸東京博物館などを手掛けた建築家・菊竹清訓。同館では自然環境との調和を見せる建築を見事につくり上げている。

約3000点におよぶ浮世絵コレクション

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》1830~34(天保初期)年頃[永田コレクション]

島根県立美術館では、約3000点にもおよぶ浮世絵を所蔵している。その中核を成すのが、松江出身の実業家・新庄二郎旧蔵の「新庄コレクション」(471点)、津和野出身の北斎研究者・永田生慈旧蔵の「永田コレクション」(2398点)という、ふたつの個人コレクションだ。現在はこれに島根県が独自に購入した作品群にて構成されている。

世界的にも評価が高い葛飾北斎と歌川広重の代表作を網羅しており、摺りや保存状態が良好な作品、世界で1点または数点しかない貴重な作品や資料も少なくない。とくに北斎に関しては、質と量ともに充実した内容となっている。

壮大な湖の絶景とともに
地産食材を味わうレストラン

館内1階にある「湖畔のレストラン RACINE(こはんのレストラン ラシヌ)」。ここでは宍道湖や日本海で獲れた魚介類や地元野菜を使ったカジュアルフレンチが楽しめる。一面ガラス張りの店内からは宍道湖を一望できる。カフェやランチ利用もでき、美術作品を鑑賞した後にゆるりと余韻に浸る場所としても最適だ。

美術館外観
夕方になるとアートや建築が夕陽に照らされ、昼間とは異なる美しさが見られる
夕陽に照らされた外観もまた美しい
今回リニューアルで新設された水辺の展示室では、水を画題にした絵画が並ぶ
収蔵品はPCやスマホからも調べられ、1階ロビーと展望テラスにあるQRコードをスマホやタブレットで読み込むと北斎作品と記念撮影ができる「北斎ガチャ」も
北斎展示室も新設。同館が誇る北斎コレクションの中から常時30点程度が入れ替わる
絵本を読みながら親子で寛げるキッズライブラリー。写真は絵本作家・安野光雅の絵本を題材にしたオリジナルアニメーションが流れている様子。毎日午前中に「こどもといっしょの鑑賞優先時間」を設けている
ミュージアムショップでは北斎コレクションオリジナルグッズの販売もスタート

アートとともに水、夕陽、建築、食など、多様な“日本の美”を一度に楽しめる島根県立美術館。旅の目的として申し分ない同館は、期待を裏切らない特別な時間をもたらしてくれるだろう。

島根県立美術館
住所|島根県松江市袖師町1-5
Tel|0852-55-4700
時間|3月〜9月10:00〜日没後30分(展示室の入場は日没時刻まで)、10月〜2月10:00〜18:30(展示室の入場は18:00まで)
休館日|火曜、年末年始
料金|一般300円、大学生200円、小中高生無料 ※企画展は展覧会により異なる
アクセス|電車 JR松江駅から徒歩約15分
https://www.shimane-art-museum.jp

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